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002『二年ぶり!』
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せやさかい・002『二年ぶり!』
わたしは意気込んでた!
なんちゅうても、今日からはここの家の子になる。
むろん戸籍はちゃうけど、おなじ酒井の苗字で暮らしていくんや。いとこのテイ兄ちゃんもコトハちゃんとも兄妹姉妹同然で暮らしていくんや。自慢の笑顔で「よろしく!」とかまさならあかん。
玄関わきの鏡をチラ見して笑顔のチェック。
過不足のない笑顔、と、思たら、目尻に緊張感。頬っぺたも微妙に強張ってるし。
目をゴシゴシ、頬っぺたをペシペシ。
「ただいま~」
実家だけあって、お母さんは気楽にズンズン入っていく。
「ちょ、待っ……」
急いで靴を脱いで、上がり框に足を掛け、あかんあかん、靴! 行儀よう靴先を外に向けて揃えて、お母さんの靴よりも壁際に置く。「よろしく!」とかますにしても、この辺のお行儀と遠慮は気にかけとかならあかん。
――いやあ、歌ちゃん、ごめんなさい、お迎えにも行かなくってえ!――
――いえいえ、そんな――
奥の方では、おばちゃんとお母さんのご挨拶が始まってる。後れを取ったらあかん!
ワ!!
気がせいてしもて、こけてしもた!
わたしの先祖はお猿さんいうことを思い知らされる。ジワ~っと尾てい骨から痛みが上ってきてジンワリと涙が滲む。
ササッと尾てい骨を労わって、廊下の先のリビングへ。
「なんか音がしたけど、さくらちゃん大丈夫?」
「アハハ、だいじょうぶだいじょうぶ」
挨拶もぶっとんで、ヘラヘラと照れ笑い。緊張はほぐれたけど、不細工なことこの上ない。
「今日は、おばちゃん一人なのよね」
すまなさそうに、お茶を淹れるおばちゃん。
「専念寺さんのご住職が入院されて、旦那は(伯父さんのこと)手助けに出てるし、お父さん(お祖父ちゃん)と諦一は檀家参りに出ちゃって、詩(ことは)は部活だし、ごめんなさいね」
「いいですいいです、なんかお手伝いしましょか?」
「いいわよ、ゆっくりして。荷物とかは、それぞれ二人の部屋に運んであるから、あとで見てちょうだい」
「すいません、お姉さんの手を煩わせて」
「いえいえ、男たちがやってくれたから。三人とも、歌ちゃんが帰って来るんで、ちょっとハイなんですよ」
「ああ、アハハ、期待されたら辛いなあ~」
「さくらちゃん、部屋先に見とく? 足りないものがあったら、買って来るって旦那言ってたから、そうしよ、帰ってくる前に電話したらホームセンター寄ってきてくれるから。さ、いこ!」
サザエさんのように思い立ったらスグの人なので、お気持ちに応えて付いていく。
「ほら、こっちがさくらちゃんの部屋」
「え、こっち?」
おばちゃんは、予想していた相部屋するはずのコトハちゃんの部屋ではなく、向かいの部屋を開けた。
「使ってもらった方がいいの、閉め切ってると陰気臭くなるでしょ」
そこは、二階の客間ということになっていたはずや。
「二階の客間って客間につかうことってないしね、コトハもさくらちゃんも年頃だしね」
コトハちゃんと同室と言うのは、かすかな楽しみやったので、ちょっと寂しいんやけど、おばちゃんの好意なんや「あ、ありがとう、とっても嬉しい!」。よそ行きの喜び方をしてしまう。
お母さんは、むかしの自分の部屋を使うらしい。
足りないものなんか思いつかなかったんで、リビングに戻ってお茶にする。おばちゃんが途中までやっていたお茶の用意はお母さんがやって、おばちゃんは恐縮している。まだ、ちょっとよそ行きやけど、大人同士、なんとかやっていくやろう。
「おお、さくら、来たかあ!」
玄関の靴で分かったんやろう、お祖父ちゃんは、ドシドシとリビングに入ってくると、いきなりハグしたかと思うと、頬っぺたを合わせてスリスリする。
「あ、ちょ、あ……」
嫌やとも言えず、為されるままになっておく。お爺ちゃんにとっては、いつまでも可愛いくて可哀そうな外孫のまま。
やっと解放されて、ソファーに座ると尾てい骨に響く。
「なんや、涙ぐんでからに……そうかそうか、さくらも中学生や、困ったことがあったら、なんでもお祖父ちゃんに言うんやで」
今度は、髪の毛をワシャワシャされる。
お祖父ちゃんが衣を脱いで寛いだころに、伯父さんとテイ兄ちゃんが帰って来る。
テイ兄ちゃん見て、ビックリした。衣姿のテイ兄ちゃんは、二年前のグータラな大学生と違て、立派な坊主になってた。
「お、おう、さくら、今日からやってんな」
ドギマギするとこは昔のまんま。
そんで、もっとビックリしたんは、部活から帰って来たコトハちゃんを見た時やった……。
わたしは意気込んでた!
なんちゅうても、今日からはここの家の子になる。
むろん戸籍はちゃうけど、おなじ酒井の苗字で暮らしていくんや。いとこのテイ兄ちゃんもコトハちゃんとも兄妹姉妹同然で暮らしていくんや。自慢の笑顔で「よろしく!」とかまさならあかん。
玄関わきの鏡をチラ見して笑顔のチェック。
過不足のない笑顔、と、思たら、目尻に緊張感。頬っぺたも微妙に強張ってるし。
目をゴシゴシ、頬っぺたをペシペシ。
「ただいま~」
実家だけあって、お母さんは気楽にズンズン入っていく。
「ちょ、待っ……」
急いで靴を脱いで、上がり框に足を掛け、あかんあかん、靴! 行儀よう靴先を外に向けて揃えて、お母さんの靴よりも壁際に置く。「よろしく!」とかますにしても、この辺のお行儀と遠慮は気にかけとかならあかん。
――いやあ、歌ちゃん、ごめんなさい、お迎えにも行かなくってえ!――
――いえいえ、そんな――
奥の方では、おばちゃんとお母さんのご挨拶が始まってる。後れを取ったらあかん!
ワ!!
気がせいてしもて、こけてしもた!
わたしの先祖はお猿さんいうことを思い知らされる。ジワ~っと尾てい骨から痛みが上ってきてジンワリと涙が滲む。
ササッと尾てい骨を労わって、廊下の先のリビングへ。
「なんか音がしたけど、さくらちゃん大丈夫?」
「アハハ、だいじょうぶだいじょうぶ」
挨拶もぶっとんで、ヘラヘラと照れ笑い。緊張はほぐれたけど、不細工なことこの上ない。
「今日は、おばちゃん一人なのよね」
すまなさそうに、お茶を淹れるおばちゃん。
「専念寺さんのご住職が入院されて、旦那は(伯父さんのこと)手助けに出てるし、お父さん(お祖父ちゃん)と諦一は檀家参りに出ちゃって、詩(ことは)は部活だし、ごめんなさいね」
「いいですいいです、なんかお手伝いしましょか?」
「いいわよ、ゆっくりして。荷物とかは、それぞれ二人の部屋に運んであるから、あとで見てちょうだい」
「すいません、お姉さんの手を煩わせて」
「いえいえ、男たちがやってくれたから。三人とも、歌ちゃんが帰って来るんで、ちょっとハイなんですよ」
「ああ、アハハ、期待されたら辛いなあ~」
「さくらちゃん、部屋先に見とく? 足りないものがあったら、買って来るって旦那言ってたから、そうしよ、帰ってくる前に電話したらホームセンター寄ってきてくれるから。さ、いこ!」
サザエさんのように思い立ったらスグの人なので、お気持ちに応えて付いていく。
「ほら、こっちがさくらちゃんの部屋」
「え、こっち?」
おばちゃんは、予想していた相部屋するはずのコトハちゃんの部屋ではなく、向かいの部屋を開けた。
「使ってもらった方がいいの、閉め切ってると陰気臭くなるでしょ」
そこは、二階の客間ということになっていたはずや。
「二階の客間って客間につかうことってないしね、コトハもさくらちゃんも年頃だしね」
コトハちゃんと同室と言うのは、かすかな楽しみやったので、ちょっと寂しいんやけど、おばちゃんの好意なんや「あ、ありがとう、とっても嬉しい!」。よそ行きの喜び方をしてしまう。
お母さんは、むかしの自分の部屋を使うらしい。
足りないものなんか思いつかなかったんで、リビングに戻ってお茶にする。おばちゃんが途中までやっていたお茶の用意はお母さんがやって、おばちゃんは恐縮している。まだ、ちょっとよそ行きやけど、大人同士、なんとかやっていくやろう。
「おお、さくら、来たかあ!」
玄関の靴で分かったんやろう、お祖父ちゃんは、ドシドシとリビングに入ってくると、いきなりハグしたかと思うと、頬っぺたを合わせてスリスリする。
「あ、ちょ、あ……」
嫌やとも言えず、為されるままになっておく。お爺ちゃんにとっては、いつまでも可愛いくて可哀そうな外孫のまま。
やっと解放されて、ソファーに座ると尾てい骨に響く。
「なんや、涙ぐんでからに……そうかそうか、さくらも中学生や、困ったことがあったら、なんでもお祖父ちゃんに言うんやで」
今度は、髪の毛をワシャワシャされる。
お祖父ちゃんが衣を脱いで寛いだころに、伯父さんとテイ兄ちゃんが帰って来る。
テイ兄ちゃん見て、ビックリした。衣姿のテイ兄ちゃんは、二年前のグータラな大学生と違て、立派な坊主になってた。
「お、おう、さくら、今日からやってんな」
ドギマギするとこは昔のまんま。
そんで、もっとビックリしたんは、部活から帰って来たコトハちゃんを見た時やった……。
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