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94『ベルゲパンター』
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RE・かの世界この世界
94『ベルゲパンター』テル
ポチはホバリングして峠の向こうを指さしている。
キュロキュロと履帯の音がしてくる、四号よりも重厚な音……五号戦車パンター。
しかし、峠の鞍部に姿を現したものは、ポチの言う通り変だ。
車体こそは精悍なパンターだが、その上にあるはずの砲塔は無く、木の箱のようなものとクレーンが載っていて、傾斜した前面装甲の上には二号戦車の主砲である20ミリ機関砲だけが付いている。
「おーーい!」
タングリスがホッとした表情で道の真ん中に出て手を振る。
グシューー
変なパンターは鞍部に乗り上げたところでため息をつくような音をさせて停車した。
「……どうかしましたか?」
ハッチを開けて操縦手席から眼鏡の兵隊が首を出した。
「すまん、プラグがヘタって動けないんだ、予備があったら分けてくれないか。できれば、ノルデンハーフェンの整備隊まで牽引してくれると嬉しいんだが」
「ハ……はい、喜んで!」
一瞬の間があって、眼鏡は変なパンターを四号の近くまで寄せると、状況確認のために下りてきた。眼鏡は小柄な奴で襟には伍長の階級章が付いている。
「わたしは遊撃偵察隊のタングリスだ、船の時間に間に合わせたいので急いでくれるとありがたい。ん? そっちは貴様一人か?」
「はい、西部戦線の戦闘が終了したので、急いでベルゲパンターで向かうところであります。回収作業には現場の戦車兵が協力してくれますので、急いで車だけでもと先行しておるのです」
こいつは、ベルゲパンターという戦車回収車のようだ。
「伍長、おまえの名前は?」
ヒルデが偉そうに聞く。
伍長は多彩な乗員にたじろいだようだが、姿勢を正して答えてくれる。
「第七機甲師団、第一戦車回収隊のヤコブ伍長であります」
「ごくろう、なんとかなるか?」
「はい、路上の作業では時間もかかりますし、プラグの予備も数が揃いません。整備隊まで牽引させていただきます」
「そうか、では、みんなで手伝おう」
タングリスが目配せするとヒルデが下りてきて偉そうに指図する。
戦車の牽引と言うのは自動車のように簡単にはいかない。
車載のワイヤーロープを下ろすだけでも四人がかり。そいつをベルゲパンターのお尻と四号の前にあるフックに掛けるのだが、車体のフックとワイヤーロープを繋げるS型金具一個だけでも12キロの重量がある。フックに掛け終ると二本のワイヤーロープのテンションを均一にするために回収車の方を動かして微調整。無事に終わるのに三十分近くかかってしまった。
「ベルゲパンターの方が空いているので、何人か向こうに乗らないか」
タングリスが提案すると――仕方がないなあ――という顔。で……なんと、タングリスを除く全員が移動した。
みんな子どものようにベルゲパンターが珍しいのだ。
四号をけん引しながら鞍部を超えると、前方から護衛のパンターに引き連れられた別のベルゲパンターとトラックがやってきた。
「ラッキーだなヤコブ!」「オー、早々と」などと言いながらヤコブの仲間たちが追い越していく。
元来が真面目な照れ屋なのか、少年のように頬を染めるヤコブが可愛く思える。
「やっぱ、オープントップは気持ちいいなあ!」
「空気おいしい!」
「なんか、いろいろ積んでるねえ!?」
「あんまりはしゃぐな」
ケイトやロキに注意しながらも、いちばん面白がっているのはヒルデだ。
「お、プラグの予備が四ダースもあるぞ」
目ざとく発見したのもヒルデだ。
「あー、そんなところにありましたか!」
ヤコブの顔がいっそう赤くなった……。
☆ ステータス
HP:9000 MP:100 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
94『ベルゲパンター』テル
ポチはホバリングして峠の向こうを指さしている。
キュロキュロと履帯の音がしてくる、四号よりも重厚な音……五号戦車パンター。
しかし、峠の鞍部に姿を現したものは、ポチの言う通り変だ。
車体こそは精悍なパンターだが、その上にあるはずの砲塔は無く、木の箱のようなものとクレーンが載っていて、傾斜した前面装甲の上には二号戦車の主砲である20ミリ機関砲だけが付いている。
「おーーい!」
タングリスがホッとした表情で道の真ん中に出て手を振る。
グシューー
変なパンターは鞍部に乗り上げたところでため息をつくような音をさせて停車した。
「……どうかしましたか?」
ハッチを開けて操縦手席から眼鏡の兵隊が首を出した。
「すまん、プラグがヘタって動けないんだ、予備があったら分けてくれないか。できれば、ノルデンハーフェンの整備隊まで牽引してくれると嬉しいんだが」
「ハ……はい、喜んで!」
一瞬の間があって、眼鏡は変なパンターを四号の近くまで寄せると、状況確認のために下りてきた。眼鏡は小柄な奴で襟には伍長の階級章が付いている。
「わたしは遊撃偵察隊のタングリスだ、船の時間に間に合わせたいので急いでくれるとありがたい。ん? そっちは貴様一人か?」
「はい、西部戦線の戦闘が終了したので、急いでベルゲパンターで向かうところであります。回収作業には現場の戦車兵が協力してくれますので、急いで車だけでもと先行しておるのです」
こいつは、ベルゲパンターという戦車回収車のようだ。
「伍長、おまえの名前は?」
ヒルデが偉そうに聞く。
伍長は多彩な乗員にたじろいだようだが、姿勢を正して答えてくれる。
「第七機甲師団、第一戦車回収隊のヤコブ伍長であります」
「ごくろう、なんとかなるか?」
「はい、路上の作業では時間もかかりますし、プラグの予備も数が揃いません。整備隊まで牽引させていただきます」
「そうか、では、みんなで手伝おう」
タングリスが目配せするとヒルデが下りてきて偉そうに指図する。
戦車の牽引と言うのは自動車のように簡単にはいかない。
車載のワイヤーロープを下ろすだけでも四人がかり。そいつをベルゲパンターのお尻と四号の前にあるフックに掛けるのだが、車体のフックとワイヤーロープを繋げるS型金具一個だけでも12キロの重量がある。フックに掛け終ると二本のワイヤーロープのテンションを均一にするために回収車の方を動かして微調整。無事に終わるのに三十分近くかかってしまった。
「ベルゲパンターの方が空いているので、何人か向こうに乗らないか」
タングリスが提案すると――仕方がないなあ――という顔。で……なんと、タングリスを除く全員が移動した。
みんな子どものようにベルゲパンターが珍しいのだ。
四号をけん引しながら鞍部を超えると、前方から護衛のパンターに引き連れられた別のベルゲパンターとトラックがやってきた。
「ラッキーだなヤコブ!」「オー、早々と」などと言いながらヤコブの仲間たちが追い越していく。
元来が真面目な照れ屋なのか、少年のように頬を染めるヤコブが可愛く思える。
「やっぱ、オープントップは気持ちいいなあ!」
「空気おいしい!」
「なんか、いろいろ積んでるねえ!?」
「あんまりはしゃぐな」
ケイトやロキに注意しながらも、いちばん面白がっているのはヒルデだ。
「お、プラグの予備が四ダースもあるぞ」
目ざとく発見したのもヒルデだ。
「あー、そんなところにありましたか!」
ヤコブの顔がいっそう赤くなった……。
☆ ステータス
HP:9000 MP:100 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
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タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
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