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68『ローゼンシュタット・1』
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RE・かの世界この世界
68『ローゼンシュタット・1』テル
どっちが早かったのか……
峠に差し掛かったところで「停まれ」とヒルデは命じた。
同時に四号は停車した。
当たり前なら、車長であるヒルデが命じて、即座に操縦手であるタングリスがブレーキを踏んだということなんだけど、すこし違うのだ。
タングリスは、自分の判断で停車している。同時にヒルデも判断して命じている。
四号は一匹の像が耳をそばだてるようにして停止した。
具体的な変異や脅威を感じたわけではない。戦慣れした二人が同時に反射的に反応したことに車内に緊張が走る。
五人の乗員は息を潜め、クリーチャーのポチもロキのポケットに潜り込んでしまった。
ブルブルブルブルブル…………マイバッハV12エンジンの音だけが車内に響く。
「エンジンを切れ」
「エンジン切ります」
ブリュン……
四号はヒルデの真名の前半分を呟くようにしてなりを潜めた。
「え? どうかした?」
付き合いの浅いロキには分からないようだ。
「Cアラームが反応したような気がしたんだ」
ヒルデはCアラームを見つめる。Cアラーム(クリーチャー警報装置)は砲塔の天井にぶら下げてあり、砲手であるわたしの視界にも入っているのだが、アラームの反応には気づかなかったというかアラームは反応していないと思う。装填手のケイトも怪訝な顔をしている。
「タングリスは?」
「いや……ちょっと気配がしたもんでな。気のせいでしょ、進めてよろしいか?」
「ああ、前進しよう」
ヨッコラショと動き出すと、バラの香りが車内にまで入り込んできた。
そして、峠が下り坂になった瞬間、バラの花で溢れかえったローゼンシュタットの町が広がってきた。
うわあ!
ロキが歓声をあげ、みんなも、それぞれのペリスコープや貼視孔から外を覗く。
荒れ地同然の草原や灌木ばかりの、ゴルフで言えばラフやベアグランドのようなところばかり走ってきたので、お花畑のようなローゼンシュタットの町はため息が出そうなほど新鮮だ。
パパパパーン!
町の入り口に差し掛かると可愛い花火が打ち上げられ、『熱烈歓迎ブリュンヒルデ御一行様!』の懸垂幕が教会の尖塔に掲げられた。
ハッチを開け、恐る恐る首を出す。
「ようこそ、お立ち寄りくださいました! ローゼンシュタットの町を代表いたしまして、町長のミュンツァーがご挨拶申し上げます!」
同時に、町のあちこちから大人たちや子どもたちが現れて、バラの花びらを撒きながら歓待してくれた。
「い、いやあ……(^_^;)」
戸惑ってしまった、我々は巡回警備の分遣隊ということになっている。いわば、ただのパトロールだ。
どこの世界にパトロールを町ぐるみで歓待するところがあるというのだ。それも本人には内緒の誕生パーティーを開くように息を潜めて?
ケイトとロキは無邪気に喜んでいるが、我々は当惑するばかりだ。
「承知しております、ですから、お名前の下の敬称は記しておりません」
……なるほど、ブリュンヒルデの下には『姫』だの『殿下』だのの敬称は記されていない。
「このようにバラ以外にはなんの取り柄もない町です。なにもございませんが、我が町、我が家と思ってお寛ぎください」
詮索も野暮なようで、我々は、とりあえずはミュンツァー町長らの歓待を素直に受けることにした。
☆ ステータス
HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
68『ローゼンシュタット・1』テル
どっちが早かったのか……
峠に差し掛かったところで「停まれ」とヒルデは命じた。
同時に四号は停車した。
当たり前なら、車長であるヒルデが命じて、即座に操縦手であるタングリスがブレーキを踏んだということなんだけど、すこし違うのだ。
タングリスは、自分の判断で停車している。同時にヒルデも判断して命じている。
四号は一匹の像が耳をそばだてるようにして停止した。
具体的な変異や脅威を感じたわけではない。戦慣れした二人が同時に反射的に反応したことに車内に緊張が走る。
五人の乗員は息を潜め、クリーチャーのポチもロキのポケットに潜り込んでしまった。
ブルブルブルブルブル…………マイバッハV12エンジンの音だけが車内に響く。
「エンジンを切れ」
「エンジン切ります」
ブリュン……
四号はヒルデの真名の前半分を呟くようにしてなりを潜めた。
「え? どうかした?」
付き合いの浅いロキには分からないようだ。
「Cアラームが反応したような気がしたんだ」
ヒルデはCアラームを見つめる。Cアラーム(クリーチャー警報装置)は砲塔の天井にぶら下げてあり、砲手であるわたしの視界にも入っているのだが、アラームの反応には気づかなかったというかアラームは反応していないと思う。装填手のケイトも怪訝な顔をしている。
「タングリスは?」
「いや……ちょっと気配がしたもんでな。気のせいでしょ、進めてよろしいか?」
「ああ、前進しよう」
ヨッコラショと動き出すと、バラの香りが車内にまで入り込んできた。
そして、峠が下り坂になった瞬間、バラの花で溢れかえったローゼンシュタットの町が広がってきた。
うわあ!
ロキが歓声をあげ、みんなも、それぞれのペリスコープや貼視孔から外を覗く。
荒れ地同然の草原や灌木ばかりの、ゴルフで言えばラフやベアグランドのようなところばかり走ってきたので、お花畑のようなローゼンシュタットの町はため息が出そうなほど新鮮だ。
パパパパーン!
町の入り口に差し掛かると可愛い花火が打ち上げられ、『熱烈歓迎ブリュンヒルデ御一行様!』の懸垂幕が教会の尖塔に掲げられた。
ハッチを開け、恐る恐る首を出す。
「ようこそ、お立ち寄りくださいました! ローゼンシュタットの町を代表いたしまして、町長のミュンツァーがご挨拶申し上げます!」
同時に、町のあちこちから大人たちや子どもたちが現れて、バラの花びらを撒きながら歓待してくれた。
「い、いやあ……(^_^;)」
戸惑ってしまった、我々は巡回警備の分遣隊ということになっている。いわば、ただのパトロールだ。
どこの世界にパトロールを町ぐるみで歓待するところがあるというのだ。それも本人には内緒の誕生パーティーを開くように息を潜めて?
ケイトとロキは無邪気に喜んでいるが、我々は当惑するばかりだ。
「承知しております、ですから、お名前の下の敬称は記しておりません」
……なるほど、ブリュンヒルデの下には『姫』だの『殿下』だのの敬称は記されていない。
「このようにバラ以外にはなんの取り柄もない町です。なにもございませんが、我が町、我が家と思ってお寛ぎください」
詮索も野暮なようで、我々は、とりあえずはミュンツァー町長らの歓待を素直に受けることにした。
☆ ステータス
HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
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ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
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タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
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