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339『ヤマセンブルグへ』
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せやさかい
339『ヤマセンブルグへ』留美
大砲というのは撃った後もすごい。
ワンオクロックガンは、一時の時報を撃ったあとも、砲口からモワ~っと煙を吐いて、一仕事終えた後の一服の煙みたいなんだけど、電柱の太さほどの筒先から漂い出てくる煙は、ちょっとした狼煙という感じ。
「あれは、時報のための空砲で、弱装薬だら、実包の半分もないよ」
メグリンは、さすがに幹部自衛官の娘さん、動じません。
その実包の発射直後を思わせるような顔で、ソフィーが戻ってきた!
「ソフィー!」
声を上げて抱き付いたのは、さくら。
わたしとさくら、それに頼子さんは分かっている。
三年前の、ソフィーの壮絶な戦いを知っているから。
「Run away! dont look back!」
ソフィーは、杖を持った右手を闇に向け、一瞬横顔を見せて叫んだ!
ワオオーーーーーーーン ワオオーーーーーーーン
地下からのうめき声は、もう、すぐ下の階層まで上って来ていて、いまにもわたしたちを呑み込んで地獄の底に引きずり込んでしまいそう!
「殿下!」
ジョンスミスが懐に抱え込むようにして、地上への階段を駆け上がる。
「ソフィア!!」
渾身の叫び声で、気遣う頼子さんを押し上げるようにして、わたしとさくらも地上に急ぐ!
ガチャピーーーーーン!
地下一階まで上がると、待機してたマスターはドアを閉める!
「ソフィアがあああああ!」
「閉めておかないとお祓いができない!」
ジョン・スミスが目を吊り上げる。
その直後、扉の下では、まるで台風と火山の噴火が一度に来たような音がして、頑丈な樫のドアを取付金具ごとガタガタと震わせていた。
頼子さんとジョンスミスは、早口で神のみ名を讃えながら幾度も十字を切って、さくらはナマンダブを、わたしは「お母さんお母さん」を繰り返す。
一瞬、音と振動が緩んだ隙に、ドアを蹴破るようにしてソフィーが、やっと上がってきて、それから、何分か何十分か、地上の六人でドアを押して、そしてやっと凌いだ(053:『エディンバラ・9』)
三年前のソフィーと自分たちの姿が蘇った。
そうだ、ソフィーは三年前の勝負に決着をつけてきたんだ。
ソフィーは、ヤマセンブルグの諜報部員で頼子さんのガードで、いつのまにか少尉の軍服がよく似合う軍人さんになっていたんだ。そして王室付き魔法使いの末裔でもあって、そういうことであるための義務を、たったいま果たしてきたんだ。
でも、でも、わたしたち散策部のメンバーでもあり、学校の先輩でもあり、ううん、姉妹同然の仲間だから、さくらは瞬間で飛びついて涙でグチャグチャになってるんだ。
「殿下、これで、後顧の憂い無くヤマセンブルグに向かえます」
「ご苦労でした、ソフィア少尉」
この三秒間だけ公式のやり取りをして、ちょっと遅いランチを食べに行った。
そして、今朝は二機の飛行機に分乗してヤマセンブルグに向かっている。
「どうせやったら、みんな、おんなじ飛行機に乗ったらよかったのにぃ」
ちょっとむくれ顔のさくら。
「複数のVIPを移動させるときは、複数の機体を用意するのが警護の常識だよ」
メグリンが指を立てる。
「わたしとお祖母ちゃんが、いっぺんにお陀仏になるわけにはいかないからね」
「そんな、縁起でもないことを(^_^;)」
「リスクマネジメントの常識」
「ああ、ソフィーはすっかりガードモードになってしもてるしぃ」
「でも、正式な王女になるって大変なのね、わたしが大学出るのは二年後だけど、頼子さんに比べたら、まだまだノホホンとしてるもんね」
「せやせや、まだまだ先の話やのに外堀埋めるのん早すぎやよ、頼子さん!」
「賢い鳥はね、風に合わせて羽ばたくんだぞ」
「ソフィー、今日は操縦せえへんのん?」
「ジョンスミスが女王陛下の方に行っちゃって、こっちはメグさんの操縦なんだけど、メグさんは教官のライセンス持ってないから」
「あ、そうなんや」
「エディンバラじゃ、あんまり遊べなくてごめんね」
「ううん、あちこちは行かへんかったけど、中身は濃かったし」
うんうん(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)と揃って頷く。
『着陸態勢に入ります、シートベルトをお願いします。ちょっと気流に乱れがあるようなんで、下噛まないようにしてください』
メグさんのアナウンス。
エディンバラからヤマセンブルグは拍子抜けがするくらいに早い。
まあ、今回の旅は日本から三日もかかっちゃったから、余計に短く感じる。
ガクンガクン
武者震いをするような音をさせながら、飛行機は着陸態勢に入って行った……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
339『ヤマセンブルグへ』留美
大砲というのは撃った後もすごい。
ワンオクロックガンは、一時の時報を撃ったあとも、砲口からモワ~っと煙を吐いて、一仕事終えた後の一服の煙みたいなんだけど、電柱の太さほどの筒先から漂い出てくる煙は、ちょっとした狼煙という感じ。
「あれは、時報のための空砲で、弱装薬だら、実包の半分もないよ」
メグリンは、さすがに幹部自衛官の娘さん、動じません。
その実包の発射直後を思わせるような顔で、ソフィーが戻ってきた!
「ソフィー!」
声を上げて抱き付いたのは、さくら。
わたしとさくら、それに頼子さんは分かっている。
三年前の、ソフィーの壮絶な戦いを知っているから。
「Run away! dont look back!」
ソフィーは、杖を持った右手を闇に向け、一瞬横顔を見せて叫んだ!
ワオオーーーーーーーン ワオオーーーーーーーン
地下からのうめき声は、もう、すぐ下の階層まで上って来ていて、いまにもわたしたちを呑み込んで地獄の底に引きずり込んでしまいそう!
「殿下!」
ジョンスミスが懐に抱え込むようにして、地上への階段を駆け上がる。
「ソフィア!!」
渾身の叫び声で、気遣う頼子さんを押し上げるようにして、わたしとさくらも地上に急ぐ!
ガチャピーーーーーン!
地下一階まで上がると、待機してたマスターはドアを閉める!
「ソフィアがあああああ!」
「閉めておかないとお祓いができない!」
ジョン・スミスが目を吊り上げる。
その直後、扉の下では、まるで台風と火山の噴火が一度に来たような音がして、頑丈な樫のドアを取付金具ごとガタガタと震わせていた。
頼子さんとジョンスミスは、早口で神のみ名を讃えながら幾度も十字を切って、さくらはナマンダブを、わたしは「お母さんお母さん」を繰り返す。
一瞬、音と振動が緩んだ隙に、ドアを蹴破るようにしてソフィーが、やっと上がってきて、それから、何分か何十分か、地上の六人でドアを押して、そしてやっと凌いだ(053:『エディンバラ・9』)
三年前のソフィーと自分たちの姿が蘇った。
そうだ、ソフィーは三年前の勝負に決着をつけてきたんだ。
ソフィーは、ヤマセンブルグの諜報部員で頼子さんのガードで、いつのまにか少尉の軍服がよく似合う軍人さんになっていたんだ。そして王室付き魔法使いの末裔でもあって、そういうことであるための義務を、たったいま果たしてきたんだ。
でも、でも、わたしたち散策部のメンバーでもあり、学校の先輩でもあり、ううん、姉妹同然の仲間だから、さくらは瞬間で飛びついて涙でグチャグチャになってるんだ。
「殿下、これで、後顧の憂い無くヤマセンブルグに向かえます」
「ご苦労でした、ソフィア少尉」
この三秒間だけ公式のやり取りをして、ちょっと遅いランチを食べに行った。
そして、今朝は二機の飛行機に分乗してヤマセンブルグに向かっている。
「どうせやったら、みんな、おんなじ飛行機に乗ったらよかったのにぃ」
ちょっとむくれ顔のさくら。
「複数のVIPを移動させるときは、複数の機体を用意するのが警護の常識だよ」
メグリンが指を立てる。
「わたしとお祖母ちゃんが、いっぺんにお陀仏になるわけにはいかないからね」
「そんな、縁起でもないことを(^_^;)」
「リスクマネジメントの常識」
「ああ、ソフィーはすっかりガードモードになってしもてるしぃ」
「でも、正式な王女になるって大変なのね、わたしが大学出るのは二年後だけど、頼子さんに比べたら、まだまだノホホンとしてるもんね」
「せやせや、まだまだ先の話やのに外堀埋めるのん早すぎやよ、頼子さん!」
「賢い鳥はね、風に合わせて羽ばたくんだぞ」
「ソフィー、今日は操縦せえへんのん?」
「ジョンスミスが女王陛下の方に行っちゃって、こっちはメグさんの操縦なんだけど、メグさんは教官のライセンス持ってないから」
「あ、そうなんや」
「エディンバラじゃ、あんまり遊べなくてごめんね」
「ううん、あちこちは行かへんかったけど、中身は濃かったし」
うんうん(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)と揃って頷く。
『着陸態勢に入ります、シートベルトをお願いします。ちょっと気流に乱れがあるようなんで、下噛まないようにしてください』
メグさんのアナウンス。
エディンバラからヤマセンブルグは拍子抜けがするくらいに早い。
まあ、今回の旅は日本から三日もかかっちゃったから、余計に短く感じる。
ガクンガクン
武者震いをするような音をさせながら、飛行機は着陸態勢に入って行った……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
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