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156『実はなになに・1 那須与一』
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156『実はなになに・1 那須与一』さくら
実は~ということが世の中にはある。
田中さくらが実は酒井さくらやったみたいに。
田中さくらが酒井さくらになったのには色々事情があった。本人である酒井さくらでも完全には分かってない事情が。
そのことはええんです。実は~という例えに出したことやさかい。
「那須与一って知ってます?」
ずっと雨が続いてるさかいに文芸部の活動は進んで、わたしはラノベ、留美ちゃんは中学生向けの古典文学集を読んでたりする。今は平家物語やそうで、パタリと置いたページには昔風の合戦の挿絵。
「えと……この人?」
挿絵の騎馬武者を指さす。
「そうです! さすがですね!」
そら、挿絵の真ん中に描いてあるし(^_^;)
「えと、沖の小舟に立てられてる扇を打ち落とした源氏のおさむらい?」
「ピンポンピンポン! 完璧です!」
「アハハ」
「その那須与一の与一って、どういう意味だか分かります?」
え、それは……あはは。
なんかかっこいい名前という印象やけど、なんでか言うとこまでは考えたことが無い。
「十一番目の子って意味なんですよ。長男は太郎で、次男は二郎」
「三番目が三郎、で、四郎、五郎って感じよね」
「はい、義経は九番目なんで九郎義経、十番目だと新宮十郎行家とかです」
博識やなあ、この時代の武士は義経と頼朝しか知らん。
「十一郎って言いにくいじゃないですか。だから『余』って字を付けて余一、でも、なんか余りものっぽいんで『与』に変えて与一ってしたんです」
「ほんなら、那須与一は十一男!?」
「はい、だから、大将の義経が『あの扇を射落とせる者はおらぬか!?』って全軍に聞いた時真っ先に手を挙げたんです。十一番目だから与一って日陰者だったんですけど、これで名を挙げられれば、身の誉れですからね。与一はお妾さんの子どもで、他の兄弟ともいっしょには暮らせないで、お母さんと二人暮らしだったんです。少しでも名前を挙げて、お母さんに楽をさせてあげたかったんですね」
「は、はあ」
わたしと同い年やのに、留美ちゃんはすごいよ(;'∀')
「それでね、与一って言うのは与太郎と意味同じなんですよ」
「え、与太郎と!?」
与太郎いうのは落語でよく出てくる名前。人はええねんけど、ちょっと抜けてるボケキャラ。
お寺で時々やる落語会で憶えた知識。
「こういう『実はなになに』的な話って好きなんです(^▽^)/」
「ああ、あたしも好き。ほら、堺市の堺が実は街が摂津・河内・和泉の三か国に跨ってるから付いた名前やとか……あ、これも留美ちゃんから聞いたんやった!」
「アハハ、でしたっけ」
「うんうん、春の大仙公園で動画撮ってる時に」
「じゃ、ひとつ問題です」
「はい!」
「これの正式名称はなんでしょうか?」
留美ちゃんは、見慣れた文房具を取り上げた。
「ホッチキス!」
「ブッブー」
「え、ちゃうのん?」
「はい、じゃ、宿題です。ググったりしないで調べてくださいね(^▽^)/」
それで、わたしはホッチキスのことについて考えたり思い出したりしている。
表は、本堂裏の部室に居ても分かるほどの雨が降り続いております。
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