せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

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411『バンとナンシー』

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せやさかい

411『バンとナンシー』詩(ことは)   




 ついつい出てしまう言葉ってあるよね。


 はにゃ?  アセアセ  さーせぇん  草  ビエーン  こみこみで  知らんけど  まるっと


 大学の構内では今風の言葉が溢れてる。

 言葉って、同族意識の現われ。

 ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく

 石川啄木の歌なんか身に染みてよく分かる。

 同じ言葉を聞いて、同じ言葉を使っていると安心、とりあえず人との距離が近くなる。

 あまり、流行りの言葉って使わない方だけど、気が付いたら「ブルータス、わたしもか!?」って感じで口にしたり、メールで使ったりしてる。

 お母さんが東京の出身なんで、生まれも育ちも堺なのに標準語っぽい言葉になってる。お母さんの親類に言わせると「詩(ことは)ちゃんのは関西訛の東京弁」だそう。

 わたしには、人が使わない口癖がある。

 

 ナマンダブ



 きちんと書くと南無阿弥陀仏。

 家がお寺なので、このナマンダブは日に数十回は聞く。

 ひょっとして、生まれて初めて聞いた言葉なのかもしれない。

 兄の時とはちがって難産だったので、お父さんが立ち会ったらしい。

 お坊さんというのは、嬉しいにつけ悲しいにつけ「ナマンダブ」が口を突いて出る。

 お父さんは、生まれたばかりのわたしに思わず手を合わせて「ナマンダブ」って、お母さんが言ってた。

 病院から家に帰ると、檀家の総代さんや婦人部長さんなんかも来ていて、ベビーベッドのわたしに盛大に「ナマンダブ」を投げかけた。

 さすがに、口に出して言うことは、めったにない。



「ううん、言ってるわよ」



「え、ほんと!?」

「言葉に出さずに、口の形。時どきはほんとに言ってる」

 窓辺の花を替えながらお母さんが楽しそうに言う。

「ここのお花は使い放題で、嬉しくなっちゃう」

「ああ、でもほどほどにね(^_^;)」

 三日前から宮殿に戻っている。

 やることは、少しずつのリハビリなので、病院でなくてもいいということで、女王陛下が手配してくださった。

 宮殿の庭はビックリするほど広くって、敷地面積は大仙公園と変わらないくらい。

 敷地の手入れや警備には日本の軽トラックやバンが使われている。

 お母さんは、その広大な庭から花を摘んできては、部屋中に活けている。

 日本の病院だと、こんなには活けさせてはもらえない。

「ちょっと花瓶を借りてくるわね」

「あ、ほどほどにねぇ……」



 お母さんが出ていくと枕もとに現れる。



『『おはよう、コトハ』』

 聖真理愛の制服を着た二人の妖精。

「おはよう、板についてきたわね」

『『うれしい!』』

 クルンと回って体育座り。

 一度はシルエットのまま消えてしまった。

 でも、わたしが呪文を唱えたので戻ってこれたと言う。

 呪文なんか唱えたつもりは無いんだけど、二人の妖精は、そう言って涙ぐんでいた。

『魔石が目ざめめたときは、もうダメだとおもったよ』

『森の奥、ピューって引きもどされるところだった……』

『光があらわれて、もどしてくれた……』

『もう、なんの力もないけれど、傍にいるだけでいいのならいいって、光がいった』

『ほんとうに居てもいい、コトハ?』

「うん、いいよ。いつも相手してあげられるわけじゃないけど、そばに居るだけならね」

『『うんうん』』

「ウフフ」

『コトハ笑った!』

『うれしい!』

『うれしい!』

 ピョンピョン

「制服のままバク転しちゃダメだよ(^_^;)」

『ダメなの?』

『うれしいから、ピョン! ピョン!』

 パンツ見えちゃう……けどいいか、フィギュアみたいにちっこいし。



 こうやって小さなともだちが増えた。

 バンシーとリャナンシー。

 微妙に言いにくい、ちょっと縮めよう。



 バンとリャン……なんだか麻雀みたい。

 ……バンはそのままで……リャナンシーは……ナンシー。

 決まった、これで行こう。

 

☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバン(バンシー)ナンシー(リャナンシー)が友だち
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
  

 
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