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016『森へ!』
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やくもあやかし物語 2
016『森へ!』
お…………大きい。
道が曲がって森が見えてくると、すこしビビってしまう。
いつもより森が大きく見える。
分かってる。これまでは外から見るだけだったけど、これから中に入るんだ。
それも、デラシネをやっつけるため……少なくともワルサをさせないくらいに話をつけなくちゃいけない。
露天風呂で出くわしたデラシネは生徒と間違えるくらいに普通の女の子なんだけど、キレると猿だ。
白目が無くなって黒目だけになって、尻尾が出てきて、牙も爪も伸びてくる。
シャーーって牙向いて跳びかかられた時は怖くて目をつぶってしまった。
あの瞬間、鬼の手が現れて振り払ったから無事だったけど、次もうまくいくとは限らない。
少しばかりは有った自信がしぼんでいく…………大きな森がさらに大きくなって、とてつもなく巨大な怪物のよう。ポッカリ開けた入り口は――これから吸い込んでやるぞぉ!――とすぼめた怪物の口みたいだ。
「……ハイジ、まだ来てない」
「いや、来てる」
サササササ……
ひとこと言うと、風の妖精みたいに突き進んで、草むらを蹴り上げるネル。
ポン!
軽い音がしたかと思うと、スナイパーみたいに全身草の迷彩をまとったハイジが飛び上がった。
「イッテー! なにすんだ(>д<)!」
「そんなことをしても、妖精たちには丸見えだぞ」
「で、でも、ここまで来るのに、なにもなかったぞ」
「面白いから、みんな見てただけだ」
サワ
ザワザワザワザワザワ……
ネルが拭うように手を振ると森のあちこちに目玉が現れては消えていった。
「ヒエエエエ(;'∀')」
「もう飽きたってさ。あいつらは飽きっぽいからな。それより、うしろ……」
「「え?」」
ネルに言われて振り返ると、来た道の曲がったところにクラスのみんなが心配そうな目で見送ってくれている。
ちょっと離れたところには王女さまとソフィー先生。
「おお~、みんな見送りにきてくれてたのかぁ(^▽^)/」
ハイジが飛び上がって喜ぶ。
「単純に喜ぶな。真剣に心配してくれるくらいに大変なんだよ、この任務は」
「そ、そうなのか(;'∀')」
「ああ、だから、あんな後ろに居るんだ……」
もう一度ネルが手を振ると、みんなの周囲に薄い靄のようなものがかかっているのが見えた。
「念のため結界が張られている」
「ええ、結界張るほどなのか!?」
「念のためなんだろうけどね。立場が違ったら、わたしもやってるかもしれない」
「さ、いこっか」
「ヤクモ、おまえ、なんか落ち着いてんじゃん」
「あはは……もう、なんでもかかって来なさいよ!」
見え透いているけど強がりを言ってしまう。
あはは……のあとは「✖〇△◇#!””✖▢!」と、わけの分からない叫び声になりそうだったんだけどね。
わたしの取り柄は、妖や精霊とかに敏感なことだ。
それが、森の入り口まで来て、ネルに言われるまで気づかなかった、精霊にも見送りに来てくれていた仲間たちにも。
やっぱりガチガチに緊張してるんだ。
期せずして、三人揃って深呼吸。
ゆっくりと森の中に踏み込んでいった。
バシャ!
背後でなにかが閉じるような音がしたけど、もう振り返ることはしなかった。
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち マッコイ(言語学)
あやかしたち デラシネ 六条御息所
016『森へ!』
お…………大きい。
道が曲がって森が見えてくると、すこしビビってしまう。
いつもより森が大きく見える。
分かってる。これまでは外から見るだけだったけど、これから中に入るんだ。
それも、デラシネをやっつけるため……少なくともワルサをさせないくらいに話をつけなくちゃいけない。
露天風呂で出くわしたデラシネは生徒と間違えるくらいに普通の女の子なんだけど、キレると猿だ。
白目が無くなって黒目だけになって、尻尾が出てきて、牙も爪も伸びてくる。
シャーーって牙向いて跳びかかられた時は怖くて目をつぶってしまった。
あの瞬間、鬼の手が現れて振り払ったから無事だったけど、次もうまくいくとは限らない。
少しばかりは有った自信がしぼんでいく…………大きな森がさらに大きくなって、とてつもなく巨大な怪物のよう。ポッカリ開けた入り口は――これから吸い込んでやるぞぉ!――とすぼめた怪物の口みたいだ。
「……ハイジ、まだ来てない」
「いや、来てる」
サササササ……
ひとこと言うと、風の妖精みたいに突き進んで、草むらを蹴り上げるネル。
ポン!
軽い音がしたかと思うと、スナイパーみたいに全身草の迷彩をまとったハイジが飛び上がった。
「イッテー! なにすんだ(>д<)!」
「そんなことをしても、妖精たちには丸見えだぞ」
「で、でも、ここまで来るのに、なにもなかったぞ」
「面白いから、みんな見てただけだ」
サワ
ザワザワザワザワザワ……
ネルが拭うように手を振ると森のあちこちに目玉が現れては消えていった。
「ヒエエエエ(;'∀')」
「もう飽きたってさ。あいつらは飽きっぽいからな。それより、うしろ……」
「「え?」」
ネルに言われて振り返ると、来た道の曲がったところにクラスのみんなが心配そうな目で見送ってくれている。
ちょっと離れたところには王女さまとソフィー先生。
「おお~、みんな見送りにきてくれてたのかぁ(^▽^)/」
ハイジが飛び上がって喜ぶ。
「単純に喜ぶな。真剣に心配してくれるくらいに大変なんだよ、この任務は」
「そ、そうなのか(;'∀')」
「ああ、だから、あんな後ろに居るんだ……」
もう一度ネルが手を振ると、みんなの周囲に薄い靄のようなものがかかっているのが見えた。
「念のため結界が張られている」
「ええ、結界張るほどなのか!?」
「念のためなんだろうけどね。立場が違ったら、わたしもやってるかもしれない」
「さ、いこっか」
「ヤクモ、おまえ、なんか落ち着いてんじゃん」
「あはは……もう、なんでもかかって来なさいよ!」
見え透いているけど強がりを言ってしまう。
あはは……のあとは「✖〇△◇#!””✖▢!」と、わけの分からない叫び声になりそうだったんだけどね。
わたしの取り柄は、妖や精霊とかに敏感なことだ。
それが、森の入り口まで来て、ネルに言われるまで気づかなかった、精霊にも見送りに来てくれていた仲間たちにも。
やっぱりガチガチに緊張してるんだ。
期せずして、三人揃って深呼吸。
ゆっくりと森の中に踏み込んでいった。
バシャ!
背後でなにかが閉じるような音がしたけど、もう振り返ることはしなかった。
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
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あやかしたち デラシネ 六条御息所
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