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064『お見舞い』
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せやさかい
064『お見舞い』
大和川を渡ることはめったにない。
中学一年生の生活圏は、基本、家と学校の往復。
たまに遊びに行ったり買い物に行ったりも、堺東とかイオンとかで済んでしまう。
だいいち、大和川を超えるには電車に乗らならあかんでしょ。電車に乗るのは往復の運賃がいるわけで、堺東から難波やと520円。往復で1000円超えるし、行ったらお茶したり買い物したりで3000円くらいは消えてしまう。
そうそう日常的に川を渡るわけにはいかへん。堺市内やったら、自転車で行けるもんね。
四月に越してきてから、大和川を渡ったんは二回。二回ともコトハちゃんの高校に行った時。文化祭と部活の見学。
今日は頼子さんと大和川を渡ってる。
頼子さんは花束を持って、あたしはA4の袋にあれこれを入れたのを膝の上に置いて。
実はお見舞い。
実はね、留美ちゃんが入院してしもた。
留美ちゃんは、小さいころから持病があって、それが夏バテのために出てきたということらしい。
熱中症で倒れたんが引き金やと思うねんけど、菅ちゃん(担任)は言わへん。
「部活の海外旅行が応えたんかもしれへんなあ」
これにはムカついた。
ムカついたけど、正面から「それはちゃいます!」とは、言われへん。
自分が根性なしやいうこともあるねんけど、菅ちゃんは絶対に認めへん。わたしの抗議で、菅ちゃんが醜く怒ったりうろたえる姿も見たないし。たとえ、こっちが正しくっても、人が醜くなるのは見たくない。だいいち、抗議するんやったら、留美ちゃん本人か、留美ちゃんのお父さん、お母さんやろしね。
けど、もし、留美ちゃんに不満があるようやったら、友だちとして声をあげよう。電車のカタンコトンのリズムは、そんなことをわたしに思い起こさせた。
「ありがとうございます」
病室の留美ちゃんは、明るくこたえてくれた。
「休みの日なのに、わざわざ、ありがとうございます。頼子さん、桜ちゃん」
「ううん、お見舞いついでに、難波とかもうろつきたかったし、気にしないで」
頼子さんは、ごく自然。ついでに寄りたい難波のあれこれを話しながら、花瓶にお花を生ける姿はドラマの登場人物みたい。
わたしも、なにか言おうと思うんやけど、留美ちゃんの腕に刺してある点滴のチューブを見ただけで言葉が無い。明るくしてるけど、顔色悪いし、目に力も無いし……。
「これでさ、ゲームノベルとか読んでみようかと思って。これが、留美ちゃんのPSP」
「わあ、見るの初めてです」
「ジャンクなんだけど、動画でメンテ調べたら、新品同然に使えるようになってさ。ま、疲れが出ない程度に触ってみて」
「はい。PSPって、息の長いゲーム機だったから、ソフト多いんですよね……うわあ、3000! シリーズの最新型じゃないですか!」
「ハハハ、最新っても、十年も前に生産中止になってるんだけどね」
PSPの使い方で盛り上がる先輩と留美ちゃん。さっそく、スマホでPSPのソフトを検索して盛り上がる。
「まあ、疲れが出ないようにね。復帰したら三人でいっぱい盛り上がろう。ね、さくら」
頼子さんが振ってくれて、わたしも話題に加わる。留美ちゃんも、けっこうなゲーマーで、気が付けば一時間も喋ってしまった。
留美ちゃんからは、菅ちゃんや学校への不満やらは出てこーへんかった。
本人に不満がないんやったら、わたしの出る幕やない。
少し、ホッとした気持ちでお見舞いを終えて、病院を出たのでありました。
064『お見舞い』
大和川を渡ることはめったにない。
中学一年生の生活圏は、基本、家と学校の往復。
たまに遊びに行ったり買い物に行ったりも、堺東とかイオンとかで済んでしまう。
だいいち、大和川を超えるには電車に乗らならあかんでしょ。電車に乗るのは往復の運賃がいるわけで、堺東から難波やと520円。往復で1000円超えるし、行ったらお茶したり買い物したりで3000円くらいは消えてしまう。
そうそう日常的に川を渡るわけにはいかへん。堺市内やったら、自転車で行けるもんね。
四月に越してきてから、大和川を渡ったんは二回。二回ともコトハちゃんの高校に行った時。文化祭と部活の見学。
今日は頼子さんと大和川を渡ってる。
頼子さんは花束を持って、あたしはA4の袋にあれこれを入れたのを膝の上に置いて。
実はお見舞い。
実はね、留美ちゃんが入院してしもた。
留美ちゃんは、小さいころから持病があって、それが夏バテのために出てきたということらしい。
熱中症で倒れたんが引き金やと思うねんけど、菅ちゃん(担任)は言わへん。
「部活の海外旅行が応えたんかもしれへんなあ」
これにはムカついた。
ムカついたけど、正面から「それはちゃいます!」とは、言われへん。
自分が根性なしやいうこともあるねんけど、菅ちゃんは絶対に認めへん。わたしの抗議で、菅ちゃんが醜く怒ったりうろたえる姿も見たないし。たとえ、こっちが正しくっても、人が醜くなるのは見たくない。だいいち、抗議するんやったら、留美ちゃん本人か、留美ちゃんのお父さん、お母さんやろしね。
けど、もし、留美ちゃんに不満があるようやったら、友だちとして声をあげよう。電車のカタンコトンのリズムは、そんなことをわたしに思い起こさせた。
「ありがとうございます」
病室の留美ちゃんは、明るくこたえてくれた。
「休みの日なのに、わざわざ、ありがとうございます。頼子さん、桜ちゃん」
「ううん、お見舞いついでに、難波とかもうろつきたかったし、気にしないで」
頼子さんは、ごく自然。ついでに寄りたい難波のあれこれを話しながら、花瓶にお花を生ける姿はドラマの登場人物みたい。
わたしも、なにか言おうと思うんやけど、留美ちゃんの腕に刺してある点滴のチューブを見ただけで言葉が無い。明るくしてるけど、顔色悪いし、目に力も無いし……。
「これでさ、ゲームノベルとか読んでみようかと思って。これが、留美ちゃんのPSP」
「わあ、見るの初めてです」
「ジャンクなんだけど、動画でメンテ調べたら、新品同然に使えるようになってさ。ま、疲れが出ない程度に触ってみて」
「はい。PSPって、息の長いゲーム機だったから、ソフト多いんですよね……うわあ、3000! シリーズの最新型じゃないですか!」
「ハハハ、最新っても、十年も前に生産中止になってるんだけどね」
PSPの使い方で盛り上がる先輩と留美ちゃん。さっそく、スマホでPSPのソフトを検索して盛り上がる。
「まあ、疲れが出ないようにね。復帰したら三人でいっぱい盛り上がろう。ね、さくら」
頼子さんが振ってくれて、わたしも話題に加わる。留美ちゃんも、けっこうなゲーマーで、気が付けば一時間も喋ってしまった。
留美ちゃんからは、菅ちゃんや学校への不満やらは出てこーへんかった。
本人に不満がないんやったら、わたしの出る幕やない。
少し、ホッとした気持ちでお見舞いを終えて、病院を出たのでありました。
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