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77『ローゼンシュタットを出発』
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RE・かの世界この世界
77『ローゼンシュタットを出発』テル
見送りは町長夫人だけだった。
ローゼンシュタットの町は降誕祭の後始末……というよりは、メデューサ被害の後始末で、とてもわたしたちの見送りどころではないのだ。
石化した町長に成り代わって夫人が指揮を執っている。その蝶々夫人が少しの間助役に指揮を任せて見送ってくれる。
「あくまでも、降誕祭の後始末です」
きっぱり言い切ったのは、町の人々が落ち込まないようにとの配慮からだろう。
広場を中心に道路や建物が破壊されただけではなく、石化が解けた人たちも倦怠感の他に関節痛などの後遺症が出ているのだ。
「じゃ、出来るだけ早く金の針を手に入れて町長さんを治療してお返しします」
「よろしくお願いします」
ブロン ブロロロ~~~~~
四号戦車は軽快に走り出した。
町長は石化して文字通り石像のようになっているので車内に入れることはできず、砲塔後部のゲペックカステン(物入れ)に括りつけてある。
車体の振動くらいで壊れることはないだろうが、クリーチャーの襲撃があるかもしれず、見張りの為にポチが張り付いている。
「ポチ、もう一回練習だ」
ロキが声を掛けると、ポチは砲塔の上で跳ねまわる。ただ跳ねまわっただけでは車内に伝わらないので、スパナを持たせてある。跳ねながらスパナで叩けということだ。
でも、シリンダーであるポチにはスパナを持つべき手が無いので、割れ目の所で咥えさせている。
「健気ではあるが、なんかイメージが……」
ヒルデは言葉を濁すが、意味はよく分かる。シリンダーと言うのはボール状のプニプニした体にスリットというか割れ目があって、淡いピンク色の肌とあいまって、桃のように……あるいは桃によく似た体の一部のように見える。
そいつが、やる気満々でスパナを咥えているのは猥褻な感じが拭えない(^_^;)。
カンカンカンカン!
スパナを振ってポチが砲塔を叩く。
「なにか、怒ってるみたいだな」
「みたいじゃなくて、怒ってるよ」
あちこちのハッチから身を乗り出したクルーが「ホーー」と感心する。
ポチはシリンダーではあるがヴァイゼンハオスの子どもたちと暮らすうちに知能が発達したんだろう。
「意外に可愛いものだな」
根は素直な性質のようで、ポチは割れ目の両脇の所をポッと赤くしている。
「まあ、ロキもポチもがんばれ」
「うん!」
「ペギーからメールが入ってるぞ!」
操縦手ハッチから顔を出したタングリスが通信手ハッチを指さす。
「いけね!」
猿のようなすばしこさでロキが戻る。通信はロキの役割だ。二秒で通信主席に戻って電信文を確認した。
「ムヘン街道との合流点で待ってるって!」
東に進路を取って、合流点を目指した。
幸い、クリーチャーに出くわすこともなく半日で合流点が見えてきた。
「あ、出店を開いてる」
ペギーは、十字路の南東の角に屋台を出して景気よく商売の真っ最中だ。
「やあ、メールもらったのに済まなかったね、ちょっと忙しくしていたもんで。ちょっと頼むね……」
いつに間に雇ったのか、二人のバイトに任せて通りに出てきた。
「ここじゃ、通行の邪魔になるから……あっちの空き地で」
街道は相変わらずの混雑ぶりだ。ペギーが交通整理をして四号を空き地に誘導してくれた。
「この石像みたいなのが、ローゼンシュタットの町長さんなんだ。金の針で治してやりたいんだが」
「あーーーーこりゃ無理だね」
「無理か?」
「強力な石化魔法がかかっている上に時間がたちすぎている、金の針でも無理だ」
「我にエスナの黒魔法が使えれば……」
額に皴を寄せ右手の五本の指をあてるという中二病ポーズでヒルデが呟く。ムヘンブルグ以来立派な姫騎士に戻っているのだが、時どき発作が出る(^_^;)。
「あんたは、もうエスナが使えるよ」
「ほ、本当か!?」
「ただ、この町長さんの石化はエスナラ以上の力が無いと解除できない。それにエスナは白魔法だからね」
「わ、我は、漆黒の堕天使なるぞ(`Δ´)o」
「手立てはないのか?」
電波なヒルデは放置して、クルーはペギーを囲んだ。
「む、無視すんなああ(;`O´)o!」
「あるにはあるが……」
「どこだ?」
「東の果てにエスナルの泉がある。そのエスナルの水で清めれば治るだろう」
「東の果てか……」
我々は、北のノルデンハーフェンを目指している、それを東に変更……。
また、大そうな寄り道になりそうだ……。
☆ ステータス
HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・50 マップ:5 金の針:0 所持金:800ギル(リポ払い残高35000ギル)
装備:剣士の装備レベル20(トールソード) 弓兵の装備レベル20(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
77『ローゼンシュタットを出発』テル
見送りは町長夫人だけだった。
ローゼンシュタットの町は降誕祭の後始末……というよりは、メデューサ被害の後始末で、とてもわたしたちの見送りどころではないのだ。
石化した町長に成り代わって夫人が指揮を執っている。その蝶々夫人が少しの間助役に指揮を任せて見送ってくれる。
「あくまでも、降誕祭の後始末です」
きっぱり言い切ったのは、町の人々が落ち込まないようにとの配慮からだろう。
広場を中心に道路や建物が破壊されただけではなく、石化が解けた人たちも倦怠感の他に関節痛などの後遺症が出ているのだ。
「じゃ、出来るだけ早く金の針を手に入れて町長さんを治療してお返しします」
「よろしくお願いします」
ブロン ブロロロ~~~~~
四号戦車は軽快に走り出した。
町長は石化して文字通り石像のようになっているので車内に入れることはできず、砲塔後部のゲペックカステン(物入れ)に括りつけてある。
車体の振動くらいで壊れることはないだろうが、クリーチャーの襲撃があるかもしれず、見張りの為にポチが張り付いている。
「ポチ、もう一回練習だ」
ロキが声を掛けると、ポチは砲塔の上で跳ねまわる。ただ跳ねまわっただけでは車内に伝わらないので、スパナを持たせてある。跳ねながらスパナで叩けということだ。
でも、シリンダーであるポチにはスパナを持つべき手が無いので、割れ目の所で咥えさせている。
「健気ではあるが、なんかイメージが……」
ヒルデは言葉を濁すが、意味はよく分かる。シリンダーと言うのはボール状のプニプニした体にスリットというか割れ目があって、淡いピンク色の肌とあいまって、桃のように……あるいは桃によく似た体の一部のように見える。
そいつが、やる気満々でスパナを咥えているのは猥褻な感じが拭えない(^_^;)。
カンカンカンカン!
スパナを振ってポチが砲塔を叩く。
「なにか、怒ってるみたいだな」
「みたいじゃなくて、怒ってるよ」
あちこちのハッチから身を乗り出したクルーが「ホーー」と感心する。
ポチはシリンダーではあるがヴァイゼンハオスの子どもたちと暮らすうちに知能が発達したんだろう。
「意外に可愛いものだな」
根は素直な性質のようで、ポチは割れ目の両脇の所をポッと赤くしている。
「まあ、ロキもポチもがんばれ」
「うん!」
「ペギーからメールが入ってるぞ!」
操縦手ハッチから顔を出したタングリスが通信手ハッチを指さす。
「いけね!」
猿のようなすばしこさでロキが戻る。通信はロキの役割だ。二秒で通信主席に戻って電信文を確認した。
「ムヘン街道との合流点で待ってるって!」
東に進路を取って、合流点を目指した。
幸い、クリーチャーに出くわすこともなく半日で合流点が見えてきた。
「あ、出店を開いてる」
ペギーは、十字路の南東の角に屋台を出して景気よく商売の真っ最中だ。
「やあ、メールもらったのに済まなかったね、ちょっと忙しくしていたもんで。ちょっと頼むね……」
いつに間に雇ったのか、二人のバイトに任せて通りに出てきた。
「ここじゃ、通行の邪魔になるから……あっちの空き地で」
街道は相変わらずの混雑ぶりだ。ペギーが交通整理をして四号を空き地に誘導してくれた。
「この石像みたいなのが、ローゼンシュタットの町長さんなんだ。金の針で治してやりたいんだが」
「あーーーーこりゃ無理だね」
「無理か?」
「強力な石化魔法がかかっている上に時間がたちすぎている、金の針でも無理だ」
「我にエスナの黒魔法が使えれば……」
額に皴を寄せ右手の五本の指をあてるという中二病ポーズでヒルデが呟く。ムヘンブルグ以来立派な姫騎士に戻っているのだが、時どき発作が出る(^_^;)。
「あんたは、もうエスナが使えるよ」
「ほ、本当か!?」
「ただ、この町長さんの石化はエスナラ以上の力が無いと解除できない。それにエスナは白魔法だからね」
「わ、我は、漆黒の堕天使なるぞ(`Δ´)o」
「手立てはないのか?」
電波なヒルデは放置して、クルーはペギーを囲んだ。
「む、無視すんなああ(;`O´)o!」
「あるにはあるが……」
「どこだ?」
「東の果てにエスナルの泉がある。そのエスナルの水で清めれば治るだろう」
「東の果てか……」
我々は、北のノルデンハーフェンを目指している、それを東に変更……。
また、大そうな寄り道になりそうだ……。
☆ ステータス
HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・50 マップ:5 金の針:0 所持金:800ギル(リポ払い残高35000ギル)
装備:剣士の装備レベル20(トールソード) 弓兵の装備レベル20(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
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テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
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タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
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