せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
112 / 432

112『今日から三学期』

しおりを挟む
せやさかい

112『今日から三学期』 

 

 
 今日から三学期。

 
 昨日からの雨が残ったらいややなあと思た。

 思たからと言って、てるてる坊主をぶら下げるほど学校に情熱は無い。

―― 始業式が始まるころには晴れ間も見えてくることでしょう ――

 天気予報士のオネエサンが、なんでかあたしの心情を知ってるかみたいにコメントする。

 そうか、うちの安泰中学だけとちごて、今日は日本中の学校で始業式。

 そない思たら、新学期鬱もちょっとは晴れてくる。我ながら気分転換の名人……かも知れへん。

 
 詩(コトハ)ちゃんの制服姿も二週間ぶりに見る朝食のテーブル。

 
 わが従姉ながら、昔からベッピンさんやと思てたけど、いっそう磨きがかかってる。

 食卓に着く瞬間。さらりとお尻に手をやってスカートのヒダをさばく。反動で、胸と首がこころなし突き出される。で、たまに「ン……」と声を漏らす。かっこ良うて、ちょっとだけ色っぽうて、あたしの好きな詩ちゃんの一瞬。

「あら、さくらちゃんも制服板に付いてきたわね」

 詩ちゃんのお返し。

「あら、ほんとだ。四月は、ちょっと大きいかと思ったけど、なんだかピッタリ。成長してんのねえ」

 おばちゃんまでも……ちょっと照れる。

「さくらも、四カ月足らずで十四歳やねんなあ」

 テイ兄ちゃんまでノッテくると、もうかないません。

「さくらは成長が早いのんかもしれへんなあ、制服小さなったら言いや。なんぼでも新調したるさかいなあ」

 伯父さんは自分の娘同様に喜んでくれて、もう、なんや鼻の奥がツンとしてくる。

「ミス女子中学生コンテストあったら、申し込んどいてくれてええよ(^▽^)/」

 一発かまして笑いをとっとく。せやないと、顔が真っ赤になってしまうさかい。

 詩ちゃんと同じ制服、頼子さんが着てるとこを早よ見たいなあとも思った。

 
 学校に着くと、クラスのみんなとアケオメ。

 
 お祖父ちゃんなんかは「アケオメ」を嫌がる。

 新年の挨拶は「明けましておめでとうございますや」と言う、約(つづ)めた「アケオメ」はぞんざいに聞こえるんや。

 けども「あけましておめでとうございます」は、立ち止まらんと言えへん。大人は、さらに「旧年中はお世話になりまして、今年もなにとぞよろしくお願いいたします」てな具合に長くなる。そんな挨拶を付き合いの薄いクラスメートとはしてられへん。通りすがりとか追い越しざまとかに短く「アケオメ!」とかまし合うのが今の中学生。

 田中がいらんことを言いよる。

「アケオメ言う女子はアケオメコ!」

 同じことをアケオメ挨拶する女子に言いまくりよる。

 これを留美ちゃんにかました時、瀬田が田中の頭を張り倒しよった。

「え? え? なんで?」

 留美ちゃんは意味が分からん様子。

 ええねんええねん、留美ちゃんは大阪の俗語なんか知らんでよろしい。

 
 始業式でびっくりした。

 
 校長先生が、うちら一年一組の担任代行として学年主任の春日先生を紹介した。

 みんなの反応は薄かった。中には小さく喜んでる子ぉもおる。

 菅ちゃんは気ぃのまわらん先生やったさかいに。

 校長先生はボカシてたけど、お母さんの介護でニッチモサッチモいかへんようになったんや。

 阿倍野で偶然妹さんとモメテたん見てしもてたからね。
 不器用な先生やったけど、お母さんの介護がんばってください。

 できたら、妹さんとも仲良うにね。

 天気予報の通り晴れ間ものぞいて、それぞれの新学期が始まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

黄泉津役所

浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。 だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。 一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。 ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。 一体何をさせられるのか……

処理中です...