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072『大晦日の奇跡』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
072『大晦日の奇跡』
嫌々待っても同じなので家の前を掃除する。
家の前は少しだけ世界が広い。
道路を挟んで寿川があるから、そのぶん空間が広いんだ。川の向こう側を合わせると15メートルほど。15メートルというのは学校のプールの横幅と同じ。その少し広い空間に身を置いていると、家の中に居るよりも健康的。
それに、掃除をしているとアグレッシブになれる。体を動かすから、それだけで元気になれる。
元気になれば、クソババアが来てもポテンシャルが高くて耐性が高くなる。
まあ、女子高生のチンケな耐性なんか、あのリベラルモンスターの前じゃ知れたものなんだけど、家の中でモンモンとしてるよりはマシ。
宅配の車が二台通って、今度も宅配かと思ったらタクシー。
で、タクシーから出てきたのが……クソババア……なんだけど、ちょっと様子が変。
「おや、メグリ、すっかり娘さんらしくなったじゃないのぉ(^□^)」
品よく口元を綻ばせて、お世辞なんだろうけど、わたしを褒めたよ。
記憶の中にあるクソババアは、いつも上から見下ろして――フン――と鼻であしらう感じ。機嫌のいい時でも「オッス」とか「ヨ」とかしか言わなかった。
それに、取り巻きが一人もいない。
いつもは、マスコミとか党関係者とかがくっ付いていていた、それがたった一人でやってきた。クソババアが家にやって来るのは、お祖母ちゃんを興奮させて、発散させた魔法少女オーラを自分にも取り巻きにも浴びさせるためだからね。
「ひ、一人なの?」
「うん、おねえちゃん居るよね?」
「え、あ、うん。お祖母ちゃーーん!」
子どもみたいに箒を持ったまま玄関開けてお祖母ちゃんを呼ばわった。
大人しめのコートを脱いだクソババアはいつもの白の立襟スーツじゃなかった。コートと同じくらい大人しい、でもセンスのいいセーターだ。
お祖母ちゃんは、わたしみたいに驚いたりはしない。
微妙に不機嫌だけど「そう、やっぱり行くのね」「水が変わるから気を付けてね」とか変なこと言ってる。
「どうぞ、ごゆっくり」
いちおう社交辞令100%のお愛想を言ってお茶を出す。
「今川焼買ってきたの、メグリもいっしょに食べようよ」
断るのも無用に角が立つので斜め横に腰掛ける。
「で、出発は?」
「四日の朝、それまでは新年のあいさつ兼ねてあちこち」
「そう、でも、よく決心したわねえ」
「うん、台湾に支店を置くなら今しかないって、旦那も言うし。あの人の事業の集大成でもあるし」
「社名は?」
「そのままよ、あ、これ、あっちで使う名詞」
クソババアがテーブルに置いた名刺には『加藤物産公司 副社長 加藤徒』とプリントしてある。
え、ずっと独身だったから時司徒のはずなのに。
「ちょっとね、歴史が変わったのよ」
冷めた今川焼をレンジにかけながらお祖母ちゃん。
「歴史が?」
「うん……」
少しの間沈黙して、もう一枚名刺を出すお祖母ちゃん。
「加藤物産公司 社長 加藤高明……え?」
「あとはネットで検索してごらん」
チン!
先にお食べと言われ、温め直した今川焼を持って自分の部屋へ。
パソコンで『加藤貿易』をググってみる。
1990年創設、資本金1000万円。
社長・加藤高明
そして、社長の写真は、ちょっと老けてはいるけども。
クリスマスイブの集いで、嫌がらせにインターナショナルを合唱していた三年生をブチノメシてきた10円男そのものだった( ゚Д゚)!
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
072『大晦日の奇跡』
嫌々待っても同じなので家の前を掃除する。
家の前は少しだけ世界が広い。
道路を挟んで寿川があるから、そのぶん空間が広いんだ。川の向こう側を合わせると15メートルほど。15メートルというのは学校のプールの横幅と同じ。その少し広い空間に身を置いていると、家の中に居るよりも健康的。
それに、掃除をしているとアグレッシブになれる。体を動かすから、それだけで元気になれる。
元気になれば、クソババアが来てもポテンシャルが高くて耐性が高くなる。
まあ、女子高生のチンケな耐性なんか、あのリベラルモンスターの前じゃ知れたものなんだけど、家の中でモンモンとしてるよりはマシ。
宅配の車が二台通って、今度も宅配かと思ったらタクシー。
で、タクシーから出てきたのが……クソババア……なんだけど、ちょっと様子が変。
「おや、メグリ、すっかり娘さんらしくなったじゃないのぉ(^□^)」
品よく口元を綻ばせて、お世辞なんだろうけど、わたしを褒めたよ。
記憶の中にあるクソババアは、いつも上から見下ろして――フン――と鼻であしらう感じ。機嫌のいい時でも「オッス」とか「ヨ」とかしか言わなかった。
それに、取り巻きが一人もいない。
いつもは、マスコミとか党関係者とかがくっ付いていていた、それがたった一人でやってきた。クソババアが家にやって来るのは、お祖母ちゃんを興奮させて、発散させた魔法少女オーラを自分にも取り巻きにも浴びさせるためだからね。
「ひ、一人なの?」
「うん、おねえちゃん居るよね?」
「え、あ、うん。お祖母ちゃーーん!」
子どもみたいに箒を持ったまま玄関開けてお祖母ちゃんを呼ばわった。
大人しめのコートを脱いだクソババアはいつもの白の立襟スーツじゃなかった。コートと同じくらい大人しい、でもセンスのいいセーターだ。
お祖母ちゃんは、わたしみたいに驚いたりはしない。
微妙に不機嫌だけど「そう、やっぱり行くのね」「水が変わるから気を付けてね」とか変なこと言ってる。
「どうぞ、ごゆっくり」
いちおう社交辞令100%のお愛想を言ってお茶を出す。
「今川焼買ってきたの、メグリもいっしょに食べようよ」
断るのも無用に角が立つので斜め横に腰掛ける。
「で、出発は?」
「四日の朝、それまでは新年のあいさつ兼ねてあちこち」
「そう、でも、よく決心したわねえ」
「うん、台湾に支店を置くなら今しかないって、旦那も言うし。あの人の事業の集大成でもあるし」
「社名は?」
「そのままよ、あ、これ、あっちで使う名詞」
クソババアがテーブルに置いた名刺には『加藤物産公司 副社長 加藤徒』とプリントしてある。
え、ずっと独身だったから時司徒のはずなのに。
「ちょっとね、歴史が変わったのよ」
冷めた今川焼をレンジにかけながらお祖母ちゃん。
「歴史が?」
「うん……」
少しの間沈黙して、もう一枚名刺を出すお祖母ちゃん。
「加藤物産公司 社長 加藤高明……え?」
「あとはネットで検索してごらん」
チン!
先にお食べと言われ、温め直した今川焼を持って自分の部屋へ。
パソコンで『加藤貿易』をググってみる。
1990年創設、資本金1000万円。
社長・加藤高明
そして、社長の写真は、ちょっと老けてはいるけども。
クリスマスイブの集いで、嫌がらせにインターナショナルを合唱していた三年生をブチノメシてきた10円男そのものだった( ゚Д゚)!
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高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
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加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
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