やくもあやかし物語・2

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
14 / 84

014『交換手さんの電話と王女さまの呼び出し』 

しおりを挟む
やくもあやかし物語 2

014『交換手さんの電話と王女さまの呼び出し』 




 明日は日曜でお休み。

 前の晩はハイジたち気の合う仲間同士で遅くまでお喋りしてグッスリ。

 だったのに、夜中にふと目が覚めた。



 うっすら開けた目の端がほのかに明るい。

 チロリと目を動かすと、机の上の黒電話がうっすらと光ってる。

 ほら、RPGのゲームやってると、キーアイテムとかが光ってる、あんな感じ。

 よく見ると、光り方には強弱があってホタルみたい。

 ん…………このテンポは……電話が鳴る時の間隔。

 マナーモード?

 相棒のネルは口を半開きにして寝息を立てている。

 ひっそり起きると、膝立ちして受話器をとった。

――あ、やっと通じたぁ!――

 それは、懐かしい交換手さんの声だった。



 あくる朝、ダイニングでトレーを持ってカウンターに並ぶ。

 わたしの前が食いしん坊のハイジ、後がまだ目の覚めきらないネル。

 ハイジがパンを三つも取って、サラダもスクランブルエッグも山盛りにして、わたしの番がきたところで、食堂のおばちゃんがこっそりと言った。

「王女さまがお呼び、食べたら三人で王宮に行って」

 !?

「え」「あ」「はい」

 いそいで食べなきゃ!

 ガツガツガツ  ムシャムシャ  モソモソモソ

 ゆっくり食べるネルとお代わりをとりに行きたがるハイジを急き立ててダイニングを出る。



「ウンコ!」



「ええ?」「なに?」

「間に合わせっから……(;゚Д゚)!」

 ピューー

 返事も聞かずにトイレにダッシュのハイジ、ネルは、ようやく血圧が平常値になり、とっとと先に行く。

「あ、待ってぇ(;'∀')」

 マイペースなエルフを追いかけて、王宮のエリアゲートに着くと、ハイジが砂煙を上げて駆けてきた。

「スッキリしたぜ(^▽^)」

「手は洗ったのかぁ?」

「おお、ケツも洗ったぜ!」

 そういうと、制服の裾で手を拭いた。



「朝からごめんなさい。実は、三人にお願いがあるの」



 王女さまはサバゲーにでも行くような姿でお待ちになっていた。

「え、どっか戦争にでもいくのか?」

「ちょっと黙ってろ」

 さすがにハイジをたしなめて、王女さまに正対するネル。

「露天風呂にデラシネが現れた、知ってるわよね?」

 知っているも何も、出くわしたのはわたしだよぉ。

「デラシネは露天風呂に惹かれて現れたの、露天風呂はデラシネに活力を与えるようで、この先、危険な存在になるってティターニアから申し入れがあったの」

 ティターニア?

「森の女王よ、女王は『露天風呂を作ったのは人間だから、人間たちでケリをつけて欲しい』と申し出てきたの。ケリをつける人間は、向こうから指名してきたわ」

「ギョエ!」

「それが、あたしたち三人というわけですか?」

 ハイジが目を剥きネルがピンと耳を立てた。

「それに、露天風呂を作ったのはわたし。わたしも行きます」

「「「ええ!」」」

 そうか、それで、このサバゲーなんだ。

「それはなりません!」

 いつの間にか来たのか魔法学のソフィー先生がやってきた。

「ソフィー」

「殿下を危険にさらすわけにはいきません。ティターニアの指名も、この三人です」

「でも、事の始まりはわたしよ。大丈夫、ソフィーに付き添ってもらってだったけど、無名の島から魔法石を取ってくることもできたし(せやさかい408『ヨリコ王女、無名の島で初めての国事行為に臨まれる』)大丈夫よ」

「それに、ティターニアから指名があったのは、あくまでも、この三人。違えてはなりません」

 う……こんなに厳しい目のソフィー先生は初めてだよ(;'∀')。

 ネルもハイジも息を呑んでしまった。



「だ、だいじょうぶです! 三人で行きます!」



 口走ってしまった。



 夕べ、交換手さんの電話が無かったら、この決心は言えなかったと思うヤクモだったよ。



☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...