せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

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375『ショック!』

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せやさかい

375『ショック!』さくら    




 ちょっとショック!


 夜回りのコースの下見を終わって帰ってみると、山門入ったとこでテイ兄ちゃんに呼び止められた。

「未成年の夜回りはやんぺになるかもや」

「え、なんで!?」

「夕べ、よその町内で夜回り中に事故があって二人亡くなってなあ、それでやと思う。今から町会長さんと市役所に事情聞きに行くとこやねんけどな」

 そこまで言うと、テイ兄ちゃんは町会長さんを車に乗せて市役所に走って行った。

「さくらぁ」

 留美ちゃんがビッコ曳きながらこっちに来る。

「あ、うちの方が行くよって!」

 留美ちゃんは本堂の大掃除で足をグネってしもてるんや。

「やっぱり中止って言ってた?」

「うん、いま、町会長さんと市役所行きやったとこ」

「だったら、まだ決まったわけじゃないんだね?」

 留美ちゃんはええ子や。

 足グネて、自分は行かれんくなってしもたけど、みんな楽しみにしてるのん知ってるから、自分の事のように心配してるんや。

「うん、テイ兄ちゃん帰ってこんと分からへんと思う」



 コンコン



 リビングのガラスが鳴って、振り返るとお祖父ちゃんが右手でオイデオイデして、左手でメモをガラスに貼り付けてる。

―― 善哉食べにおいで ――

「「わ、善哉!」」

 脊髄反射で玄関に向かう。

「ちょ、さくら!」

「あ、ごめんごめん(^_^;)」

 留美ちゃんに肩を貸してキッチンへ。

「本堂の方に出そうと思ったんだけど、ちょっとごたついてるから、お祖父ちゃんと先に食べて」

 伯母ちゃんがお椀によそってくれる。

 ドン

 伯母ちゃんが乱暴なんとちゃうんです。丼鉢みたいなお椀にドッチャリ入ってるんで、テーブルに置いただけで充実した音がするんです(^〇^;)。

 お寺で言う小餅、世間的には中餅が二個も入って、塩こんぶまで付いて、もう世間の憂さなんか飛んでしまいそう!

「諦一が町会長と行きよったんは、みんなの顔たてるための……優しさや」

「……いま、方便て言いそうになりました?」

 留美ちゃんは鋭い。

「まあ、あけすけに言うたらな。役所の方でも『慎重にやってください』くらいの言い回しやねんやろけどな。まあ、町会の判断いうことになるねんやろなあ」

 ずっこい!……中学生やったら、そない思たやろね。

「頼子さん、楽しみにしてたのにね」

 せや、頼子さんは日本で最後の冬休みやったんや……。

「頼ちゃんは、警護のこともあるやろから、もう連絡してあげた方がええかもしれんで」

「せやねえ……」



 うちは、ポケットからスマホを取り出して頼子さんの番号をクリックした。



『ちょっと、さくら!』

 ワンコールで出た頼子さんは、もう機嫌が悪い。

「ちょ、怒らんと聞いてくださいよ(;'∀')」

『あ、ごめん』

「…………というわけで、中止みたいなんですわ」

『ああ…………そうだったんだ。うちは、ソフィーがさ「領事からお控えくださいと要請されました」って、それだけなんだもん。そうか、そういう事情だったんだね』

「正式に決まったら、また電話しますから」

『あ、うん、待ってるね……ひょっとして、さくら、お善哉とか食べてるぅ?』

「え、なんで分かったんですか!?」

 いっしゅん、ソフィーかソニーに隠しカメラを仕掛けられたかと思た!

『いや、匂いがね』

 え、こないだアップグレードしたかと思たら匂いを送る機能が付いたか!?

『え、そっちもリアルお善哉?』

―― 殿下、冷めないうちに召し上がってください ――

 ソフィーの声がしてる。

「なんや、そっちもお善哉やったんですかぁ!」

『アハハ、偶然の一致だね。そうだ、お善哉の見せあいっこしようよ、写真送って! こっちも送るから!』

「ラジャー(^^ゞ!」



 一度電話を切って、まだ手を付けていない留美ちゃんのを撮って送る。

 同時に、向こうの写真も着信。

―― そっちの方が大きい! そっちの食べたいぞ! ――

 子どもみたいなメールも来る。

 分かってんねん、こうやって子どもっぽくすることで、お互いに残念なことを吹き飛ばそうという心遣い。

 頼子さんが日本に居てるのは、あと二か月あるかどうか。

 楽しい思い出作ってあげなら……さ、とりあえずは食べよ。

「え、お餅無い(⊙▃⊙)!」

「え、電話する前に食べたじゃない」

「え、ウソお!?」

 あたしのんは、ホンマのボケです(-_-;)。

 ワハハハハハハハ!

 お祖父ちゃんが、入れ歯が飛び出しそうなくらい笑って、お餅を一個分けてくれました。



 そのあと、テイ兄ちゃんが帰ってきて、正式に未成年の夜回り中止を宣言。



 せやけど、とっても、むっちゃステキな提案もしてくれて、みんなへのメールも楽しく送れたぜ(≧∇≦)!




☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか      さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 
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