かの世界この世界

武者走走九郎or大橋むつお

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134『ヤマタ或いはヘルムの神』

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RE・かの世界この世界

134『ヤマタ或いはヘルムの神』ブリュンヒルデ  




 クレーターの中心へポチを含めた四人で飛び込む!

 少し前なら、準備も偵察もなしに飛び込むような真似はしなかっただろう。ストマックとその変異体をやっつけて確信めいたものが湧いてきた。テルにもタングリスにも迷いはない。わたし(ブリュンヒルデ)もいつもの意地っ張りではない。ポチも小さな体に自信をみなぎらせている。

 穴には無数の横穴があって四人を惑わせる。惑わせるばかりではない、ほとんどの穴からは見たこともないクリーチャーが攻撃を仕掛けてくる。

 しかし四人は、戦い慣れたダンジョンのように、あらかじめクリーチャーの出現が分かっているかのように切り抜けていく! クリーチャーたちも仕掛けてくるというのではなく、触手や触角、あるいは嗅覚、あるいは皮膚感覚、霊感的な感覚で、我々の正体を探っているようだ。ついさっきまで、我々も擬態した大蜘蛛やストマックに嵌められ、周囲のあらゆるものを警戒したことに似ている。

 やがて納得したのか、情報が並列化されたのか、手出しすることを止め、大人しく見守るようになってきた。



 ……この先に空がある!



 地下に向かって落ちているはずなのに空を予感した。落下しつつバク転すると、予感通り重力が反転し、急速にブレーキがかかった。

 スポ スポポポ スポポポポ ポーン!

 小気味よくビール瓶の栓を開けたような音をさせて、旋回しつつ空中に躍り出た。



 そこは、本来のヘルムの奥つ城であった。



 ヘルムは分断されておらず、灌木林の向こうにはヘルムの自然や街が地続きで広がっている。

 四人が旋回する中心には穏やかな野球場ほどの草原があり、草原の真ん中には象ほどの大きさのエメラルドが鎮座している。エメラルドはキラキラ光り、あたかもヘルムの自然にエネルギーを供給するかのように外に向かってエネルギーを発している。

 キラキラキラ……

 眩しくて目をつぶりそうになるが、こいつから目を離すと遠心力で振りとばされて何もかもがお仕舞になるか振り出しに戻されそうな気がする。

「みんな、あれから目を離してはいけないぞ! 指の隙間からでも目を細めてもいい、あれをしっかり見ておくんだ!」

「わ、分かった」

「ラジャー!」

「承知!」

 四人が旋回するにつれ、エネルギーの中心がエメラルドの頂点に凝縮して人の形をとった。



 それは、ユーリアの形を結んだ!



「クリーチャーではないな……」

 声に出したのはわたし一人だったが、他の三人も同じ気持ちなのだろう、穏やかに着地した。

「「さすがはオーディンの姫君とお仲間、正しく理解していただけているようで心強く思います」」

 不思議だった、喋っているのはユーリアなのだが、声には二人分の響きがある。

「あなたは?」

「「ユーリアであったものであり、ヤマタであったものです」」

「つまり……」

「「この身をなんと呼ぶか、それは、わたしが伝説となっていく間に定まっていくでしょう……とりあえずはヘルムとでもお呼びください」」

「ヘルム」

 一歩前に出たタングリスが続ける。

「戒めを解いて、ユーリアを家族の元に帰してはもらえないだろうか」

「「それについては、少し話を聞いてもらえますか」」

「はい、謹んで」

 きっぱり言うと、タングリスは一歩退いて、わたしの斜め後ろに収まる。

 ここでは神域の序列を守らなければならないと思ったようだ。

「わたしはオーディン以前の神によって遣わされました、神としての有りようが違うのです」

「違うと言われると?」

「長い話になりますが、聞いていただけるでしょうか……」

「はい、みんなもいいだろう?」

 三人は、草の上に腰を落ち着けることで賛意を示した。

 ヤマタの……ヘルムの神との対話が始まった……。




☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


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