巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

武者走走九郎or大橋むつお

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108『笹に魔法をかける』

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

108『笹に魔法をかける』   




 型落ち魔法少女、時司応(とこつかさこたえ)の孫で、自分自身も型落ち魔法少女であるわたしは、一日に一度だけ魔法が使える。

 お母さんは魔法とかに興味が無くって、素養もなかったのでアメリカで火星ロケットに乗るための訓練を受けている。

 わたしは隔世遺伝で魔法少女の素養はあるんだけど、ろくに訓練もしていないし、お祖母ちゃんのようにガチの魔法少女にはならない。

 まあ、毎日令和から昭和の学校に通っているんで、万一のために能力を維持してるんだ。

 でも、魔法を使ったのはいままでに数えるほど。

 普通に女子高生やっていたら、令和でも昭和でも、そうそう魔法のお世話になることは無い。

 でもね、昨日からは、登校するなり昇降口に行く前に魔法を使う。

「テクマクマヤコン テクマクマヤコン……」

 パクリの呪文を唱えて、小さく印を結び「えい!」と、これまた小さく気合いを入れて本館玄関前の植え込みに気を注ぎ込む。

 シューーー

 水道が流れるような音がして、地面にぶっ刺しただけの三本の笹が目に見えて元気になる。

 一昨日、佳奈子のお母さんがトラックで笹を運んできてくれて、その世話係を引き受けた。

「まあ、地面にぶっさしときゃ少しはマシかなあ……」

 佳奈子のお母さんは微妙に首をかしげるので「いえ、青々としたまま七夕を迎えさせてやります!」と胸を叩いたしね。

 昨日は「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前、エエイ!」とカマシてやったら守衛のオジサンが腰を抜かしたんで「テクマクマヤコン」に切り替えた。

 要はなんでもいい、テンション上げて勢いが付かなければ効き目が薄いから。お祖母ちゃんほどのベテランになれば、思っただけで効き目があるらしい。

「ごめーーん、遅くなっちゃったぁ(^_^;)!」

 真知子を先頭に、いつものメンバーがやってくる。

「ううん、一本早い電車に乗っちゃったからぁ、とりあえず笹に挨拶(^_^;)」

 魔法を使っていたとも言えず適当に言っとく。

「とりあえず、昨日までに集まった分」

 たみ子が紙袋から短冊の束を出す。

「いちおうチェックしたけど、みんな問題ないみたいよ」

「ここまでしなくてもいいと思うんですけどねえ」

 ロコは、ちょっと不満そうにしながらも、率先して笹に短冊をつけていく。

 まだ学園紛争の空気が大気中の二酸化炭素ほどには残っているので、事前に書かれていることをチェックしておくと言うのが生徒会顧問の倉田先生から出された条件。

 それで、色紙は応募箱に入れてもらって、チェックしてから笹にかけることにしたんだ。

 平和でありますように  推薦入試に受かりますように  八頭身になりたい!  二度寝せずに起きられますように   素敵な恋人ができますように  自分の部屋が持てますように  この世からピーマンが無くなりますように  
半年だけ一日25時間になりますように  今からでも部員が増えますように  マクドナルドのハンバーガー食べられますように  

「最後のやつはロコだね?」

「ええ、ちがいますよ、自分のはこれです」

「どれどれ(._.)」

 ケンタッキーフライドチキンも食べられますように!

 アハハハハ((´∀`*))

 みんなで笑っているといつの間にか倉田先生が覗いている。

「しかし、ほとんどのが『~しますように』の形に収めてるなあ。指定したのか?」

「あ、指定したわけじゃないんですけど」

「サンプルが『七夕の夜が晴れますように』なんです」

「そうか、サンプルに引っ張られたか」

「幼稚園では『~しますように』ってやってましたから、習い性じゃないですか?」

「三つ子の魂だな……わが国の国語教育が反映されているというわけだなあ……いや、勉強になった」

 なんだかシミジミしながら先生は行ってしまった。

「先生、それとなくチェックしにきたんだねえ」

 けして深そうにではなく真知子が呟く。

「うん、こういうのを生徒と教師のいい関係って言うんだろうねぇ」

「こんな感じでやっていけるといいねえ」

「ところで、みなさん!」

 え?

 振り返ると、ロコが腰に手を当て、反対の左手の指を立てている。

 名探偵コナン!

 冷やかしてやろうと思ったけど、この時代アニメのコナンはおろか、マンガの連載も始まっていないだろうから、やめる。

「20日に銀座にマクドナルドの一号店が開店します!」

「あ、行きたーい!」

「歩行者天国もやってるのよねえ!」

「部活があるから、お土産に買って来てぇ!」

 みんなテンションが高い。

「あれ、グッチはどうなんですか?」

「反応薄いわねえ」

「え、あ、そんなことないよお(^_^;)」

 ううん……マックなんて令和じゃ宮之森の駅前にだってあるしねえ。

 ちょっと焦り気味にテンション合わせて、夏休み中に有志を募ってマックを食べに行くことになった!
 



☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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