せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

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343『ジャガイモ尽くし』

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せやさかい

343『ジャガイモ尽くし』さくら   




 夕べのディナーはジャガイモ尽くしやった(;'∀')


 お料理が出てきて思い出した。

 ヤマセンブルグは、ご先祖の遺徳をしのぶため、慶弔の行事があったときは、ご先祖が食べてたのと同じものを食べる。

 ジャガイモのソテー、 イモサラダ、 ジャガイモのスープ、 ベーコンとジャガイモのボイル、 ジャガイモのガレットなどなど……

 そうなんや、初代のヤマセンブルグ辺境伯がスコットランドで汚れ仕事をしてたころに食べてたメニュー。

 これでも味付けは現代風にしてあって、見かけほど不味いものでもない。

「お祝い事の時は、まだいいの。不幸があった時は、ほんとに味が付いてないんだよね」

 こそっと頼子さんが言ってくれる。

「でもね、いっそう不幸な顔をしていられるから、そういう時にはピッタリなの」

 もちろん、夕べは頼子さんが正式に王女になったので目出度い方のジャガイモ尽くし。

 モグモグ ムシャムシャ ハムハム……

「あ、ひょっとしたら!!?」

 思わず叫んでしもて、みんなの注目を浴びてしまう!

 頼子さんはポーカーフェイスで、女王陛下は――思い出したぁ?――というお茶目な顔でうちの顔を見はる!

 留美ちゃんは俯いてるし、詩(ことは)ちゃんは顔いっぱいに?マークを浮かべてる!



 ああ、やっぱりこれやったあ(,,꒪꒫꒪,,)!



 エディンバラ以来馴染んだジャージに麦わら帽子を被って、ジャガイモの収穫をやってる。

 宮殿の庭にある60アール(プールの水面二枚分くらい)の畑でジャガイモの収穫。

 むろん、これもご先祖の御遺徳を偲ぶための王室行事。

 日本の皇室でも、天皇陛下は田植えと稲刈り、皇后陛下はお蚕のお世話をなさっています。

 女王陛下が若いころ来日して天皇陛下と、この農耕儀礼の話で盛り上がって、大いに発奮して規模を大きくしたんやとか。

頼子:「お父さん(亡くなった皇太子)は、この芋尽くしが嫌いでね、お祖母ちゃんに反発してて、芋畑の縮小を主張したんだけど、天皇陛下のお話を聞いて勇気百倍になって……ウンショ! 今の規模にしたの」

留美:「三年前は、外の御用畑だったですよね? ヨイショ」

さくら:「せや、ここの十倍はあったよねえ……ドッコイショ!」

詩:「十倍!?」

頼子:「お祖母ちゃんも歳だからね……ほら、エディンバラじゃ張り凝り過ぎてたでしょ」

 ミリタリータトゥーで、ニ十歳は若く見えるステップを踏んでたのを思い出す。

みんな:「ああーーーーー」

頼子:「でもね、それがきっかけで、お父さん、国を飛び出して世界中を放浪してお母さんに出会ったの」

詩:「ということは、この、ジャガイモ畑の一件が無かったら、頼子さん、生まれてない?」

頼子:「うん、人間万事塞翁が馬だよね」

さくら:「お祖父ちゃんが言うてた。悪事が善を善が悪事を呼ぶこともある。ことの良し悪しは分からんもんや」

詩:「だから、阿弥陀さんは人間全てを極楽に連れて行ってくださる!」

詩・さくら:「ナマンダブナマンダブ……」

頼子・留美:「アハハハ(^▽^)」

みんな:「ワハハハハハハ」

ソニー:「そこ、喋ってないで手を動かして!」

頼子:「うう、妹の方は容赦なさすぎぃ、ヨイショ!」



 ソフィーはメグさんやジョンスミスといっしょに、午後からの行事の為、すでに警備配置に就いてる。

 安倍さんの一件から、世界中でVIPの警備は厳しくなってる。

 世界に警鐘を鳴らした安倍さん、改めてナマンダブです。



 王立墓地は全体としては森の形をしていて、いかにも深淵な墓地の風格。

 中に入ると『の』の字型に渦を巻いてる。『の』の字の真ん中に初代ヤマセンブルグ辺境伯のお墓、その横にお妃、二代目、三代目と渦巻き状に続いて、一周したとこで周囲に木を植えて、それが連続して、いつしか『の』の字の形になったらしい。

 むろん、木々の間を抜けてショートカットすることも出来て、急いでるときや、お忍びのときは、ショートカット。

 出方は幾通りにも出来るわけで、警備はしやすいらしい。

頼子:「あ、もう用意してある!」

 ほとんど真ん中に来た時、皇太子のお父さんのお墓で頼子さんの足が停まる。

詩:「この区画?」

 お父さんのお墓の横の区画は、草が刈られ、境界の石も磨かれてた。

頼子:「わたしは、ここに葬られるんだねぇ……」

 なんとも、ヤマセンブルグは打つ手が早い(^_^;)



 その後、女王陛下もお出ましになって、先祖代々の王様に正式な王女になったことをご報告。

 それを後ろから見うと、うちらの頼子さんが、ちょっと手の届かんとこに行ってしまうみたいで、ちょっとウルウル。

 
 それからは、国立軍人墓地にまわって、五人の戦死者にお花を捧げました。

 むろん、国内はもとより世界中のマスコミやらユーチューバーやらが取り巻いて、正式な王女になったことと併せて、ニュースやら動画で世界中に流されました。

 それから、一日の猶予があって、うちらは残暑厳しい日本に帰ります。



「殿下、新しいパスポートをお持ちしました」



 軍服に身を固め、ビシッと敬礼しながらソフィーが真新しいパスポートをテーブルに置いたのは、その日のディナー。

「ありがとう、ソフィア少尉」

「では、失礼します」

 きれいな回れ右で退出するソフィー。

 わたしも、三年前よりかは賢くなって、これくらいのことは分かる。

 パスポートは、一日や二日ではでけへん。

 おそらくは、うちらが日本を飛び立つ前には決まってたことやねんわ。

 そろっと開かれたパスポートの発行は、その通り8月8日になってたよ。



 ※ エディンバラ・ヤマセンブルグ編は、ここでおしまい。また、月に五六回の不定期になりますけど、よろしくお願いいたします(^▽^)/   8月20日  酒井 さくら♡



☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー      ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー       ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか     さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 
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