せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
2 / 432

002『二年ぶり!』

しおりを挟む
せやさかい・002『二年ぶり!』 

 

  わたしは意気込んでた!

 
 なんちゅうても、今日からはここの家の子になる。

 むろん戸籍はちゃうけど、おなじ酒井の苗字で暮らしていくんや。いとこのテイ兄ちゃんもコトハちゃんとも兄妹姉妹同然で暮らしていくんや。自慢の笑顔で「よろしく!」とかまさならあかん。

 玄関わきの鏡をチラ見して笑顔のチェック。

 過不足のない笑顔、と、思たら、目尻に緊張感。頬っぺたも微妙に強張ってるし。

 目をゴシゴシ、頬っぺたをペシペシ。

「ただいま~」

 実家だけあって、お母さんは気楽にズンズン入っていく。

「ちょ、待っ……」

 急いで靴を脱いで、上がり框に足を掛け、あかんあかん、靴! 行儀よう靴先を外に向けて揃えて、お母さんの靴よりも壁際に置く。「よろしく!」とかますにしても、この辺のお行儀と遠慮は気にかけとかならあかん。

――いやあ、歌ちゃん、ごめんなさい、お迎えにも行かなくってえ!――
――いえいえ、そんな――

 奥の方では、おばちゃんとお母さんのご挨拶が始まってる。後れを取ったらあかん!

 ワ!!

 気がせいてしもて、こけてしもた!

 わたしの先祖はお猿さんいうことを思い知らされる。ジワ~っと尾てい骨から痛みが上ってきてジンワリと涙が滲む。

 ササッと尾てい骨を労わって、廊下の先のリビングへ。

「なんか音がしたけど、さくらちゃん大丈夫?」

「アハハ、だいじょうぶだいじょうぶ」

 挨拶もぶっとんで、ヘラヘラと照れ笑い。緊張はほぐれたけど、不細工なことこの上ない。

「今日は、おばちゃん一人なのよね」

 すまなさそうに、お茶を淹れるおばちゃん。

「専念寺さんのご住職が入院されて、旦那は(伯父さんのこと)手助けに出てるし、お父さん(お祖父ちゃん)と諦一は檀家参りに出ちゃって、詩(ことは)は部活だし、ごめんなさいね」

「いいですいいです、なんかお手伝いしましょか?」

「いいわよ、ゆっくりして。荷物とかは、それぞれ二人の部屋に運んであるから、あとで見てちょうだい」

「すいません、お姉さんの手を煩わせて」

「いえいえ、男たちがやってくれたから。三人とも、歌ちゃんが帰って来るんで、ちょっとハイなんですよ」

「ああ、アハハ、期待されたら辛いなあ~」

「さくらちゃん、部屋先に見とく? 足りないものがあったら、買って来るって旦那言ってたから、そうしよ、帰ってくる前に電話したらホームセンター寄ってきてくれるから。さ、いこ!」

 サザエさんのように思い立ったらスグの人なので、お気持ちに応えて付いていく。

「ほら、こっちがさくらちゃんの部屋」

「え、こっち?」

 おばちゃんは、予想していた相部屋するはずのコトハちゃんの部屋ではなく、向かいの部屋を開けた。

「使ってもらった方がいいの、閉め切ってると陰気臭くなるでしょ」

 そこは、二階の客間ということになっていたはずや。

「二階の客間って客間につかうことってないしね、コトハもさくらちゃんも年頃だしね」

 コトハちゃんと同室と言うのは、かすかな楽しみやったので、ちょっと寂しいんやけど、おばちゃんの好意なんや「あ、ありがとう、とっても嬉しい!」。よそ行きの喜び方をしてしまう。

 お母さんは、むかしの自分の部屋を使うらしい。

 
 足りないものなんか思いつかなかったんで、リビングに戻ってお茶にする。おばちゃんが途中までやっていたお茶の用意はお母さんがやって、おばちゃんは恐縮している。まだ、ちょっとよそ行きやけど、大人同士、なんとかやっていくやろう。

 
「おお、さくら、来たかあ!」


 玄関の靴で分かったんやろう、お祖父ちゃんは、ドシドシとリビングに入ってくると、いきなりハグしたかと思うと、頬っぺたを合わせてスリスリする。

「あ、ちょ、あ……」

 嫌やとも言えず、為されるままになっておく。お爺ちゃんにとっては、いつまでも可愛いくて可哀そうな外孫のまま。

 やっと解放されて、ソファーに座ると尾てい骨に響く。

「なんや、涙ぐんでからに……そうかそうか、さくらも中学生や、困ったことがあったら、なんでもお祖父ちゃんに言うんやで」

 今度は、髪の毛をワシャワシャされる。

 お祖父ちゃんが衣を脱いで寛いだころに、伯父さんとテイ兄ちゃんが帰って来る。

 テイ兄ちゃん見て、ビックリした。衣姿のテイ兄ちゃんは、二年前のグータラな大学生と違て、立派な坊主になってた。

「お、おう、さくら、今日からやってんな」

 ドギマギするとこは昔のまんま。

 
 そんで、もっとビックリしたんは、部活から帰って来たコトハちゃんを見た時やった……。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

それぞれの道

真田直樹
現代文学
主な登場人物 藤川優斗(ふじかわ ゆうと) 高校野球部ショート。堅実な守備と冷静な判断力が武器。チームの精神的支柱。 丹羽雅人(にわ まさと) 野球部エースピッチャー。豪速球と強気の性格。優斗とは中学からの親友。 尾上紀子(おのえ のりこ) 吹奏楽部トランペット担当。県大会常連校の中心メンバー。優斗に密かな想い。 富田さゆり(とみた さゆり) 演劇部。表現力が高く、舞台では別人のようになる。クラスのムードメーカー。

親愛なる後輩くん

さとう涼
恋愛
「神崎部長は、僕と結城さんがつき合っているのを知りながら彼女に手を出したんですよ」 雨宮一紗(33歳)。離婚して3年。 同じ会社に勤める元夫・神崎敦朗と復縁したくて、ある日食事に誘ったら、神崎から恋人がいると知らされる。相手は20代の部下・結城史奈だという。 さらに神崎のもうひとりの部下である蓮見閑《しずか》から、彼女(結城)を神崎に略奪されたと聞かされてしまい、大きなショックを受ける……。

処理中です...