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136『標(しるべ)』
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RE・かの世界この世界
136『標(しるべ)』ブリュンヒルデ
ずっとヘルムを照らしてきましたが、ここまでです……
ヘルム神の姿が薄くなってきた。
「あなたが消えると、この島は闇になるのか?」
「あなた方が思うところの闇ではありません、この世に光をあらしめているのは至高の神より託されたオーディンです。わたしは、オーディンがつつがなく役目を果たせるように、オーディンの世界の標(しるべ)の役割を果たしてきたのです。標を失った地上は闇よりもひどい世界になります……残り僅かの力を振り絞って、あなたたちをアグネスの家に戻します。家に戻れば、ユーリアの意識は戻るでしょう。そこからは世界樹ユグドラシルの根元に住む時の女神ノルン姉妹が標の代わりをしてくれるでしょう……」
「標の代わりとは?」
「オーディンの姫ブリュンヒルデ、貴女はムヘンの流刑地を離れたことで運命づけられたのです、この世界の綻びを繕い、緩んだ世界の関節を締め直す役割が。その標となるのがノルン姉妹なのです」
「この世界……ノルン姉妹はユグドラシルの全ての時を司どっています、神のおっしゃる世界とは……」
「…………」
「まさか、全ての世界!?」
「控えよ、タングリス!」
「ユグドラシルが包接する世界は、神の国アスガルドをはじめとして、ミッドガルド、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ヨトゥンヘイム、アルフヘイム、ムスペルヘイム、ニダヴェリール、ヘルヘイムの九つです! その九つ全てを指しておられるのか!?」
「タングリス!」
「よいのです。タングリスはトールの部下、優秀な軍人です。軍人にあいまいな表現は禁物、命を懸けて戦うのですからね。わたしは、これでも神。神が口にすれば命令同然、いえ運命になってしまいます。だから『世界』という言葉で堪忍してください」
「は、はい……」
「そして、外つ国の乙女、貴女は姫を助けたことでこの世界に抜き差しならない縁を持ってしまいました。この世界の綻び緩みが貴女を呼び寄せてしまいました。貴女は姫を助けることでのみ元の世界に戻ることができます」
「わたしのこともご存知なのですか!?」
「はい、ずっとこの世界を照らしてきましたから、その光は『始まりの草原』にも『荒れ地の峠』にも届いているのです。貴女もオーディンの姫に劣らぬ宿命を背負わされているようです。いずれは元の世界に戻ることになるでしょうが、一筋縄ではいかないでしょう。姫を助けながら進んでください。お互い助け合わなければ、この世界もかの世界も、運命の乱れからは解放されないでしょう、こちらとあちらを行きつ戻りつして道を探ってください。外つ国の勇者○○よ」
ヘルムの神はテルの真名を呼んだようだが、わたしには聞こえなかった。
テルも怪訝な表情をしているが聞き返すことはしない。わたし同様、何事かを悟ったのだろう。
「たとえ行き止まりでも、必ず別の道があります。苦しければ立ち止まってもいいのです。三歩前進二歩後退です。もう、あなたたちの道を照らすこともできませんが、助け合い、励まし合って前に進んでくださいね……かの世界にもこの世界にも光を、光あれかしと……祈って……いますよ……」
そこまでだった、ユーリアに似たヤマタの神は輪郭を失って無数の光の粒子となって我々を包んだ。
光の粒子に包まれてホワイトアウトした我々は、次の瞬間、ユーリアとヤコブの母であるアグネスの庭に戻ってきた。
街の住人が酔いつぶれて、あちこちで眠っている。半身を起こしてボーっとしているのは四号の四人の乗員たちだ。
「出発の朝に戻ったようです」
ふらつきながらもタングリスが立ち上がって状況を確認している。テルも周囲を見渡しロキとケイトが無事なのを見て肩の力を抜いた。
「みなさーーん!」
駆け寄ってきたのはユーリアだ。
「ユーリア、憶えているか?」
「はい、ヘルム神は『ユーリアを取り込んでも輝きを取り戻せるのは、ほんの僅かの時間。間もなくユーリアを取り戻そうとして仲間たちがやってくる。わたしは、その者たちに全てを託そうと思う、いっしょに帰るがいい』とおっしゃいました。どうやら、今朝の時間まで戻ったようです……時の女神ノルン姉妹に託したというのは、このことなんでしょうか?」
「いや……そうでもないようだ」
目まいがした。いや、目まいがしたように感じたんだ。
まるでVRゲームがバグったように空間が歪んでくる。遠近感がむちゃくちゃになり、雲がすぐ目の前に迫ったかと思うと、わたしの顔を覗き込んでいたユーリアの顔が数百メートルの彼方でゆらゆら揺れて、四号の車体がシュールにゆがんだり、風景そのものがバクテリアの鼓動に似た変形を繰り返す。
気持ちが悪い……世界が標を失うということはこういうことなのか?
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル (寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
ペギー 荒れ地の万屋
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
136『標(しるべ)』ブリュンヒルデ
ずっとヘルムを照らしてきましたが、ここまでです……
ヘルム神の姿が薄くなってきた。
「あなたが消えると、この島は闇になるのか?」
「あなた方が思うところの闇ではありません、この世に光をあらしめているのは至高の神より託されたオーディンです。わたしは、オーディンがつつがなく役目を果たせるように、オーディンの世界の標(しるべ)の役割を果たしてきたのです。標を失った地上は闇よりもひどい世界になります……残り僅かの力を振り絞って、あなたたちをアグネスの家に戻します。家に戻れば、ユーリアの意識は戻るでしょう。そこからは世界樹ユグドラシルの根元に住む時の女神ノルン姉妹が標の代わりをしてくれるでしょう……」
「標の代わりとは?」
「オーディンの姫ブリュンヒルデ、貴女はムヘンの流刑地を離れたことで運命づけられたのです、この世界の綻びを繕い、緩んだ世界の関節を締め直す役割が。その標となるのがノルン姉妹なのです」
「この世界……ノルン姉妹はユグドラシルの全ての時を司どっています、神のおっしゃる世界とは……」
「…………」
「まさか、全ての世界!?」
「控えよ、タングリス!」
「ユグドラシルが包接する世界は、神の国アスガルドをはじめとして、ミッドガルド、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ヨトゥンヘイム、アルフヘイム、ムスペルヘイム、ニダヴェリール、ヘルヘイムの九つです! その九つ全てを指しておられるのか!?」
「タングリス!」
「よいのです。タングリスはトールの部下、優秀な軍人です。軍人にあいまいな表現は禁物、命を懸けて戦うのですからね。わたしは、これでも神。神が口にすれば命令同然、いえ運命になってしまいます。だから『世界』という言葉で堪忍してください」
「は、はい……」
「そして、外つ国の乙女、貴女は姫を助けたことでこの世界に抜き差しならない縁を持ってしまいました。この世界の綻び緩みが貴女を呼び寄せてしまいました。貴女は姫を助けることでのみ元の世界に戻ることができます」
「わたしのこともご存知なのですか!?」
「はい、ずっとこの世界を照らしてきましたから、その光は『始まりの草原』にも『荒れ地の峠』にも届いているのです。貴女もオーディンの姫に劣らぬ宿命を背負わされているようです。いずれは元の世界に戻ることになるでしょうが、一筋縄ではいかないでしょう。姫を助けながら進んでください。お互い助け合わなければ、この世界もかの世界も、運命の乱れからは解放されないでしょう、こちらとあちらを行きつ戻りつして道を探ってください。外つ国の勇者○○よ」
ヘルムの神はテルの真名を呼んだようだが、わたしには聞こえなかった。
テルも怪訝な表情をしているが聞き返すことはしない。わたし同様、何事かを悟ったのだろう。
「たとえ行き止まりでも、必ず別の道があります。苦しければ立ち止まってもいいのです。三歩前進二歩後退です。もう、あなたたちの道を照らすこともできませんが、助け合い、励まし合って前に進んでくださいね……かの世界にもこの世界にも光を、光あれかしと……祈って……いますよ……」
そこまでだった、ユーリアに似たヤマタの神は輪郭を失って無数の光の粒子となって我々を包んだ。
光の粒子に包まれてホワイトアウトした我々は、次の瞬間、ユーリアとヤコブの母であるアグネスの庭に戻ってきた。
街の住人が酔いつぶれて、あちこちで眠っている。半身を起こしてボーっとしているのは四号の四人の乗員たちだ。
「出発の朝に戻ったようです」
ふらつきながらもタングリスが立ち上がって状況を確認している。テルも周囲を見渡しロキとケイトが無事なのを見て肩の力を抜いた。
「みなさーーん!」
駆け寄ってきたのはユーリアだ。
「ユーリア、憶えているか?」
「はい、ヘルム神は『ユーリアを取り込んでも輝きを取り戻せるのは、ほんの僅かの時間。間もなくユーリアを取り戻そうとして仲間たちがやってくる。わたしは、その者たちに全てを託そうと思う、いっしょに帰るがいい』とおっしゃいました。どうやら、今朝の時間まで戻ったようです……時の女神ノルン姉妹に託したというのは、このことなんでしょうか?」
「いや……そうでもないようだ」
目まいがした。いや、目まいがしたように感じたんだ。
まるでVRゲームがバグったように空間が歪んでくる。遠近感がむちゃくちゃになり、雲がすぐ目の前に迫ったかと思うと、わたしの顔を覗き込んでいたユーリアの顔が数百メートルの彼方でゆらゆら揺れて、四号の車体がシュールにゆがんだり、風景そのものがバクテリアの鼓動に似た変形を繰り返す。
気持ちが悪い……世界が標を失うということはこういうことなのか?
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
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テル (寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
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タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
ペギー 荒れ地の万屋
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