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400『灌仏会 二つのヘルメット』
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せやさかい
400『灌仏会 二つのヘルメット』さくら
三年ぶりの灌仏会、お花まつりは盛況やった。
うちの如来寺は、都会のお寺としては広くて檀家さんの数も多い方。
せやけど、檀家さんのほとんどはお年寄り。
お年寄りのほとんどはお婆ちゃん。
大方が昭和も戦前のお生まれで、数人は大正生まれいう人も居てる。いえ、居てはります。
「さくらちゃん、セブンチーンやなあ(^▽^)!」
歳に似合わん真っ白な歯ぁを剥きだして、田中のお祖母ちゃんが喜んでくれる。
「早いなあ、さくらちゃん来て、もう十年かあ」
早川のお婆ちゃんがスカタンを言う。
「やあ、まだやっと五年目ですよぉ」
「せやがな、歌ちゃんと戻って来て、すぐ中学やったもんなあ。ポニーテールをキリっと結い上げて、なんかタカミナみたいで、かいらしかった(^〇^)」
「タカミナてなに?」
「AKBの総監督やってた子ぉやがな」
「ああ、なんちゃら48の!」
「AKB48やがな」
「AKB、あっかんべーか?」
「アキバぁ、秋葉原のこっちゃ。東京にある日本橋みたいなとこに専用のシアター持ってがんばってるアイドルグループやがな。会いに行けるアイドルちゅうてやな、乃木坂とか日向坂やらHKTとか、大阪にもNMB48とかあんねんで」
「よねちゃん、物知りぃ」
「お婆ちゃん、すごいよ」
留美ちゃんと感心する。
「アハハ、死んだ亭主が好きでなあ、タカミナの卒業までは生きてる言うて、贔屓にしとった」
「え、サダオちゃんが!?」
「はいな、タカミナの前に自分が人生卒業してしまいよって、アハハハ」
「せやったんかいな」
アハハハハハハハハハハハハハハ((´∀`))
田中のお婆ちゃんの話に、本堂の外陣はホコホコと温もって、みんなでお釈迦さんのお像に甘茶をかける。
留美ちゃんは、自分から喋ることはせえへんけど、ニコニコとよう話を聞いたげてる。
「いやあ、ほんとうにええ空気ですねえ、如来寺は!」
ちょっと感激して声あげたのは、ハンゼイのマスター。
マスターは、うちとこに預けてた瑞穂さんのお骨をとりにきて、そのままお花まつりに参加してる。
瑞穂さんの骨箱はテイ兄ちゃんの発案でご本尊の前に置いてある。
骨箱には『釋瑞穂』と法名を記した紙が貼ってある。
釋はお釈迦さんのお弟子という意味で、浄土真宗の法名共通の文字。
瑞穂は『ずいすい』と音読みにする。言うまでもなく俗名の瑞穂を音読みにしたもの。
テイ兄ちゃんとマスターの友情が偲ばれて、ええ法名やと思う。
従兄妹としては、ちょっとスケベエでオタクで軽すぎる感じやけど、マスターにはええ友人。お婆ちゃんらには、ええゴエンサンや。本人には言わへんけど。言うたら、ぜったい図に乗るしね(^△^;)。
「実は、これをね……」
そう言いながら、リュックからプチプチの袋に入ったのを二つ取り出した。
「なんですか。マスター?」
「ヘルメットやねんけどなあ……」
プチプチ袋から出したのは、二個のヘルメット。
一個はピンクでエメラルドグリーンの縁がついてるオシャレなやつ。
もう一個は、ウクライナで兵隊さんが被ってそうなオリーブグリーン。
「男用と女用かいな?」
お婆ちゃんらも覗き込む。
「いえ、両方とも瑞穂用のんです。言うても、一回も使わずじまいなんですけど」
「せやけど、男女のオソロに見えますけど」
「四月から自転車のヘルメットが努力義務になりましたででしょ」
ああ………
本堂に居てるみんなが納得の声を上げる。
「けど、なんで二つなんですか?」
「それは…………」
そこまで言うと、マスターは俯いたまま嗚咽し始めた。
「それはやなあ」
いつの間にかテイ兄ちゃんがやってきて、マスターの横に腰を下ろした。
「病気がようなったら、いっしょに自転車でごりょうさんの周り走ろいうて昴(あきら)が用意しとったもんや」
あ………
「ワイルドなんとオシャレなんと二つ用意したんやけど、決める前に逝ってしもたさかい、今日持ってきてくれたんや」
「瑞穂は、さくらちゃんや留美ちゃんみたいに仲よう自転車乗るのん楽しみにしとったさかい、これ、二人に使ってもろたら嬉しいんです」
「せやったんですか……」
「すんません、めでたいお花まつりに湿っぽい話で」
「ううん、これも仏さんの御縁やし」
「うん、タカミナのポニーテールや」
「「「「ナマンダブナマンダブ…………」」」」
お婆ちゃんらのナマンダブで締めくくり。
それで、日曜の9日を挟んで月曜の10日から、瑞穂さんのヘルメットを被って通学してます。
うちがオリーブグリーン、留美ちゃんがピンク。
で、並んで走って発見した。
留美ちゃん、意外にピンクが似合う。
けど言わへん。言うたら、この恥ずかしがり屋は二度と被らんようになるさかいね。
それから、この『せやさかい』も数えて400回。
ま、せやさかい、これからもよろしくお願いいたします(⋆ᵕᴗᵕ⋆)。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
400『灌仏会 二つのヘルメット』さくら
三年ぶりの灌仏会、お花まつりは盛況やった。
うちの如来寺は、都会のお寺としては広くて檀家さんの数も多い方。
せやけど、檀家さんのほとんどはお年寄り。
お年寄りのほとんどはお婆ちゃん。
大方が昭和も戦前のお生まれで、数人は大正生まれいう人も居てる。いえ、居てはります。
「さくらちゃん、セブンチーンやなあ(^▽^)!」
歳に似合わん真っ白な歯ぁを剥きだして、田中のお祖母ちゃんが喜んでくれる。
「早いなあ、さくらちゃん来て、もう十年かあ」
早川のお婆ちゃんがスカタンを言う。
「やあ、まだやっと五年目ですよぉ」
「せやがな、歌ちゃんと戻って来て、すぐ中学やったもんなあ。ポニーテールをキリっと結い上げて、なんかタカミナみたいで、かいらしかった(^〇^)」
「タカミナてなに?」
「AKBの総監督やってた子ぉやがな」
「ああ、なんちゃら48の!」
「AKB48やがな」
「AKB、あっかんべーか?」
「アキバぁ、秋葉原のこっちゃ。東京にある日本橋みたいなとこに専用のシアター持ってがんばってるアイドルグループやがな。会いに行けるアイドルちゅうてやな、乃木坂とか日向坂やらHKTとか、大阪にもNMB48とかあんねんで」
「よねちゃん、物知りぃ」
「お婆ちゃん、すごいよ」
留美ちゃんと感心する。
「アハハ、死んだ亭主が好きでなあ、タカミナの卒業までは生きてる言うて、贔屓にしとった」
「え、サダオちゃんが!?」
「はいな、タカミナの前に自分が人生卒業してしまいよって、アハハハ」
「せやったんかいな」
アハハハハハハハハハハハハハハ((´∀`))
田中のお婆ちゃんの話に、本堂の外陣はホコホコと温もって、みんなでお釈迦さんのお像に甘茶をかける。
留美ちゃんは、自分から喋ることはせえへんけど、ニコニコとよう話を聞いたげてる。
「いやあ、ほんとうにええ空気ですねえ、如来寺は!」
ちょっと感激して声あげたのは、ハンゼイのマスター。
マスターは、うちとこに預けてた瑞穂さんのお骨をとりにきて、そのままお花まつりに参加してる。
瑞穂さんの骨箱はテイ兄ちゃんの発案でご本尊の前に置いてある。
骨箱には『釋瑞穂』と法名を記した紙が貼ってある。
釋はお釈迦さんのお弟子という意味で、浄土真宗の法名共通の文字。
瑞穂は『ずいすい』と音読みにする。言うまでもなく俗名の瑞穂を音読みにしたもの。
テイ兄ちゃんとマスターの友情が偲ばれて、ええ法名やと思う。
従兄妹としては、ちょっとスケベエでオタクで軽すぎる感じやけど、マスターにはええ友人。お婆ちゃんらには、ええゴエンサンや。本人には言わへんけど。言うたら、ぜったい図に乗るしね(^△^;)。
「実は、これをね……」
そう言いながら、リュックからプチプチの袋に入ったのを二つ取り出した。
「なんですか。マスター?」
「ヘルメットやねんけどなあ……」
プチプチ袋から出したのは、二個のヘルメット。
一個はピンクでエメラルドグリーンの縁がついてるオシャレなやつ。
もう一個は、ウクライナで兵隊さんが被ってそうなオリーブグリーン。
「男用と女用かいな?」
お婆ちゃんらも覗き込む。
「いえ、両方とも瑞穂用のんです。言うても、一回も使わずじまいなんですけど」
「せやけど、男女のオソロに見えますけど」
「四月から自転車のヘルメットが努力義務になりましたででしょ」
ああ………
本堂に居てるみんなが納得の声を上げる。
「けど、なんで二つなんですか?」
「それは…………」
そこまで言うと、マスターは俯いたまま嗚咽し始めた。
「それはやなあ」
いつの間にかテイ兄ちゃんがやってきて、マスターの横に腰を下ろした。
「病気がようなったら、いっしょに自転車でごりょうさんの周り走ろいうて昴(あきら)が用意しとったもんや」
あ………
「ワイルドなんとオシャレなんと二つ用意したんやけど、決める前に逝ってしもたさかい、今日持ってきてくれたんや」
「瑞穂は、さくらちゃんや留美ちゃんみたいに仲よう自転車乗るのん楽しみにしとったさかい、これ、二人に使ってもろたら嬉しいんです」
「せやったんですか……」
「すんません、めでたいお花まつりに湿っぽい話で」
「ううん、これも仏さんの御縁やし」
「うん、タカミナのポニーテールや」
「「「「ナマンダブナマンダブ…………」」」」
お婆ちゃんらのナマンダブで締めくくり。
それで、日曜の9日を挟んで月曜の10日から、瑞穂さんのヘルメットを被って通学してます。
うちがオリーブグリーン、留美ちゃんがピンク。
で、並んで走って発見した。
留美ちゃん、意外にピンクが似合う。
けど言わへん。言うたら、この恥ずかしがり屋は二度と被らんようになるさかいね。
それから、この『せやさかい』も数えて400回。
ま、せやさかい、これからもよろしくお願いいたします(⋆ᵕᴗᵕ⋆)。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
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