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353『知ってしまったテイ兄ちゃん』
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せやさかい
353『知ってしまったテイ兄ちゃん』さくら
テイ兄ちゃんの元気がありません。
朝のお勤めの後も、檀家周りから帰って来ても、そのままボーっとしてることが多いです。
「分かっちゃったんだよ……」
「あのことやなあ……」
留美ちゃんと二人、可哀そうやと思いながらなにもできません。
堺東のスナック『はんぜい』のマスターが、密かにお嫁さんもらったことは前回言いましたよね。
それが、とうとうテイ兄ちゃんの知るところになってしもたんですわ。
マスターとテイ兄ちゃんは大学時代からの友だち。
その友だちが、自分よりも早く、それも、すごいベッピンのお嫁さんをもらった。
「それだけじゃないよ」
留美ちゃんは、もう一つ深く理解してる。
「内緒にされてたのがショックなんだよ」
「え?」
「ちゃんと、お式の連絡とかあって、結婚式にも出ていたら気持ちの収めようもあると思う」
「ああ……うん……せやなあ」
テイ兄ちゃんは、檀家周りの最中にマスター夫婦を見かけたらしい。
彼女いない歴=年齢というテイ兄ちゃんはビビッときた。
―― あれは嫁はんや ――
坊主というのは、檀家さんとの付き合いやら、お葬式、法事なんかで人の内側を覗くことが多くて、自然に勘が良くなる。それに、自分自身もうちょっとで三十代。蜂蜜に飢えたプーさんみたいで敏感になっとうる。
「それに、寺の嫁は大変やさかいなあ……」
いつの間にか、お祖父ちゃんがうちらの向かいのソファーに座ってる。
「せやねえ」
お寺の世界では、住職のお嫁さんを『お大黒さん』とか『坊守(ぼうもり)』とかいう。
お寺は、檀家さんとの付き合いだけやなくて、本山との関係とか報恩講とかから落語会まで、いろんな付き合いやらイベントがある。そういうことの切り盛りしながら、主婦として家の事も並みの三倍以上はある。じっさい、お寺の敷地は300坪もあって、掃除するだけでも大変。
「ねえ、お祖父ちゃん……あれ?」
振り返ったら、もうおらへん。
「今日はゲートボールだよ」
「あ、そうか」
お祖父ちゃんは、このごろ婦人部長の田中のお婆ちゃんの勧めでゲートボールを始めた。
そんな年寄じみた事と言いながら、この頃はチームの役まで引き受けて積極的にやってるらしい。
「いっそ、どっちかがお嫁さんになってあげたら(^▽^)」
「「え!?」」
すごい台詞にビックリしたら、詩(コトハ)ちゃんが、お祖父ちゃんが座ってたとこに居てる。
「あんたたちだったら、お寺の事も兄貴のことも良く知ってるしさ……パリ」
そう言いながら、小気味よく煎餅を噛み砕く詩ちゃん。
「うちは従妹やしい」
「従兄妹同士は結婚できるんだよ」
「ちょっとありえへん」
「あはは、冗談だから、そんなマジな顔しないでよ。あ、もう時間だ!」
詩ちゃん、よく見たら学校行くときの服装。
「え、日曜やのに学校?」
「ちょっとね、進路のことでね、日曜も無駄にできない感じなの。じゃね」
カーディガンとリュックを持つと、秋やのに春風みたいに玄関に向かう詩ちゃん。
リビングからはサッシのガラス越し、生け垣の隙間から境内が見通せる。
パンプスの音も軽やかに山門を出ていく詩ちゃんは、もう大人の貫録。
「詩ちゃんて、あんなにお尻振って歩いてたかなあ……」
「もう、オッサンみたいなこと言わないでよ。さ、朝のうちに宿題やるよ」
「え、宿題って、あったっけ?」
「文化祭のアンケートよ、ペコちゃん先生、月曜には決めるって言ってたじゃない」
「あ、せやったせやった(^_^;)。ちょっと、もうどきなさい!」
フニャーー
膝の上のブタネコダミアを床に下ろすと、ドスドスと二階の部屋に戻る日曜のさくらと留美ちゃんでした。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
353『知ってしまったテイ兄ちゃん』さくら
テイ兄ちゃんの元気がありません。
朝のお勤めの後も、檀家周りから帰って来ても、そのままボーっとしてることが多いです。
「分かっちゃったんだよ……」
「あのことやなあ……」
留美ちゃんと二人、可哀そうやと思いながらなにもできません。
堺東のスナック『はんぜい』のマスターが、密かにお嫁さんもらったことは前回言いましたよね。
それが、とうとうテイ兄ちゃんの知るところになってしもたんですわ。
マスターとテイ兄ちゃんは大学時代からの友だち。
その友だちが、自分よりも早く、それも、すごいベッピンのお嫁さんをもらった。
「それだけじゃないよ」
留美ちゃんは、もう一つ深く理解してる。
「内緒にされてたのがショックなんだよ」
「え?」
「ちゃんと、お式の連絡とかあって、結婚式にも出ていたら気持ちの収めようもあると思う」
「ああ……うん……せやなあ」
テイ兄ちゃんは、檀家周りの最中にマスター夫婦を見かけたらしい。
彼女いない歴=年齢というテイ兄ちゃんはビビッときた。
―― あれは嫁はんや ――
坊主というのは、檀家さんとの付き合いやら、お葬式、法事なんかで人の内側を覗くことが多くて、自然に勘が良くなる。それに、自分自身もうちょっとで三十代。蜂蜜に飢えたプーさんみたいで敏感になっとうる。
「それに、寺の嫁は大変やさかいなあ……」
いつの間にか、お祖父ちゃんがうちらの向かいのソファーに座ってる。
「せやねえ」
お寺の世界では、住職のお嫁さんを『お大黒さん』とか『坊守(ぼうもり)』とかいう。
お寺は、檀家さんとの付き合いだけやなくて、本山との関係とか報恩講とかから落語会まで、いろんな付き合いやらイベントがある。そういうことの切り盛りしながら、主婦として家の事も並みの三倍以上はある。じっさい、お寺の敷地は300坪もあって、掃除するだけでも大変。
「ねえ、お祖父ちゃん……あれ?」
振り返ったら、もうおらへん。
「今日はゲートボールだよ」
「あ、そうか」
お祖父ちゃんは、このごろ婦人部長の田中のお婆ちゃんの勧めでゲートボールを始めた。
そんな年寄じみた事と言いながら、この頃はチームの役まで引き受けて積極的にやってるらしい。
「いっそ、どっちかがお嫁さんになってあげたら(^▽^)」
「「え!?」」
すごい台詞にビックリしたら、詩(コトハ)ちゃんが、お祖父ちゃんが座ってたとこに居てる。
「あんたたちだったら、お寺の事も兄貴のことも良く知ってるしさ……パリ」
そう言いながら、小気味よく煎餅を噛み砕く詩ちゃん。
「うちは従妹やしい」
「従兄妹同士は結婚できるんだよ」
「ちょっとありえへん」
「あはは、冗談だから、そんなマジな顔しないでよ。あ、もう時間だ!」
詩ちゃん、よく見たら学校行くときの服装。
「え、日曜やのに学校?」
「ちょっとね、進路のことでね、日曜も無駄にできない感じなの。じゃね」
カーディガンとリュックを持つと、秋やのに春風みたいに玄関に向かう詩ちゃん。
リビングからはサッシのガラス越し、生け垣の隙間から境内が見通せる。
パンプスの音も軽やかに山門を出ていく詩ちゃんは、もう大人の貫録。
「詩ちゃんて、あんなにお尻振って歩いてたかなあ……」
「もう、オッサンみたいなこと言わないでよ。さ、朝のうちに宿題やるよ」
「え、宿題って、あったっけ?」
「文化祭のアンケートよ、ペコちゃん先生、月曜には決めるって言ってたじゃない」
「あ、せやったせやった(^_^;)。ちょっと、もうどきなさい!」
フニャーー
膝の上のブタネコダミアを床に下ろすと、ドスドスと二階の部屋に戻る日曜のさくらと留美ちゃんでした。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
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