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305『後輩たちと二つの顔のソフィー』
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せやさかい
305『後輩たちと二つの顔のソフィー』頼子
また走ってる……
わたしの気まぐれに付き合って音楽室にやってきたソフィーが、せっかく弾けるようになったビバルディ―『四季』の春をカン無視して、ピアノに背を向けて呟く。
ピアノの後ろは窓、カーテンを少しめくって下界を見てるんだ。
連休の狭間、六日の金曜日には「走ってる」って呟いたものだから、うる憶えのビバルディ―が走っているのかと、鍵盤の指を意識した。
しかし、ソフィーが見ているのは、下界のグラウンドを走る一年生の三人。
言わずと知れた、さくらと留美ちゃん、それに、近ごろお仲間になった古閑巡里(こげんめぐり)。
いちばん小さいさくらが先頭で、ほとんどくっつくようにして留美ちゃん。そして後ろをノッポの古閑巡里。
走るといっても、次が体育の授業というわけでもなく、運動音痴の留美ちゃんを間に挟んでシゴキのランニングをやっているわけでもない。
入学以来、学校探検に凝っているんだ。
先日は図書館にやってきて、わたしたちが居るのにも気づかずに盛り上がっていた。
ソフィーが面白がって、図書委員のフリして相手していたけど、ぜんぜん気づかなかった。
中学のときからそうだけど、ほんとうに子ネコみたいな子たちだ。
けしからんことに、まだ挨拶にも来ない。古閑巡里はともかく、さくらと留美ちゃんは子分みたいなものなのにね。
「部活には、まだ入ってないわよ」
見透かしたようにソフィーが振ってくる。
「いいのよ、どの部活に入ろうと、あの子たちの自由なんだから」
「そうかなあ……」
「古閑巡里もるんだから、三人ワンセットで、バレー部にでも入ればいいわ。さくらなんか、いいリベロになるかもよ」
「それはないわ」
「なんで? 古閑巡里ほどのタッパがあれば、バレーとかバスケが放っておかないでしょ?」
「古閑巡里は持病があって、部活レベルの運動はNGなのよ」
「ひょっとして調査済み?」
ソフィーは女王陛下の諜報部員、新入生の素性を調べるなんて朝めし前だ。
「普通に調べられる範囲ではね。保護者からの申し出で、運動系の部活には釘が刺されてる『古閑巡里には声も掛けるな』って。優しい性格だから、強く押されたら断れないみたいよ」
「どういう病気?」
「分からないわ、普通に調べた範囲だから。必要なら調べるけど」
「いいわ、反則っぽいから」
「フフ、ヨリッチも大人になったかな?」
「友だちモードのソフィーって、ちょっとムカつく」
「あ、転んだ」
「古閑巡里が?」
「ううん、さくら……古閑巡里が抱っこして保健室の方角に走っていく!」
「え、ケガでもした!?」
思わず、窓辺に!
「ううん、ただの打撲と擦り傷。留美ちゃんが落ち着いてるから、ぜんぜん大したことは無い」
「…………」
「保健室行ってみる? 声かけるにはいいきっかけよ」
「い、いいわよ(-。-;)」
帰りの車の中、三日ぶりにSNSを開いて、ちょっとショック。
「少し控えた方がいいと思いますよ」
ガードモードになったソフィー、口調は丁寧だけど、言うことは厳しい。
スマホを開く前に、こういう書き込みが多いのを分かっていたんだ。
直近のSNSには、大仙公園で撮ったDAISEN PARKの写真を載せてある。
書き込みの半分は日本語で、普通に公園のモニュメント文字を面白がってくれているものだったけど、英語で書かれた……その多くはヤマセンブルグからのは、ちょっとね。
みんな、わたしの立場を知ってるから、言葉こそ控え目で丁寧だったけど、内容は切実だ。
―― 早く、お国に帰って正式な王女になってください ――
―― 殿下は、写真のDAISEN PARKのように、それ以上に、お国のシンボルなのです ――
中には、こういうものも……
―― 女王陛下はお疲れです、いっそ王位に就いて、女王陛下と我々臣民に安心をお与えください ――
友だちモードのソフィーなら、言ってくれるだろう「ね、だから言ったじゃないよ、しょうのないヨリッチだ!」とかね。
ガードモードのソフィーは何も言わない。
もちろん、前のシートで運転してるジョン・スミス警備部長もね……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
305『後輩たちと二つの顔のソフィー』頼子
また走ってる……
わたしの気まぐれに付き合って音楽室にやってきたソフィーが、せっかく弾けるようになったビバルディ―『四季』の春をカン無視して、ピアノに背を向けて呟く。
ピアノの後ろは窓、カーテンを少しめくって下界を見てるんだ。
連休の狭間、六日の金曜日には「走ってる」って呟いたものだから、うる憶えのビバルディ―が走っているのかと、鍵盤の指を意識した。
しかし、ソフィーが見ているのは、下界のグラウンドを走る一年生の三人。
言わずと知れた、さくらと留美ちゃん、それに、近ごろお仲間になった古閑巡里(こげんめぐり)。
いちばん小さいさくらが先頭で、ほとんどくっつくようにして留美ちゃん。そして後ろをノッポの古閑巡里。
走るといっても、次が体育の授業というわけでもなく、運動音痴の留美ちゃんを間に挟んでシゴキのランニングをやっているわけでもない。
入学以来、学校探検に凝っているんだ。
先日は図書館にやってきて、わたしたちが居るのにも気づかずに盛り上がっていた。
ソフィーが面白がって、図書委員のフリして相手していたけど、ぜんぜん気づかなかった。
中学のときからそうだけど、ほんとうに子ネコみたいな子たちだ。
けしからんことに、まだ挨拶にも来ない。古閑巡里はともかく、さくらと留美ちゃんは子分みたいなものなのにね。
「部活には、まだ入ってないわよ」
見透かしたようにソフィーが振ってくる。
「いいのよ、どの部活に入ろうと、あの子たちの自由なんだから」
「そうかなあ……」
「古閑巡里もるんだから、三人ワンセットで、バレー部にでも入ればいいわ。さくらなんか、いいリベロになるかもよ」
「それはないわ」
「なんで? 古閑巡里ほどのタッパがあれば、バレーとかバスケが放っておかないでしょ?」
「古閑巡里は持病があって、部活レベルの運動はNGなのよ」
「ひょっとして調査済み?」
ソフィーは女王陛下の諜報部員、新入生の素性を調べるなんて朝めし前だ。
「普通に調べられる範囲ではね。保護者からの申し出で、運動系の部活には釘が刺されてる『古閑巡里には声も掛けるな』って。優しい性格だから、強く押されたら断れないみたいよ」
「どういう病気?」
「分からないわ、普通に調べた範囲だから。必要なら調べるけど」
「いいわ、反則っぽいから」
「フフ、ヨリッチも大人になったかな?」
「友だちモードのソフィーって、ちょっとムカつく」
「あ、転んだ」
「古閑巡里が?」
「ううん、さくら……古閑巡里が抱っこして保健室の方角に走っていく!」
「え、ケガでもした!?」
思わず、窓辺に!
「ううん、ただの打撲と擦り傷。留美ちゃんが落ち着いてるから、ぜんぜん大したことは無い」
「…………」
「保健室行ってみる? 声かけるにはいいきっかけよ」
「い、いいわよ(-。-;)」
帰りの車の中、三日ぶりにSNSを開いて、ちょっとショック。
「少し控えた方がいいと思いますよ」
ガードモードになったソフィー、口調は丁寧だけど、言うことは厳しい。
スマホを開く前に、こういう書き込みが多いのを分かっていたんだ。
直近のSNSには、大仙公園で撮ったDAISEN PARKの写真を載せてある。
書き込みの半分は日本語で、普通に公園のモニュメント文字を面白がってくれているものだったけど、英語で書かれた……その多くはヤマセンブルグからのは、ちょっとね。
みんな、わたしの立場を知ってるから、言葉こそ控え目で丁寧だったけど、内容は切実だ。
―― 早く、お国に帰って正式な王女になってください ――
―― 殿下は、写真のDAISEN PARKのように、それ以上に、お国のシンボルなのです ――
中には、こういうものも……
―― 女王陛下はお疲れです、いっそ王位に就いて、女王陛下と我々臣民に安心をお与えください ――
友だちモードのソフィーなら、言ってくれるだろう「ね、だから言ったじゃないよ、しょうのないヨリッチだ!」とかね。
ガードモードのソフィーは何も言わない。
もちろん、前のシートで運転してるジョン・スミス警備部長もね……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
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