せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
36 / 432

036『佐伯さんのお婆ちゃん・2』 

しおりを挟む

せやさかい

036『佐伯さんのお婆ちゃん・2』 

 

 救急車が空で帰ったんは、もうすでにお婆ちゃんが亡くなってたから。

 てい兄ちゃんによると、心肺停止だけやったら搬送する——その後、病院で死亡が確認されました——ニュースで、よう言うてるあれ。死後硬直が始まってたり、死亡の様子が顕著な場合、救急車の仕事は、そこでおしまいになる。そのあとは警察が来て調べる。場合によっては自然死に見せかけた殺人やったりするさかいに。

 その後、パトカーとワンボックスの警察車両が来た。

 お巡りさんと鑑識の人が家に入って、十五分くらいで出てきた。お婆ちゃんはグレーの袋(シュラフと言うらしい)に入れられてワンボックスに積み込まれて行ってしもた。

 振り返ると、家のみんなが出てきて手を合わせてた。ご近所の人らも、それに倣って手を合わせて見送った。むろんわたしも。

 大阪市内におったときも似たようなことがあったけど、手を合わせる人はいてへんかったように思う。やっぱり、お寺の人間が手を合わせてると、自然にそれに倣える。お寺の存在意義が、ちょびっとだけ分かったような気ぃがした。

「晩ごはん食べてしもてちょうだい」

 伯母ちゃんのひとことで、ぞろぞろと食卓に戻る。

 すき焼きの続きやねんけど、ちょっとお肉は食べにくい。

「佐伯のおばちゃんには、よう怒られたなあ」

「ぼくらには優しいお婆ちゃんやったで」

 おっちゃんとてい兄ちゃんが思い出を肴にしてる。お祖父ちゃんが加わって、お婆ちゃんが『法子』いう名前で、セーラー服が似合う小町娘やったという。

「『ぼんさんやなかったら、お嫁にいったげたのに』て言いよってなあ、兄貴が戦死してなかったら『うん』て言うてたなあ」

「いやだ、佐伯のお婆ちゃんと、いい仲やったの!?」

「おばちゃん、よう振ってくれたなあ、お父さんがおばちゃんといっしょになってたら、ここにおるもんは全員おらへんとこや」

「いや、わたしは生まれてたわよ。嫁に来ただけやから」

「いや、俺がおれへんかったら、嫁にきてないやろが」

「あ、そうか」

 お婆ちゃんが亡くなったばっかりで不謹慎な気がせんでもなかったけど、こうやって話題にしたげんのもありかなあと思う。

 後片付けをしてると、お母さんが男の人二人連れて戻ってきた。一人は、お祖父ちゃんが話してた人、もう一人はダークスーツがように合うおっさん。

「佐伯さんの息子さんと、葬儀屋さんよ」

 詩(ことは)ちゃんが教えてくれる。三人は檀家さんらと寄り合いする部屋に入って、なにやら話を始める。

「花ちゃん、お茶持ってく? 偵察できるわよ」

 詩ちゃんにそそのかされてお茶を運ぶ。

「失礼します」

「ああ、歌ちゃんの娘さん?」

「さくらちゃん、佐伯さんの息子さんと籠国さんや」

「酒井さくらです、あ、この度は……」

 ついさっき親が亡くなったとは思えんくらいに、息子さんは落ち着いてた。わたしが一番しんみりしてるんでオタオタする。

 お通夜とお葬式の打ち合わせらしいねんけど、町内のお祭りの相談みたいに気楽にやってる。なんか、かえって畏まってるわたしに気ぃつこてもろてるみたいで、よけいにオタオタ。

 なんや、若いころのお母ちゃんの話が出たみたいやったけど、なんにも覚えてへんです。

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

•酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 
•酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
•酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
•酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主
•酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
•酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
•榊原留美        さくらの同級生
•夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長
•瀬田と田中(男)       クラスメート
•田中さん(女)        クラスメート フルネームは田中真子
•菅井先生        担任
•春日先生        学年主任
•米屋のお婆ちゃん
•佐伯さんのお祖母ちゃん
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

処理中です...