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87『エスナルの泉の秘密』
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RE・かの世界この世界
87『エスナルの泉の秘密』ブリュンヒルデ
そうですか……ここがエスナルの泉でしたか……
すっかり元気を取り戻したミュンツァー町長がしみじみと言う。
「ムヘン街道から東へはめったに行かないもので……むろん、エスナルの泉は初めてです」
石化してからここまでの記憶は無いので、テルとタングリスが説明してやったが、さすがに町長を務めるだけのことはあって理解が早い。テルもタングリスもここに来るまでの苦労は語らない。
わたしならいっぱい言うぞ、町長の事がなければ、ムヘン街道を北進して、今頃はノルデンハーフェンから船に乗っているところだ。
「しかし、ここまで来るにはご苦労があったんじゃないですか? 町の外に出ただけでクリーチャーに出くわすようになりましたし、ましてムヘン街道の東は魑魅魍魎の世界と言われています」
「こうやってみんなが揃っているのが答えです、あまり気にされるな」
くそ、タングリスは、こういうところでも大人だ。
「その妖精さんは?」
「ああ、ロキが連れていたシリンダーの変異体です」
「ヘンタイじゃないもん!」
聞き違えたポチが文句を言う。みんな穏やかに笑ったりして! くそ、シリンダーのくせに可愛じゃないか!
「シリンダーの変異体とは創世記に書かれている以外には、トール元帥の聖戦に二つほど例があるだけです、いずれも幼生のうちに心が通い合い、その上に共に激戦を経験しなければならないとか……あなた方も、それだけの戦いを……どうも大変なご迷惑をかけてしまったようです」
「頭を上げられよ、こうして全員無事なのですから」
「そうですね。わたしも良い体験をしました、こうして泉の恩恵をこうむるとは……トール元帥の聖戦では、傷ついた神々や兵士がここで傷を癒されたとか、幼いころに司祭のお説教で……うる憶えですがな」
「しかし、泉の効能もすばらしいが、景色の良いところですね。周囲の木々や岩など専門の庭師が設計したような美しさだ」
「たしかに……」
町長はタングリスやテルと共に泉を見はるかす、なんだか、温泉のCMにそのまま使えそうな風情だ。
あまりの穏やかさにウトウトしかける……。
「……いかん、ここを直ぐに離れなければ!」
町長の叫びで、熟睡する寸前で目が覚める。
「フワ!?」
「え?」
「あ?」
「どうしたんです!?」
なにかに怯えたように町長は後ずさり「早く逃げて!」と叫んで山への道を駆けだした、放っておくわけにもいかず、我々は町長を追って山道を峠の向こう、泉が見えなくなるところまで逃げた。
「こ、ここまで来れば大丈夫でしょう……」
泉で石化が解けた町長は、効果が効きすぎて陸上選手並みの脚で駆けてきたのだ、追いかけた我々も息が荒い。
「ど、どういうことなんだ、町長?」
目が回りそうだったが、タングリスとテルばかりじゃ面白くない、苦しい息を堪えて聞いた。
「思い出しました! 殿下、エスナルの泉というのはクリーチャーの一種なんです!」
「「「「「クリーチャー!?」」」」」
「はい、傷ついた者を癒すのは、癒したうえで形のいい木々や岩石に変えて、自分の身を飾るのが習性なのです。心地よさにグズグズしていると、ご覧になったような岩や木々に変えられてしまいます」
「そうだったのか!?」
「危ないところだったんだな」
「ん? ロキの鼻……」
なんとロキの鼻はピノキオのように木になって伸び始めているではないか!
セイ!
テルがすかさずソードを抜いて木になったところを切り落とした。
「えーと……お礼を言わなくっちゃならないんだろうけど、オレの鼻は、もうちょっと高くなかったっけ?」
「いやいや、そんなもんだ。さ、日も暮れる、みんな四号に戻るぞ」
五人乗りの四号に六人はギュウギュウだったが、なんとか乗り込み、一路ムヘン街道を目指して走り出した。
☆ ステータス
HP:9000 MP:5000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
87『エスナルの泉の秘密』ブリュンヒルデ
そうですか……ここがエスナルの泉でしたか……
すっかり元気を取り戻したミュンツァー町長がしみじみと言う。
「ムヘン街道から東へはめったに行かないもので……むろん、エスナルの泉は初めてです」
石化してからここまでの記憶は無いので、テルとタングリスが説明してやったが、さすがに町長を務めるだけのことはあって理解が早い。テルもタングリスもここに来るまでの苦労は語らない。
わたしならいっぱい言うぞ、町長の事がなければ、ムヘン街道を北進して、今頃はノルデンハーフェンから船に乗っているところだ。
「しかし、ここまで来るにはご苦労があったんじゃないですか? 町の外に出ただけでクリーチャーに出くわすようになりましたし、ましてムヘン街道の東は魑魅魍魎の世界と言われています」
「こうやってみんなが揃っているのが答えです、あまり気にされるな」
くそ、タングリスは、こういうところでも大人だ。
「その妖精さんは?」
「ああ、ロキが連れていたシリンダーの変異体です」
「ヘンタイじゃないもん!」
聞き違えたポチが文句を言う。みんな穏やかに笑ったりして! くそ、シリンダーのくせに可愛じゃないか!
「シリンダーの変異体とは創世記に書かれている以外には、トール元帥の聖戦に二つほど例があるだけです、いずれも幼生のうちに心が通い合い、その上に共に激戦を経験しなければならないとか……あなた方も、それだけの戦いを……どうも大変なご迷惑をかけてしまったようです」
「頭を上げられよ、こうして全員無事なのですから」
「そうですね。わたしも良い体験をしました、こうして泉の恩恵をこうむるとは……トール元帥の聖戦では、傷ついた神々や兵士がここで傷を癒されたとか、幼いころに司祭のお説教で……うる憶えですがな」
「しかし、泉の効能もすばらしいが、景色の良いところですね。周囲の木々や岩など専門の庭師が設計したような美しさだ」
「たしかに……」
町長はタングリスやテルと共に泉を見はるかす、なんだか、温泉のCMにそのまま使えそうな風情だ。
あまりの穏やかさにウトウトしかける……。
「……いかん、ここを直ぐに離れなければ!」
町長の叫びで、熟睡する寸前で目が覚める。
「フワ!?」
「え?」
「あ?」
「どうしたんです!?」
なにかに怯えたように町長は後ずさり「早く逃げて!」と叫んで山への道を駆けだした、放っておくわけにもいかず、我々は町長を追って山道を峠の向こう、泉が見えなくなるところまで逃げた。
「こ、ここまで来れば大丈夫でしょう……」
泉で石化が解けた町長は、効果が効きすぎて陸上選手並みの脚で駆けてきたのだ、追いかけた我々も息が荒い。
「ど、どういうことなんだ、町長?」
目が回りそうだったが、タングリスとテルばかりじゃ面白くない、苦しい息を堪えて聞いた。
「思い出しました! 殿下、エスナルの泉というのはクリーチャーの一種なんです!」
「「「「「クリーチャー!?」」」」」
「はい、傷ついた者を癒すのは、癒したうえで形のいい木々や岩石に変えて、自分の身を飾るのが習性なのです。心地よさにグズグズしていると、ご覧になったような岩や木々に変えられてしまいます」
「そうだったのか!?」
「危ないところだったんだな」
「ん? ロキの鼻……」
なんとロキの鼻はピノキオのように木になって伸び始めているではないか!
セイ!
テルがすかさずソードを抜いて木になったところを切り落とした。
「えーと……お礼を言わなくっちゃならないんだろうけど、オレの鼻は、もうちょっと高くなかったっけ?」
「いやいや、そんなもんだ。さ、日も暮れる、みんな四号に戻るぞ」
五人乗りの四号に六人はギュウギュウだったが、なんとか乗り込み、一路ムヘン街道を目指して走り出した。
☆ ステータス
HP:9000 MP:5000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
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