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241『委員長のM子さんが』
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せやさかい
241『委員長のM子さんが』頼子
晴れた日ならカーテン越しの朝日に美しい横顔を照らされて、英語か数学の予習をやっている委員長のM子さん。
いつものように教科書と辞書が並んでいる机にピカリと光るものがある。
え、スマホを見てる?
教室を見回すと、そろそろ始業のチャイムだというのに、十人ほどの子がスマホを見たり、中には小さくたたんだ新聞を読んでいる子もいる。
真理愛学院は、スマホの使用を禁止にはしていないけど、節度を持って使いなさいと言われている。
だから、授業中に操作している子なんて、めったにいないし、休み時間でも見ている子は少ない。
あれなんだろうな。
見当はつく。
社会的にショックな事件が二つあった。
山梨県で女子高生が刺殺され、あくる日には犯人が逮捕された事件。
ちょっと愛憎のもつれ的なところが関心を持たれる。
もう一つは、内親王さまがご結婚のご意思を固められたというニュース。
内親王さまと殺人事件を横並びというのは畏れ多いんだけど、両方とも、裏にいろいろある。
ちょっと気になるので、ロッカーに辞書を取りに行くふりをしてみんなの様子を探る。
ロッカーを開けると、後ろに人の気配。
―― コロシ2人、プリンセス7人 ――
一瞬の呟きはソフィーだ。
辞書を取ると、交代するように自分のロッカーをまさぐるソフィー。
わたしの様子を見極めて、そっと教えてくれたんだ。
姉妹同然のソフィーだから、心の中で苦笑しておしまいなんだけど、ソフィーの仕事はガードの他に、わたしの監視もあるんだと思い返す。
内親王さまのご決断に感想を口にするのは差し控えるけど、ロイヤルファミリーという立場の重さは他人事じゃない。
いつもは敬遠しているお婆さまだけど、今日は無性に会って話がしたくなった。
さすがにスマホを出すことはしなかったけど、一時間目が始まる前から学校の事が上の空になってしまいそう。
「起立!」
M子さんの掛け声で我に返る。
担任の先生が朝礼にやってきたんだ。
スマホやアレコレを仕舞う気配があちこちでするけど、先生は苦情も言わずに、サッと出席をとって、マスク越しだけど、ハッキリ言った。
「よそのクラスで複数の感染者が出ました。よって、二年生は、ただ今より学年閉鎖になります。期限は二週間。詳しくは一斉送信のメールで昼までには送ります。万一感染した人やPCR検査を受けた場合は速やかに学校まで連絡すること、それでは、ただちに下校してください。起立!」
先生は、委員長の掛け声も待たずに朝礼を打ち切って廊下に出る。
そのまま職員室に戻るのかと思ったら、入り口を出たところで立っている。
早く帰りなさいということだ。
「殿下、お車が……」
そこを過ぎたら駅が見える公園の前にさしかかって、ソフィーが囁く。
首を向けると、公園の向こう側の道路に青色ナンバーが停まっている。
下校の列から離れて、公園を斜めに抜けて車に乗り込む。
「まっすぐ戻ります」
消毒液を差し出しながらジョン・スミス。
ダッシュボードには週刊Sが載っている。
トップ記事が『内親王さま婚約者の母○○さん……』の大きな見出し。
シートベルトをしようとして、ジョン・スミス。
「アフガニスタンにヤマセンブルグの者が数名残されています。関連記事が載っているものですから……」
そう言うと、助手席に週刊誌を置いて、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
昨日までの青空は、鈍色の曇り空になって、発車と同時にフロントガラスに雨粒が降りかかる。
「二日もすれば晴れるそうですよ」
ソフィーが気遣って微笑ってくれた。
魔法使いの末裔も少しはいい笑顔をするようになったかな。
笑顔を返そうとしたけど、我ながら虫歯をこらえているような表情になってしまって閉口。
閉口したまま領事館に帰った。
241『委員長のM子さんが』頼子
晴れた日ならカーテン越しの朝日に美しい横顔を照らされて、英語か数学の予習をやっている委員長のM子さん。
いつものように教科書と辞書が並んでいる机にピカリと光るものがある。
え、スマホを見てる?
教室を見回すと、そろそろ始業のチャイムだというのに、十人ほどの子がスマホを見たり、中には小さくたたんだ新聞を読んでいる子もいる。
真理愛学院は、スマホの使用を禁止にはしていないけど、節度を持って使いなさいと言われている。
だから、授業中に操作している子なんて、めったにいないし、休み時間でも見ている子は少ない。
あれなんだろうな。
見当はつく。
社会的にショックな事件が二つあった。
山梨県で女子高生が刺殺され、あくる日には犯人が逮捕された事件。
ちょっと愛憎のもつれ的なところが関心を持たれる。
もう一つは、内親王さまがご結婚のご意思を固められたというニュース。
内親王さまと殺人事件を横並びというのは畏れ多いんだけど、両方とも、裏にいろいろある。
ちょっと気になるので、ロッカーに辞書を取りに行くふりをしてみんなの様子を探る。
ロッカーを開けると、後ろに人の気配。
―― コロシ2人、プリンセス7人 ――
一瞬の呟きはソフィーだ。
辞書を取ると、交代するように自分のロッカーをまさぐるソフィー。
わたしの様子を見極めて、そっと教えてくれたんだ。
姉妹同然のソフィーだから、心の中で苦笑しておしまいなんだけど、ソフィーの仕事はガードの他に、わたしの監視もあるんだと思い返す。
内親王さまのご決断に感想を口にするのは差し控えるけど、ロイヤルファミリーという立場の重さは他人事じゃない。
いつもは敬遠しているお婆さまだけど、今日は無性に会って話がしたくなった。
さすがにスマホを出すことはしなかったけど、一時間目が始まる前から学校の事が上の空になってしまいそう。
「起立!」
M子さんの掛け声で我に返る。
担任の先生が朝礼にやってきたんだ。
スマホやアレコレを仕舞う気配があちこちでするけど、先生は苦情も言わずに、サッと出席をとって、マスク越しだけど、ハッキリ言った。
「よそのクラスで複数の感染者が出ました。よって、二年生は、ただ今より学年閉鎖になります。期限は二週間。詳しくは一斉送信のメールで昼までには送ります。万一感染した人やPCR検査を受けた場合は速やかに学校まで連絡すること、それでは、ただちに下校してください。起立!」
先生は、委員長の掛け声も待たずに朝礼を打ち切って廊下に出る。
そのまま職員室に戻るのかと思ったら、入り口を出たところで立っている。
早く帰りなさいということだ。
「殿下、お車が……」
そこを過ぎたら駅が見える公園の前にさしかかって、ソフィーが囁く。
首を向けると、公園の向こう側の道路に青色ナンバーが停まっている。
下校の列から離れて、公園を斜めに抜けて車に乗り込む。
「まっすぐ戻ります」
消毒液を差し出しながらジョン・スミス。
ダッシュボードには週刊Sが載っている。
トップ記事が『内親王さま婚約者の母○○さん……』の大きな見出し。
シートベルトをしようとして、ジョン・スミス。
「アフガニスタンにヤマセンブルグの者が数名残されています。関連記事が載っているものですから……」
そう言うと、助手席に週刊誌を置いて、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
昨日までの青空は、鈍色の曇り空になって、発車と同時にフロントガラスに雨粒が降りかかる。
「二日もすれば晴れるそうですよ」
ソフィーが気遣って微笑ってくれた。
魔法使いの末裔も少しはいい笑顔をするようになったかな。
笑顔を返そうとしたけど、我ながら虫歯をこらえているような表情になってしまって閉口。
閉口したまま領事館に帰った。
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