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201『鬼ノ城・3』
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かの世界この世界
201『鬼ノ城・3』テル
「あ……いや……あなた方でしたか……」
解れるように太刀先を下ろしたのは、ついさっきカーラジオで消息を聞いたばかりの屋島の英雄だ。
「与一さん、どうしてここに……」
「あ、いやはや、お恥ずかしい」
あまりのことに、わたしの言葉に続く者はいない。イザナギさんでさえ、意外な再会に目を丸くしている。
「事情があるようだな。ここで会ったのもなにかの縁だ、よかったら聞かせてくれ」
最初に口を開いたのはヒルデだ。
自分自身ラグナロクに向けて悩み多いヴァルキリーの姫騎士、屋島の英雄に想いを重ねるところがあるんだろう。
「お恥ずかしい話ですが、壇ノ浦から逃げてきました」
「逃げてきただって!?」
「!?」
子ども二人の目が三角になる。
イザナギさんが二人の後ろにまわり、そっと抱き寄せた――こういう時は、そっと話を聞け――という姿勢だ。この神さまは、学校の先生に向いているのかもしれない。
「屋島でもお話しましたが、わたしには十人の兄が居ります」
そうだ、与一という名前の由来は十一男という意味なんだ。
落語風に言うと与太郎で、日本人にはこちらの方が通りがいいが、ひとかどの侍としては間が抜けすぎている。
それで、ちょっと工夫して『与一』という、ちょっとカッコいい名乗りにしたんだ。
おそらくは、那須の大田舎から出征するにあたり、母親がそう名乗るように言ったんだろう。
「兄たちは、ことごとく平家の郎党です。わたしのことなど眼中にない兄たちでしたが、その兄たちが、こぞって平家に与力するように言ってくるのです。一番上の兄などは、すでに平家の敗北を予見して『いざという時は、与一の才覚で一家の存続と繁栄を計れ』と申してきました」
「板挟みなのだな……」
「悪目立ちしすぎました。源氏の方でも――与一に一方の大将を任せてみては――という推挙の声も上がりました」
「うむ、それは頷ける。与一には人気と時の運がついている。それに、その謙虚な姿勢。武将として並みの力を持っていれば、壇ノ浦でも名前に相応しいだけの手柄は立てられるだろう」
「ご推挙の先頭に立っておられたのは梶原景時殿、景時殿は源氏の軍監です。梶原殿は鎌倉殿の軍監として義経様のお手柄を快く思ってはおられません」
「それで、逃げてきたっていうのかよ!」
「最後まで聞きなさい、桃太郎二号くん」
「御大将、義経様にも相談いたしましたが『与一君の良いようにしたらいい』とおっしゃいます」
「それは……与一がどちらに付こうと自分の勝利に変わりはない……義経の自信の現われだな?」
「義経様は『どちらに付こうと、与一君が扇の的を落として源氏の意気を高めてくれた手柄は古今無双だ。それだけで、那須の本領を安堵してお釣りが出る』とおっしゃいました」
「そうか」
「そして『与一、君は鎌倉で軍団を結成して以来一日も休暇を取っていないなあ、有給休暇溜まりまくってるから、ちょっと休暇をとればいいよ。去年の使い残しも含めて40日。それだけあれば、壇ノ浦なんて片付いてしまう。都の凱旋パレードには出て欲しいかなぁ。よし、たった今から与一は休暇だ!』と笑って送り出してくださいました」
「タイプは違いますが、トール元帥がおやりになりそうな気配りです」
「そうだな、爺の若いころはそんなだったかもしれんな……しかし、だったら、なんで、こんな鬼ノ城で身を隠しているんだ?」
「わたしのことを快く思わない者が、源平双方に居ります。先に陣を畳んで戻るのは、なにか企んでいるに違いないと邪推され、追手を差し向けられて……いやはや、これも与太郎の浅はかさ、考えの及ばぬところでした……しかし、まあ、良いのです。この身はどうなろうと、手柄は手柄、那須の領地と母の暮らしはなんとかなるでしょう」
なんとか微笑もうとするが、目に光が灯らない。ちょっと痛々しい。
「なるほどなるほど……そういうことだったのか……」
一通りの事情を聞くと、ヒルデは「うぅ~~~ん」とノビをして与一さんの方に顔を向けた。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・500 マップ:30 金の針:100 福袋 所持金:440000ギル(リボ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎二号 因幡の白ウサギ
201『鬼ノ城・3』テル
「あ……いや……あなた方でしたか……」
解れるように太刀先を下ろしたのは、ついさっきカーラジオで消息を聞いたばかりの屋島の英雄だ。
「与一さん、どうしてここに……」
「あ、いやはや、お恥ずかしい」
あまりのことに、わたしの言葉に続く者はいない。イザナギさんでさえ、意外な再会に目を丸くしている。
「事情があるようだな。ここで会ったのもなにかの縁だ、よかったら聞かせてくれ」
最初に口を開いたのはヒルデだ。
自分自身ラグナロクに向けて悩み多いヴァルキリーの姫騎士、屋島の英雄に想いを重ねるところがあるんだろう。
「お恥ずかしい話ですが、壇ノ浦から逃げてきました」
「逃げてきただって!?」
「!?」
子ども二人の目が三角になる。
イザナギさんが二人の後ろにまわり、そっと抱き寄せた――こういう時は、そっと話を聞け――という姿勢だ。この神さまは、学校の先生に向いているのかもしれない。
「屋島でもお話しましたが、わたしには十人の兄が居ります」
そうだ、与一という名前の由来は十一男という意味なんだ。
落語風に言うと与太郎で、日本人にはこちらの方が通りがいいが、ひとかどの侍としては間が抜けすぎている。
それで、ちょっと工夫して『与一』という、ちょっとカッコいい名乗りにしたんだ。
おそらくは、那須の大田舎から出征するにあたり、母親がそう名乗るように言ったんだろう。
「兄たちは、ことごとく平家の郎党です。わたしのことなど眼中にない兄たちでしたが、その兄たちが、こぞって平家に与力するように言ってくるのです。一番上の兄などは、すでに平家の敗北を予見して『いざという時は、与一の才覚で一家の存続と繁栄を計れ』と申してきました」
「板挟みなのだな……」
「悪目立ちしすぎました。源氏の方でも――与一に一方の大将を任せてみては――という推挙の声も上がりました」
「うむ、それは頷ける。与一には人気と時の運がついている。それに、その謙虚な姿勢。武将として並みの力を持っていれば、壇ノ浦でも名前に相応しいだけの手柄は立てられるだろう」
「ご推挙の先頭に立っておられたのは梶原景時殿、景時殿は源氏の軍監です。梶原殿は鎌倉殿の軍監として義経様のお手柄を快く思ってはおられません」
「それで、逃げてきたっていうのかよ!」
「最後まで聞きなさい、桃太郎二号くん」
「御大将、義経様にも相談いたしましたが『与一君の良いようにしたらいい』とおっしゃいます」
「それは……与一がどちらに付こうと自分の勝利に変わりはない……義経の自信の現われだな?」
「義経様は『どちらに付こうと、与一君が扇の的を落として源氏の意気を高めてくれた手柄は古今無双だ。それだけで、那須の本領を安堵してお釣りが出る』とおっしゃいました」
「そうか」
「そして『与一、君は鎌倉で軍団を結成して以来一日も休暇を取っていないなあ、有給休暇溜まりまくってるから、ちょっと休暇をとればいいよ。去年の使い残しも含めて40日。それだけあれば、壇ノ浦なんて片付いてしまう。都の凱旋パレードには出て欲しいかなぁ。よし、たった今から与一は休暇だ!』と笑って送り出してくださいました」
「タイプは違いますが、トール元帥がおやりになりそうな気配りです」
「そうだな、爺の若いころはそんなだったかもしれんな……しかし、だったら、なんで、こんな鬼ノ城で身を隠しているんだ?」
「わたしのことを快く思わない者が、源平双方に居ります。先に陣を畳んで戻るのは、なにか企んでいるに違いないと邪推され、追手を差し向けられて……いやはや、これも与太郎の浅はかさ、考えの及ばぬところでした……しかし、まあ、良いのです。この身はどうなろうと、手柄は手柄、那須の領地と母の暮らしはなんとかなるでしょう」
なんとか微笑もうとするが、目に光が灯らない。ちょっと痛々しい。
「なるほどなるほど……そういうことだったのか……」
一通りの事情を聞くと、ヒルデは「うぅ~~~ん」とノビをして与一さんの方に顔を向けた。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・500 マップ:30 金の針:100 福袋 所持金:440000ギル(リボ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
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テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
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ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
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