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181『プリンセスの崇拝者』
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181『プリンセスの崇拝者』頼子
ほんとうは諦一さんという。
だけど、さくらが「テイ兄ちゃん」と呼ぶので、わたしも『テイ兄ちゃん』と認識するようになった。
さくらの家である如来寺の若ボン(檀家のお婆さんたちからは、そう呼ばれている)で、23歳の若さで専業の僧侶。
近ごろはお寺の子でもお坊さんにはなりたがらない。理由はいろいろなんだろうけど、なりたがらない気持ちは分かる。
わたしもヤマセンブルグ公国の王位継承者で、プリンセスの称号を持ってるんだけど、正式な王女になるのは抵抗がある。
だって、王女とか女王とかはたいへんなんだ。
年中行事に引っ張り出されるし、お行儀悪くできないし、職業選択の自由も移動の自由も制限される。
まだ、正式に王位継承者になっていないのに、ボディーガードが付いている。ソフィアという女の子で、祖母の女王は「魔法使いの末裔だから心強いわよ」と太鼓判。日ごろは、わたしが通う真理愛女学院に一緒に通っている。部活も、本当は剣道部とかをやりたかった様子なんだけど、わたしをガードするためにわたしが気まぐれに作った散策部という地味~な部活で我慢してくれている。
お坊さんもね、王族ほどではないんだろうけど、いろいろ制約がある。
お行儀良くしてなくちゃならないだろうし、お寺だけでは、なかなか食べていけないから、他に仕事を持たなければならない人が多い。如来寺は檀家さんが多いので、珍しく『専業坊主』だそうだけど、さくらの内緒話によると、この先ずっと専業でやっていける保証はないらしい。
そんなテイ兄ちゃんは、わたしを崇拝しているフリをしてくれている。
崇拝者だから、この三月まで、わたしが部長を務めていた文芸部の我がままに喜んで付き合ってくれている。主にアッシーさんなんだけどね。女の子の我がままで、急に思いついた「あそこに行きたい!」「こっちを見たい!」なんかにも、軽いノリで車を出してくれ、わたしたちの好奇心をサポートしてくれる。
そのテイ兄ちゃんが師走を地で行くほどに忙しい。
なんでも、お寺仲間の専念寺のご住職さんが入院されたので、専念寺の仕事を丸々如来寺が引き受けることになって、檀家周りや、お寺の付き合いでてんてこ舞いということらしい。
『ごめんね、頼子さん。八尾の残念さんに連れて行ったげる話、なかなかでけへんで(;^_^A』
「あ、気にしないでください。残念さんは四百年前から、あそこに居て、お引越しの予定もないそうですから、また、みんなの都合がよくなったときにお願いします」
『そう言うてもらうと、気が楽やけど、頼子さんらが残念さんにならんように考えるから、えと、忙しいから頭回ってへんねんけど、なんかリクエストないかなあ? そっちのリクエストに合わせて考えた方が手っ取り早いと思う』
「えと……じゃあ……あ、そうだ! 去年やった除夜の鐘とか?」
『え、そんなんでええのん!? 寒い中、お寺の鐘突くだけやで!?』
「はい、めちゃくちゃ楽しかったですし、テイ兄ちゃんこそよろしかったら」
『それやったら、人手不足のお寺はなんぼでもあるから!』
「じゃ、候補が見つかったら、またお電話ください」
『承知承知、これで、頼子さんに電話する口実できるさかいに、こっちこそラッキーや』
「ハハ、お電話でしたらいつでも」
『そうか、ほんなら、プラン考えとくさかい。まとまったらメールします。ほんじゃね!』
電話を切ると、背中に気配。
そう、言うまでもなくソフィア。
そのソフィアが目を輝かせて迫ってきた。
「ジョヤノカネってなんですか? です!?」
今月も、いろいろ起こりそうな予感の師走の十二月が始まった。
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