178 / 432
178『代理でお見舞い』
しおりを挟むせやさかい
178『代理でお見舞い』さくら
あ、さくらちゃん。
キョロキョロしてたら看護師さんに声をかけられた。
「え?」
一瞬分からへん。
「いつも留美がお世話になって(^▽^)」
マスクの上の目がへの字になって分かった。留美ちゃんのお母さんや!
「あ、え、こんにちは(^_^;)」
ペコリ
「お見舞い?」
胸に抱えた花束を見て聞いてくれはる。
「はい、内科で入院してはる橘謙譲さんのお見舞いなんですけど、病室が見当たらへんで……受付で聞いた病室は、ここなんですけど」
教えられてやってきた病室には別の人の名前がかかっていたんですわ(^_^;)
「あら、内科は一つ上よ」
「え……?」
「ここは六階で泌尿器のフロアだから」
「え、七階やなかったんですか? ここ?」
エレベーターで、ちゃんと⑦を押したはずやねんけど。
「あー、エレベーター修理中でね表示パネルが間に合わせなんで、時々迷う人がいるのよね」
書いてある番号の上のボタンを押したんやけど、ほんまは下のボタンをさ押さならあかんみたい。
アハハハ
照れ笑いをして、ちょうどやってきたエレベーターに乗りなおす。
乗ってから、たった一階やねんから階段を使たらええねんと思いなおす。焦るとろくなことはありません。
ほんまは詩(ことは)ちゃんが来るはずやったんやけど部活で唇を切ってしもて、これ以上切れたらヤバイんで、わたしにお鉢が回ってきた。
橘謙譲さんいうのは、専念寺のゴエンサン(浄土真宗では住職のことをゴエンサンという)。お祖父ちゃんと同年配やねんけど、後継ぎがいてはれへんので、まだ現役でやってはる。
持病を持ってはって、去年の春も入院して、うちのおっちゃんとテイ兄ちゃんがゴエンサン代行をやってた。今度も、おっちゃんとテイ兄ちゃんに加えてお祖父ちゃんも、ちょっと手伝うてる。
おばちゃんが見舞いに行くと気ぃつかいはるということで、うちが花束抱えて専念寺さんの病室を目指してるというわけですよ。
あった、ここや!
病室の前の名札に『橘謙譲様』の名札がかかってる。
病室の前のアルコールで消毒し……ようと思たら、言い争う声がして、花束抱えたまま固まってしまう。
『鸞があと継がんと、寺には居れんことになるんやでえ』
『そんなん言われても、坊主は嫌や』
『なあ、鸞、今は如来寺さんが助けてくれてはるけど、いつまでも頼ってるわけにもいかへん』
『お兄ちゃんが居てるやんか』
『親(ちか)を当てにしてたら、いつになるか分からへんやろ』
『戻って来るって! お祖父ちゃんも、まだ七十にもなってへんねんから、気弱になったらあかへんやんか』
『たとえ直っても、元のようにはでけへん』
『元気出しいや、鸞がしっかり看たるさかいに。元気になったら、そんな気弱さどっかいってしまうさかい。お祖父ちゃん、病気で気弱になってるだけやねんて』
『鸞……』
『うちは、まだ中二やねん、そんな大人になってからのこと言われても……』
『なにも、今すぐに坊さんになれ言うのんとちゃうや。な、せめて得度だけでも、得度は子どもでもでける』
『堪忍してえよ、もう』
『鸞が得度もせんままにお祖父ちゃんが逝ってしもたら、ほんまに、寺には折られへんねんで』
『もう、この話はおしまい!』
『鸞』
『ちょっと、外の空気吸うてくる!』
ガラ!
「うわ!」
いきなりドアが開いてビックリした(*_*)!
なんとか身をかわして、鸞いう子ぉは速足で階段の方に行ってしまう。
病院のドアいうのは、開けたら自動で閉まるもんやけど、あんまり勢いよう開けたもんで、なにかが引っかかったか外れたかして、開けたまま止まってしまう。
「あ……どちらさんかな?」
専念寺のお爺さんと目ぇが合ってしもた……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~
ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。
彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。
――死んだはずの彼女が、生きている?
同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。
「今さら、逃げ道があると思うなよ」
瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。
秘された皇子と、選び直した愛。
三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?
* * *
後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる