170 / 294
170『年度末と防寒対策』
しおりを挟む
巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
170『年度末と防寒対策』
三学期が始まって三日目の朝、いつものようにロコと駅を出たところでいっしょになって学校を目指す。
ガガガガガガ ガガガガガガ ガガガガガガ
交番の前を通って商店街に入ったところで、盛大に道路工事をやっている。
さすがに塞がっているのは道幅の半分なんだけど、通勤通学の邪魔。
「迂回しますか」
二年の三学期ともなると近隣の地理に明るくなって、相談しなくてもう回路に足が向く。
「年度末が近いから、駆け込み工事が増えるんですよね」
「駆け込み?」
「市とか県の予算ですよ。使い切らないと来年度の予算減らされますからね」
「そうなん……ウワ!」
ちょっとした舗装の段差に引っかかって、ロコが咄嗟に手を引いてくれて助かる。
「あ、ありがとう(;'∀')」
「ここはクリスマス前に工事したとこですねえ、舗装工事は向こうと合わせて来年度予算といったところですね」
「アハハハ……来年度予算ねぇ(^_^;)」
これだけの工事なのにガードマンも付いていないし、案内板すらない。
だいたい通学時間帯の通学路の道路工事なんて反則だと思う。まあ、片側封鎖だし、昭和的ファジーさと嘆きの虫を押し殺して学校へ急ぐ。
ロコはいつも通りにカバン一つ。わたしはカバンを右手に、左手で紙袋を抱えている。この紙袋で足元が視界不良になってるんだ。
「ああ、窓際になったんですねぇ……」
ロコも思い当たって、今さらながら同情してくれる。
実は、昨日の席替えで入学以来初めて窓際になったんだ。
宮之森はいちおう鉄筋校舎だけど、中身はポンコツ。
教室のドアは鍵も掛からない木製で、教室は年に二回は油びきが必要な板張り。
むろんエアコンなんてあるはずもなく、冬の暖房は教壇横のガスストーブで間に合わせている。
間に合わせているというのは、他にも改善しなきゃならないところがあるからなのよ。
それが、南側の窓。
窓枠は、さすがに木製じゃないけど、令和じゃ常識のアルミサッシでもない。
なんと鉄製!
それも左右に開く引き違い式じゃなくて、まるで車のハッチバック!
下の方に真鍮のクランクというか掛け金があって、それを横にクイっと倒して外側に押す!
すると窓は0度~45度くらいに傾斜して、傾斜した窓の上と下から空気が出入りするというシロモノ。
密かにググると『横滑り窓』というらしい。気密性が高いのが売りらしいけど、ゴムとかシリコンとかのパッキングが無いものだから隙間風がハンパない。
横滑り窓の上にはスライド式の窓もあるんだけど、こいつも隙間風を遮断するようにはできていない。
この隙間風と、一重の窓から容赦なく忍び寄る寒気防止のための防寒具が必要なわけ。
毛糸のひざ掛けと座布団。
「もうちょっと魔法が使えたら、妖気の膜を張って寒さなんて一発で克服できんのにね」
お祖母ちゃんは、わたしを本物の魔法少女にしたくて余計なことを言うけど、その手にはのらない。
それに、ストーブなんだけど。暖気は全部教室の上1/3ぐらいのところに溜まって降りてこない。
埼玉の茶畑にあった防霜扇を付けて欲しいと思った。
一時間目が終わって、わたしの後ろになった加奈子が質問してきた。
「ねえ、ずっと指を回してたけど、なんなのあれ?」
「え、ああ……寒さで指が凍えそうで……アハハハ(^_^;)」
「え、ああ、そうなんだ……」
不得要領な顔の加奈子。
実は、魔法で教室の空気を循環させようと無駄な努力をしていた。
壁の向こうの覗き見魔法しか使えないわたしには無理な魔法なんだけどね、溺れる者は~的な悪あがき。
まあ、手首だけは、ちょっとだけ暖かくなったかも。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 長瀬(保健部長) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
170『年度末と防寒対策』
三学期が始まって三日目の朝、いつものようにロコと駅を出たところでいっしょになって学校を目指す。
ガガガガガガ ガガガガガガ ガガガガガガ
交番の前を通って商店街に入ったところで、盛大に道路工事をやっている。
さすがに塞がっているのは道幅の半分なんだけど、通勤通学の邪魔。
「迂回しますか」
二年の三学期ともなると近隣の地理に明るくなって、相談しなくてもう回路に足が向く。
「年度末が近いから、駆け込み工事が増えるんですよね」
「駆け込み?」
「市とか県の予算ですよ。使い切らないと来年度の予算減らされますからね」
「そうなん……ウワ!」
ちょっとした舗装の段差に引っかかって、ロコが咄嗟に手を引いてくれて助かる。
「あ、ありがとう(;'∀')」
「ここはクリスマス前に工事したとこですねえ、舗装工事は向こうと合わせて来年度予算といったところですね」
「アハハハ……来年度予算ねぇ(^_^;)」
これだけの工事なのにガードマンも付いていないし、案内板すらない。
だいたい通学時間帯の通学路の道路工事なんて反則だと思う。まあ、片側封鎖だし、昭和的ファジーさと嘆きの虫を押し殺して学校へ急ぐ。
ロコはいつも通りにカバン一つ。わたしはカバンを右手に、左手で紙袋を抱えている。この紙袋で足元が視界不良になってるんだ。
「ああ、窓際になったんですねぇ……」
ロコも思い当たって、今さらながら同情してくれる。
実は、昨日の席替えで入学以来初めて窓際になったんだ。
宮之森はいちおう鉄筋校舎だけど、中身はポンコツ。
教室のドアは鍵も掛からない木製で、教室は年に二回は油びきが必要な板張り。
むろんエアコンなんてあるはずもなく、冬の暖房は教壇横のガスストーブで間に合わせている。
間に合わせているというのは、他にも改善しなきゃならないところがあるからなのよ。
それが、南側の窓。
窓枠は、さすがに木製じゃないけど、令和じゃ常識のアルミサッシでもない。
なんと鉄製!
それも左右に開く引き違い式じゃなくて、まるで車のハッチバック!
下の方に真鍮のクランクというか掛け金があって、それを横にクイっと倒して外側に押す!
すると窓は0度~45度くらいに傾斜して、傾斜した窓の上と下から空気が出入りするというシロモノ。
密かにググると『横滑り窓』というらしい。気密性が高いのが売りらしいけど、ゴムとかシリコンとかのパッキングが無いものだから隙間風がハンパない。
横滑り窓の上にはスライド式の窓もあるんだけど、こいつも隙間風を遮断するようにはできていない。
この隙間風と、一重の窓から容赦なく忍び寄る寒気防止のための防寒具が必要なわけ。
毛糸のひざ掛けと座布団。
「もうちょっと魔法が使えたら、妖気の膜を張って寒さなんて一発で克服できんのにね」
お祖母ちゃんは、わたしを本物の魔法少女にしたくて余計なことを言うけど、その手にはのらない。
それに、ストーブなんだけど。暖気は全部教室の上1/3ぐらいのところに溜まって降りてこない。
埼玉の茶畑にあった防霜扇を付けて欲しいと思った。
一時間目が終わって、わたしの後ろになった加奈子が質問してきた。
「ねえ、ずっと指を回してたけど、なんなのあれ?」
「え、ああ……寒さで指が凍えそうで……アハハハ(^_^;)」
「え、ああ、そうなんだ……」
不得要領な顔の加奈子。
実は、魔法で教室の空気を循環させようと無駄な努力をしていた。
壁の向こうの覗き見魔法しか使えないわたしには無理な魔法なんだけどね、溺れる者は~的な悪あがき。
まあ、手首だけは、ちょっとだけ暖かくなったかも。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 長瀬(保健部長) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~
fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。
絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。
だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。
無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる