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144『閃いた!』
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144『閃いた!』
テイ兄ちゃんのテレワークは、さらに熱が入ってきた。
「ちょっと袋詰め手伝うてくれる」
坊主頭以外は坊主には見えへん腰パンのジャージ姿で段ボール箱を抱え、足で襖を開けながらテイ兄ちゃんが入ってきた。
「また、何か送るの?」
詩(ことは)ちゃんが、ちょっと迷惑そうな上目遣いで兄を見る。
詩ちゃんは、学校再開に向けて勉強中。
勉強いうても教科の勉強と違って吹部のレパートリー曲の勉強。今までのレパの確認と、新しくレパにできそうな曲の検討。なんせ、学校が始まったら本格的に吹部の部長やさかいに、邪魔はされとない。
「お香とお線香送ろと思てな……これが本山から送ってきた『龍臥香』、ちょびっとずつやけどええ匂いがする」
「いやあ、ほんま、めっちゃ爽やか!」
「月参りの時に持っていこ思たんやけど、待ってたら香りが飛んでしまうからなあ」
「ほかには?」
お香の匂いに触発されて、詩ちゃんも段ボール箱の中を覗きはじめる。
「あ、お線香がいっぱい」
「これも送るんや、僕がお経上げてる時に、同じ線香使うてもろたら臨場感あるやろ?」
「せやけど、テレワークやったら匂いまでは分からへんのんちゃうん」
「そこはムードや、『よかったら、お送りしたお線香使てもらえますか?』て言うとくんや、それで、同時にお線香に火ぃ着けたら雰囲気やろ。お香も香りを楽しみながら『この龍臥香の由来は……』とか手短に説明したら雰囲気出るやろ」
「なんや、イチビリみたい」
「イチビリでええねん、ちょっと遊びめいたとこから雰囲気が出てくるんや」
「お兄ちゃん、これ、なにかヒントがあったんじゃない?」
詩ちゃんは鋭い、こんな気の利いたことをテイ兄ちゃんが考えるわけがないと踏んでる。
「ハハ、実はな。テレワークの後に、みんなでバーチャル飲み会やってるのんを動画で見てな」
「アハハ、知ってる! あらかじめ、お酒と肴を送っておいて、みんなで乾杯とかするんだよね。雰囲気が出てきたら、みんな自前のお酒と肴に切り替えて」
「せや、最初だけ同じもの呑んで食べとくと雰囲気ちゃうらしいで」
「テイ兄ちゃん、下の重たそうな箱は?」
「ああ、タブレットや。スマホはみんな持ってはるけど、スマホやったら画面小さいから、環境の整ってない檀家さんには、これも送るんや」
「どうしたの、たくさんあるけど?」
「こんどのテレワークブームで、機材の更新する企業もあってなあ、そういうとこから譲ってもろたんや」
こういうイチビリのネットワークに、テイ兄ちゃんは強い。いつやったか、留美ちゃんにカラオケの訓練させた時とか、大晦日の除夜の鐘撞ツアーとか、お寺の落語会とか。
あ、そうや!?
閃いた!
「テイ兄ちゃん、まだ、タブレットある?」
「ああ、全部引き取る条件でもろてきたから。なんか使うんか?」
「うん、頼子さんを喜ばそ思て!」
「よ、頼子さんか!」
テイ兄ちゃんの目の色が変わった。
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