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026『カマイタチ・3』
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せやさかい
026『カマイタチ・3』
ほんまにカマイタチがおったらええと思う。
カマイタチが犯人やったら、誰も傷つかへん。
そやけどカマイタチやない。クラスの誰かが切ったんや。
めっちゃムナクソ悪いけど、あたしか田中さんのどっちかに陰湿な悪意持ってカッターナイフで切ったんや。
学校は調査に入ったらしいけど、生徒にはなんにも言うてくれへん。
菅ちゃんは「ほかの者には言わんように」と念を押した。「なんでですか?」と聞くと「噂が独り歩きするとまずいから」と言われた。
そやけど、人の口に戸はたてられへん。二日目の昼には、あちこちで噂が立った。
――制服切られたのは田中さんらしいで――犯人はクラスの女子?――着替えは二組と合同やから、二組かも!――変質者かも――むかし、変質者が侵入してブルマ盗っていったて!――ブルマて、いつの話や――アハハハ――
学校から説明もないから、みんな週刊誌的な噂で喜んでる。
それに、なんちゅうても田中さん、あれから学校に来んようになってしもたし。あたしはいちおう平気な顔して登校してるんで。三日目の今日は、被害者は田中さんで確定したも同然。
「田中さん、来てたよ」
留美ちゃんがこそっと教えてくれたんは、昼休みが半分終わったとこ。校長室に菅ちゃんといっしょに入っていくとこを見かけたらしい。
「制服は?」
「分からないけど……脇の所を気にしてる感じ……たぶん補修とかしたんで気になってるんじゃ……」
あの切り口、よっぽど上手く補修しても痕は残るやろなあ……制服て案外高いし、サイズのが無かったら作る時間もかかるやろし、家の経済状況によっては、おいそれと新品は買うてもらわれへんやろし……なによりも入学三か月で、こんな目に遭うたらめっちゃくちゃショックやろし……。
「制服なんて、予備がいくらでもあるわよ」
ハッキリ言うのは頼子さん。
三年にも噂は広がっているようで、部室に着くと一番に聞かれた。
「卒業するときに、制服が不要なら寄付してくれって言われるの。いろんな事情で制服が買えないとか、修復できないほど痛んじゃったとか、無くなったときとかの為にね。まだ一年だから中古はやだろうけで、傷跡が生々しいのを着てるよりも、うんとマシでしょ……なにやってんだか、学校は……」
そうボヤキながら、頼子さんは窓辺に寄った。部室である図書分室からは、中庭を隔てて校長室やら相談室がある本館の一階がよく見える。
「あ、あの子じゃない?」
「はい、田中さんです」
田中さんは、中庭を通って部室のある旧館の方、それも端っこの外階段の方に向かっている。
「ちょっと、付いて来て」
あたしも留美ちゃんも頼子さんの後を付いていく。
階段を上がって四階へ、頼子さんはポケットから鍵を出すと、四階どん詰まりの外階段に出るドアのキーを開けた。
キーを開けたけど、ドアは開けないで、ノブを握って様子をうかがう。
スタスタスタ
「屋上には通じてないから、ここで停まる……」
頼子さんの予想通り、田中さんは外階段の踊り場で停まった。
「今だ」
小さく言うと、頼子さんはドアを開け放って田中さんにタックルした!
ドアが硬かったので、コンマ二秒ほど遅れ、タックルした時には頼子さんの上半身は手すりから乗り出していた。
「下に回って!」
「はい!」
下の踊り場にまわって、ぶら下がっている田中さんの脚と腰をホールドする。以前観た中二病のアニメにこんなシーンがあったことを思い出し、なんとか田中さんを確保できた。
上半身乗り出してしまっている頼子さんは留美ちゃんがサポートして無事だった……。
026『カマイタチ・3』
ほんまにカマイタチがおったらええと思う。
カマイタチが犯人やったら、誰も傷つかへん。
そやけどカマイタチやない。クラスの誰かが切ったんや。
めっちゃムナクソ悪いけど、あたしか田中さんのどっちかに陰湿な悪意持ってカッターナイフで切ったんや。
学校は調査に入ったらしいけど、生徒にはなんにも言うてくれへん。
菅ちゃんは「ほかの者には言わんように」と念を押した。「なんでですか?」と聞くと「噂が独り歩きするとまずいから」と言われた。
そやけど、人の口に戸はたてられへん。二日目の昼には、あちこちで噂が立った。
――制服切られたのは田中さんらしいで――犯人はクラスの女子?――着替えは二組と合同やから、二組かも!――変質者かも――むかし、変質者が侵入してブルマ盗っていったて!――ブルマて、いつの話や――アハハハ――
学校から説明もないから、みんな週刊誌的な噂で喜んでる。
それに、なんちゅうても田中さん、あれから学校に来んようになってしもたし。あたしはいちおう平気な顔して登校してるんで。三日目の今日は、被害者は田中さんで確定したも同然。
「田中さん、来てたよ」
留美ちゃんがこそっと教えてくれたんは、昼休みが半分終わったとこ。校長室に菅ちゃんといっしょに入っていくとこを見かけたらしい。
「制服は?」
「分からないけど……脇の所を気にしてる感じ……たぶん補修とかしたんで気になってるんじゃ……」
あの切り口、よっぽど上手く補修しても痕は残るやろなあ……制服て案外高いし、サイズのが無かったら作る時間もかかるやろし、家の経済状況によっては、おいそれと新品は買うてもらわれへんやろし……なによりも入学三か月で、こんな目に遭うたらめっちゃくちゃショックやろし……。
「制服なんて、予備がいくらでもあるわよ」
ハッキリ言うのは頼子さん。
三年にも噂は広がっているようで、部室に着くと一番に聞かれた。
「卒業するときに、制服が不要なら寄付してくれって言われるの。いろんな事情で制服が買えないとか、修復できないほど痛んじゃったとか、無くなったときとかの為にね。まだ一年だから中古はやだろうけで、傷跡が生々しいのを着てるよりも、うんとマシでしょ……なにやってんだか、学校は……」
そうボヤキながら、頼子さんは窓辺に寄った。部室である図書分室からは、中庭を隔てて校長室やら相談室がある本館の一階がよく見える。
「あ、あの子じゃない?」
「はい、田中さんです」
田中さんは、中庭を通って部室のある旧館の方、それも端っこの外階段の方に向かっている。
「ちょっと、付いて来て」
あたしも留美ちゃんも頼子さんの後を付いていく。
階段を上がって四階へ、頼子さんはポケットから鍵を出すと、四階どん詰まりの外階段に出るドアのキーを開けた。
キーを開けたけど、ドアは開けないで、ノブを握って様子をうかがう。
スタスタスタ
「屋上には通じてないから、ここで停まる……」
頼子さんの予想通り、田中さんは外階段の踊り場で停まった。
「今だ」
小さく言うと、頼子さんはドアを開け放って田中さんにタックルした!
ドアが硬かったので、コンマ二秒ほど遅れ、タックルした時には頼子さんの上半身は手すりから乗り出していた。
「下に回って!」
「はい!」
下の踊り場にまわって、ぶら下がっている田中さんの脚と腰をホールドする。以前観た中二病のアニメにこんなシーンがあったことを思い出し、なんとか田中さんを確保できた。
上半身乗り出してしまっている頼子さんは留美ちゃんがサポートして無事だった……。
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