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113『我が食のトラウマ』
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RE・かの世界この世界
113『我が食のトラウマ』ブリュンヒルデ
大通りをヤコブの家に通じる道。その角を曲がった時からいい匂いがしている。
ちょうど昼に差しかかっていたので、レストランかなにかがあるんじゃないかと思った。
主神オーディンの娘に生まれたが、贅沢に育ったわけではない。
父オーディンは元来放浪の神であるので生活は質素だ。ヴァルハラは大きくて立派な城だが、七歳まで父の事は城の管理人くらいにしか思っていなかった。むろん、平の管理人ではないが、せいぜい管理課長くらい。城にいる者たちも七歳までは名前のままブリュンヒルデとかヒルデの愛称で呼んでいた、ひどいのになるとブリと悪意のこもった呼び捨てだった。でもまあ、管理人の娘なら、そんなものだろうと疑うことも無かった。
食事も城に仕える者たちといっしょ、当たり前のように大食堂で食べていた。大食堂はバイキング形式で、トレーを持って自分の好きなメニューを取る……というのは建前で、子どもが大人たちに交じって好きなものを取るのは至難の業。なんとなく子ども用大人用に分かれ、大人用でも戦士のテーブルとか女官たちのテーブルとか事務職のテーブルごとに集まる傾向があった。
小さな子は大きな子が面倒を見てくれるので、知らず知らずのうちに大食堂での作法が身についていく。
トール元帥の戦士たちが食べているのがとても美味しそうで、早く大人になって食べてみたいと、他の子どもたち同様にヨダレを垂らしていた。
七歳になって王女の待遇になった。
王女の待遇と言っても、呼ばれ方がブリュンヒルデから殿下に変わっただけと言っていい。改まった時に『ブリュンヒルデ殿下』とか『ブリュンヒルデ姫』とか、儀式の時は『天の下知ろしめすオーディンの娘にしてグラズヘイムの花。ヴァルキリアの陣頭に立つ我らが麗しのブリュンヒルデ姫』と伝統的尊称で呼ばれる。学校に上がって侍女が付くようになって、その侍女が融通の利かない奴で、呼ぶたびに尊称で呼ぶ。そのうえドンクサくて、しょっちゅう間違う。間違ったら言いなおしだ。登校前の忙しい時に五回も六回も言い直されると遅刻してしまう。じっさい遅刻してしまうんだけど「侍女のやつが、何度も言い間違えるからあ!」とは言えない。ただ「すみませんでした」と謝って廊下に立たされる。
この侍女が交代すると言うので「誰でもいいけど、天の下知ろしめすオーディンの娘にしてグラズヘイムの花。ヴァルキリアの先頭に立つ我らが麗しのブリュンヒルデ姫とは呼ばない人にして!」とだけ注文を付けた。
すると、次の侍女は「殿下」と簡単に呼んでくれる。
いいっちゃいいんだけど、そのころ、よく便秘になって朝のトイレが長くなることがあった。すると、その侍女はトイレのドアを叩いて「殿下! 殿下! はやく! 殿下!」と叫ぶ。むろん「遅刻しますよ!」いう意味なんだけど、わたし的には「早く出んか!」に聞こえる。
まあ、そんな少女期が過ぎて、なんとか姫騎士と自他ともに認められるようになって、大食堂でもトール元帥の戦士たちの列に並んで好きなものが食べられるようになった。
で…………不味かった(-_-;)。
憧れの騎士飯がこれかあああああ(╬•᷅д•᷄╬)……というくらいに不味かった。
子どものころからの期待が大きすぎたせいかもしれない、わたしが早くにブァルハラを出ることになった原因の一つは、この大食堂の不味さにあることは確かだ。
そういう食の原体験があるせいか、ヤコブの家から漂ってくる美味しそうな匂いは凄まじかった!
グ~~~~~~~~~~~
四号の乗員全員のお腹が鳴ったぞ。
この香り、この匂い……クンカクンカ…………もし、ヴァルハラの大食堂の時みたいに食べたらぜんぜん違った! ということになれば発狂するぞ~!
☆ ステータス
HP:13000 MP:150 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・80 マップ:8 金の針:0 所持金:5500ギル(リポ払い残高29000ギル)
装備:剣士の装備レベル30(トールソード) 弓兵の装備レベル29(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
113『我が食のトラウマ』ブリュンヒルデ
大通りをヤコブの家に通じる道。その角を曲がった時からいい匂いがしている。
ちょうど昼に差しかかっていたので、レストランかなにかがあるんじゃないかと思った。
主神オーディンの娘に生まれたが、贅沢に育ったわけではない。
父オーディンは元来放浪の神であるので生活は質素だ。ヴァルハラは大きくて立派な城だが、七歳まで父の事は城の管理人くらいにしか思っていなかった。むろん、平の管理人ではないが、せいぜい管理課長くらい。城にいる者たちも七歳までは名前のままブリュンヒルデとかヒルデの愛称で呼んでいた、ひどいのになるとブリと悪意のこもった呼び捨てだった。でもまあ、管理人の娘なら、そんなものだろうと疑うことも無かった。
食事も城に仕える者たちといっしょ、当たり前のように大食堂で食べていた。大食堂はバイキング形式で、トレーを持って自分の好きなメニューを取る……というのは建前で、子どもが大人たちに交じって好きなものを取るのは至難の業。なんとなく子ども用大人用に分かれ、大人用でも戦士のテーブルとか女官たちのテーブルとか事務職のテーブルごとに集まる傾向があった。
小さな子は大きな子が面倒を見てくれるので、知らず知らずのうちに大食堂での作法が身についていく。
トール元帥の戦士たちが食べているのがとても美味しそうで、早く大人になって食べてみたいと、他の子どもたち同様にヨダレを垂らしていた。
七歳になって王女の待遇になった。
王女の待遇と言っても、呼ばれ方がブリュンヒルデから殿下に変わっただけと言っていい。改まった時に『ブリュンヒルデ殿下』とか『ブリュンヒルデ姫』とか、儀式の時は『天の下知ろしめすオーディンの娘にしてグラズヘイムの花。ヴァルキリアの陣頭に立つ我らが麗しのブリュンヒルデ姫』と伝統的尊称で呼ばれる。学校に上がって侍女が付くようになって、その侍女が融通の利かない奴で、呼ぶたびに尊称で呼ぶ。そのうえドンクサくて、しょっちゅう間違う。間違ったら言いなおしだ。登校前の忙しい時に五回も六回も言い直されると遅刻してしまう。じっさい遅刻してしまうんだけど「侍女のやつが、何度も言い間違えるからあ!」とは言えない。ただ「すみませんでした」と謝って廊下に立たされる。
この侍女が交代すると言うので「誰でもいいけど、天の下知ろしめすオーディンの娘にしてグラズヘイムの花。ヴァルキリアの先頭に立つ我らが麗しのブリュンヒルデ姫とは呼ばない人にして!」とだけ注文を付けた。
すると、次の侍女は「殿下」と簡単に呼んでくれる。
いいっちゃいいんだけど、そのころ、よく便秘になって朝のトイレが長くなることがあった。すると、その侍女はトイレのドアを叩いて「殿下! 殿下! はやく! 殿下!」と叫ぶ。むろん「遅刻しますよ!」いう意味なんだけど、わたし的には「早く出んか!」に聞こえる。
まあ、そんな少女期が過ぎて、なんとか姫騎士と自他ともに認められるようになって、大食堂でもトール元帥の戦士たちの列に並んで好きなものが食べられるようになった。
で…………不味かった(-_-;)。
憧れの騎士飯がこれかあああああ(╬•᷅д•᷄╬)……というくらいに不味かった。
子どものころからの期待が大きすぎたせいかもしれない、わたしが早くにブァルハラを出ることになった原因の一つは、この大食堂の不味さにあることは確かだ。
そういう食の原体験があるせいか、ヤコブの家から漂ってくる美味しそうな匂いは凄まじかった!
グ~~~~~~~~~~~
四号の乗員全員のお腹が鳴ったぞ。
この香り、この匂い……クンカクンカ…………もし、ヴァルハラの大食堂の時みたいに食べたらぜんぜん違った! ということになれば発狂するぞ~!
☆ ステータス
HP:13000 MP:150 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・80 マップ:8 金の針:0 所持金:5500ギル(リポ払い残高29000ギル)
装備:剣士の装備レベル30(トールソード) 弓兵の装備レベル29(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
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―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
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タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
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