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148『やっと頼子の入学式!』
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148『やっと頼子の入学式!』
やっと入学式。
真新しい制服に身を包んで、ソフィアと二人式場の扉の前に立つ。
式次第を持った担当の先生がドアノブに手を掛けて、その瞬間を待っている。
ケホン
わたし以上に入学式を楽しみにしていたソフィアが、楽しみしていた分、余計に緊張している。
ボディ-ガードとお付きを兼ねているから、並みの留学とは違う。
制服の内ポケットには、イザという時のためのニンバス2020(伸縮式の特別制)を忍ばせているに違いない。先祖代々の王室付き魔法使い、義務感というか使命感でガチガチになってる。
「そんなに緊張していちゃ、三年間もたないわよ」
「緊張なんかしてません……です」
「そーお? じゃ、ちょっと歩く練習しとこう」
「歩く練習?」
「そう、緊張してると手と足がいっしょにでちゃったりするから」
「そんなこと、なりません。です」
「じゃ、ためしに一回やっとこう。いくよ、3、2、1、GO!」
一歩踏み出してアウト。ソフィアは見事に手足を一緒に出した。
「あ、あ、今のはナシです! 殿下の暗示にかかったです!」
「アハハ」
「わ、笑っちゃいけません(;^_^! です!」
「お静かに、間もなく開式です!」
「「はーーい」」
先生に怒られる。
同時に式場入場のためのBGM『威風堂々』が静かに流れる。
「時間です」
ノブに手を掛けた先生が、小さく、カチャリと音をさせて重厚なマホガニーのドアを開ける。
BGMのボリュームがレベル2ほど上がる。
手と足を同時に出すこともなく、七歩歩いて着席。
なんで七歩かと言うと、事前にソフィアと話して、験よくラッキーナンバーの七で決めてみようと打ち合わせていたから。
ん? それにしても七歩は少ない?
仕方ないでしょ! だって、ここは奥行八メートルしかない領事館のリビングなんだから!
「では、これより、令和二年度、真理愛女学院の入学式を挙行いたします。一同、起立!」
ザザザ
う……大勢が立ち上がるエフェクトなんかいらないのに。
100インチのモニターに真理愛女学院の校長先生が映し出される。
実物大だ。少しでもリアルな入学式にしようと、ジョン・スミスが、ほぼ実物大に見えるモニターを都合してきたんだ。
『新入学のみなさん、真理愛女学院はコ□ナの終焉を待って入学式を挙行しようと待っておりましたが、完全終息の気配が見えてこないまま、いたずらに日程を先延ばしに……』
状況の説明がなされると、ウィンプルのオデコが机にくっ付くんじゃないかと思うくらいに頭を下げる校長先生。でも、オデコを上げると、それこそマリア様のように慈愛に満ちたお顔で祝辞を述べられる。
『タブレットやモニターの画面越しではありますが、こうやって、新入生の皆さんにお祝いを述べられるのは、とても嬉しく、お目出度いことで……』
そこまで述べられると、校長先生を照らし出す灯りが五割り増しくらいに明るくなった。
ちょっと演出のし過ぎ……と思ったら、窓からの光だ。
なぜわかったかと言うと、領事館のリビングにも同時に光が差し込んできたから。
『ほら、みなさん、今日の貴方たちと真理愛女学院を祝福するように陽が差し込んできました!』
校長先生のスピーチは録画では無くてライブなんだ!
お祖母ちゃんの女王も、たとえカンニングペーパーを用意しても、スピーチはライブでやった方がいいという。
年齢相応に物忘れしたりするお祖母ちゃんは録画の方がいいと思うんだけど、こういうところを見てしまうと、やっぱり正しいと思ってしまう。
『では、明後日からネット授業が始まります。六月に入れば分散登校も始まり、直接みなさんの元気なお顔にも接することができるでしょう。みなさん、改めて、ご入学御目出とうございます(^▽^)/』
「新入生、起立。礼、着席」
きっちりやる先生だ。
ちなみに、進行はジョン・スミス。
「では、みなさんのクラスを発表します」
クラスなんて、一昨日来た通知に書いてあるんだけど、入学式のムードを大事にしたいジョン・スミスは、入学式が終わるまで教えてくれなかったのだ。
「ミス・ソフィアは、一年二組です」
「はい」
「ミス・ヨリコは、一年一組……」
ああ、やっぱりソフィアとは別のクラスだよね。
「……と、一年三組」
え、どっち?
「に挟まれたクラスです?」
「え、それって?」
「同じ二組ですよ、殿下」
「あ、もージョンったらあ!」
「ハハハ、怒らない怒らない、怒らないで回れ右」
「え、え?」
回れ右すると、マスクこそしていたけど、そのマスクから溢れるような笑顔のさくらと留美!
ウワアアアア!!
もう、言葉じゃなかった。
三人でハグ!
したかったんだけど、ジョン・スミスとソフィアに阻まれた!
「ソーシャルディスタンス、です!」
ちゃんと役目を果たすソフィアでありました(^_^;)
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