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229『勝利、そして心の準備をする間もなく 』
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RE・かの世界この世界
229『勝利、そして心の準備をする間もなく 』テル
「ここを開けろぉ! ここを開けろぉ! 開けぬかここをぉ!」
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
イザナミに加えて無数の鬼や醜女たちが頭突きや体当たりして、内側から千曳の大岩を動かそう、絶ち割ろうとする。
その度に、大岩はビリビリと震え、イザナギ組というか『黄泉の国を目指す神々の会』の仲間は全員で大岩を押しとどめた。
ウーーーーーン!!
力は拮抗して、もう少し頑張れば完全に密封できるかと思った。
死ぬ気で力を合わせれば、どんなことだってできるんだ!
ウーーーーーン!!!
勝利を確信した時、岩の内側から声がした。
「ええい、憎いぃ憎いぃ、憎いぞイザナギぃ……かくなる上は、これからは、日に千の命を奪って黄泉の国にさらってやるからなあぁぁぁぁぁぁぁ!」
日に千人の命を奪う……千とは単なる数の問題じゃない。イザナギさんへの怨みの深さを数で表したんだ、この怨み、千尋の海よりも千尋の谷よりも深いという怨みの多寡でしか表せない心の内を胃袋を裏がえすようにして吐き出した毒なんだ(-_-;)!
「千人の命ぃ……上等じゃないですか! それなら、わたしは、このイザナギはぁ! 日に1500の新たな命を生むことにします1500の命をぉぉぉぉぉぉ!」
「1500の命ぃ……1500の命ぃぃぃぃぃ………だとぉぉぉ………」
イザナミ……イザナミさんの言葉には力が無かった。
最後には引きずるような吐息になって、そして千曳の大岩の向こうに、その気配といっしょに消えて行ってしまった。
「最後に名を与えます、これよりはイザナミ、あなたはぁ、あなたはぁ黄泉大神です!!」
千曳の大岩の奥の奥、もう一つのなにかが閉じる音がしたような気がした。
ミーンミンミンミーン ミーンミンミンミーン ミーンミンミンミーン
気が付くと、黄泉平坂をワッサカと覆う森の至る所から蝉の鳴き声。
イザナギ:「みなさん、どうもありがとうございました……イザナミを救うことはできませんでした。それどころかとんでもない鬼にしてしまいました。こちらにも、タングニョーストさん、桃太郎くん、二人の尊い犠牲を出してしまいました。申し訳ありません、ほんとうに不甲斐ない、ダメな神さまで、自分でも嫌になります」
タングリス:「大丈夫ですよイザナギさん、少しだけですが骨と皮を回収できました。いずれまた、きっと回復します。その日まで、タングニョーストはずっと、このタングリスが背負っていきますから」
ヨネコ:「桃太郎の伝説は山陰の方でも伝えていくし」
雪舟ねずみ:「今度のことは、拙いながらも、この雪舟ねずみがイラストを描いて絵本にします」
ケイト:「そうだね、アニメにもなるだろうしサブスクで実写になるかもしれしれないよ」
与一:「わたしは、国に帰って領地を守ります。母も年ですし」
イザナギ:「では、天の斑駒を連れて行ってください」
与一:「天の斑駒は神馬です、わたしにはとても……」
イザナギ:「黄泉の国はあまり使ってやることもできませんでした。元々は高天原の農耕馬、田畑で使ってやるのがいいでしょうから」
与一:「はい、それでは遠慮なく」
イザナギ:「ヒルデさん、タングリスさん、テルさん、ケイトさん……あなた方にもお世話になりましたが、異世界の方々です。どう言葉をかけていいか分からないのですが、とりあえずはオノコロジマにまで戻ってご苦労ご協力に報いたいと思います、ごいっしょしてはくださいませんか?」
雪舟ねずみ:「岡山までは、うちの営業区です、遅らせていただきますよ」
ケイト:「あ、それは嬉しいなあ!」
テル:「お言葉は嬉しいのですが、どうやら、ここでお別れのようです」
手足の先が消え始めている、どうやら、元の世界か、どこぞの異世界に飛ばされる時がきたみたいだ。
ヒルデ:「あ、わたしも……」
タングリス:「自分も……」
ケイト:「あたしも……」
ヒルデの他にもタングリスもケイトも消え始めている。
イザナギ:「そうですね、そのようですね……どうか、みなさんの世界も、明るく安らかでありますように、ほんとうにありがとうございました」
テル:「こちらこそ、いままで、みんなあり……が……と……」
最後の言葉を言い終る前に、視界は白く渦を巻いて、心の準備をする間もなく、みんな遠く滲んで消えていってしまった。
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
229『勝利、そして心の準備をする間もなく 』テル
「ここを開けろぉ! ここを開けろぉ! 開けぬかここをぉ!」
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!
イザナミに加えて無数の鬼や醜女たちが頭突きや体当たりして、内側から千曳の大岩を動かそう、絶ち割ろうとする。
その度に、大岩はビリビリと震え、イザナギ組というか『黄泉の国を目指す神々の会』の仲間は全員で大岩を押しとどめた。
ウーーーーーン!!
力は拮抗して、もう少し頑張れば完全に密封できるかと思った。
死ぬ気で力を合わせれば、どんなことだってできるんだ!
ウーーーーーン!!!
勝利を確信した時、岩の内側から声がした。
「ええい、憎いぃ憎いぃ、憎いぞイザナギぃ……かくなる上は、これからは、日に千の命を奪って黄泉の国にさらってやるからなあぁぁぁぁぁぁぁ!」
日に千人の命を奪う……千とは単なる数の問題じゃない。イザナギさんへの怨みの深さを数で表したんだ、この怨み、千尋の海よりも千尋の谷よりも深いという怨みの多寡でしか表せない心の内を胃袋を裏がえすようにして吐き出した毒なんだ(-_-;)!
「千人の命ぃ……上等じゃないですか! それなら、わたしは、このイザナギはぁ! 日に1500の新たな命を生むことにします1500の命をぉぉぉぉぉぉ!」
「1500の命ぃ……1500の命ぃぃぃぃぃ………だとぉぉぉ………」
イザナミ……イザナミさんの言葉には力が無かった。
最後には引きずるような吐息になって、そして千曳の大岩の向こうに、その気配といっしょに消えて行ってしまった。
「最後に名を与えます、これよりはイザナミ、あなたはぁ、あなたはぁ黄泉大神です!!」
千曳の大岩の奥の奥、もう一つのなにかが閉じる音がしたような気がした。
ミーンミンミンミーン ミーンミンミンミーン ミーンミンミンミーン
気が付くと、黄泉平坂をワッサカと覆う森の至る所から蝉の鳴き声。
イザナギ:「みなさん、どうもありがとうございました……イザナミを救うことはできませんでした。それどころかとんでもない鬼にしてしまいました。こちらにも、タングニョーストさん、桃太郎くん、二人の尊い犠牲を出してしまいました。申し訳ありません、ほんとうに不甲斐ない、ダメな神さまで、自分でも嫌になります」
タングリス:「大丈夫ですよイザナギさん、少しだけですが骨と皮を回収できました。いずれまた、きっと回復します。その日まで、タングニョーストはずっと、このタングリスが背負っていきますから」
ヨネコ:「桃太郎の伝説は山陰の方でも伝えていくし」
雪舟ねずみ:「今度のことは、拙いながらも、この雪舟ねずみがイラストを描いて絵本にします」
ケイト:「そうだね、アニメにもなるだろうしサブスクで実写になるかもしれしれないよ」
与一:「わたしは、国に帰って領地を守ります。母も年ですし」
イザナギ:「では、天の斑駒を連れて行ってください」
与一:「天の斑駒は神馬です、わたしにはとても……」
イザナギ:「黄泉の国はあまり使ってやることもできませんでした。元々は高天原の農耕馬、田畑で使ってやるのがいいでしょうから」
与一:「はい、それでは遠慮なく」
イザナギ:「ヒルデさん、タングリスさん、テルさん、ケイトさん……あなた方にもお世話になりましたが、異世界の方々です。どう言葉をかけていいか分からないのですが、とりあえずはオノコロジマにまで戻ってご苦労ご協力に報いたいと思います、ごいっしょしてはくださいませんか?」
雪舟ねずみ:「岡山までは、うちの営業区です、遅らせていただきますよ」
ケイト:「あ、それは嬉しいなあ!」
テル:「お言葉は嬉しいのですが、どうやら、ここでお別れのようです」
手足の先が消え始めている、どうやら、元の世界か、どこぞの異世界に飛ばされる時がきたみたいだ。
ヒルデ:「あ、わたしも……」
タングリス:「自分も……」
ケイト:「あたしも……」
ヒルデの他にもタングリスもケイトも消え始めている。
イザナギ:「そうですね、そのようですね……どうか、みなさんの世界も、明るく安らかでありますように、ほんとうにありがとうございました」
テル:「こちらこそ、いままで、みんなあり……が……と……」
最後の言葉を言い終る前に、視界は白く渦を巻いて、心の準備をする間もなく、みんな遠く滲んで消えていってしまった。
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
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