やくもあやかし物語・2

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
50 / 84

050『妖怪くわせもの・2』

しおりを挟む
やくもあやかし物語 2

050『妖怪くわせもの・2』 




 くわせものが飛び出してしまうと、食堂のドアも窓も開くようになった。

――しっかり掴まれ!――

 ミチビキ鉛筆が叫ぶ!

 わたしは右手で鉛筆を、左手で、その鉛筆を握る右手を掴んで前に突き出す。

 ピューーン!

 甲高い音をさせて、鉛筆は自動的に開いた窓からわたしを引っ張ったまま飛び出していく。

 やくもぉ!!

 別の窓から、ハイジとネルが顔を出してわたしを呼ぶ。くわせものの影響は長続きはしないようだ。

 ゴオオオオ!

 くわせものが旋回して食堂の窓を舐めるように低空飛行、食堂のみんなは悲鳴を上げて頭を引っ込める。やつは、渋谷の3D広告、サイネージっていうんだっけ。あそこの定番の三毛猫の首くらいの大きさになって飛んでいる。

 そんなに大きいと三毛猫でもおっかないのにピエロの顔だよ、あんなのが傍に来たらおしっこチビルくらいに怖いよ。

 グゴオオオ!

 こんなのどうやってやっつけるんだ……と、思ったら、鉛筆が勝手に動き出す。

「ウワア、あ、ちょ、ちょっとぉ!」

 鉛筆は、わたしを引っ張ったまま空中に字を書き始めた。

 鉛筆のくせに、太くておっきい字!

――ティターニアに手伝ってもらって!――

 鉛筆も自分一人じゃ苦しいんだ。

 え、え、どうするどうする(;'∀')

 空から見てても分かるくらい、地上のみんなも焦ってる感じ。

 みんな森の住人たちを敬遠してきたからね、自信が無いんだ。

 思い余って、ネルとハイジが窓枠に足を掛ける。あの二人は森の住人とも多少は近い。

 ムギュ!

 飛び出すかと思ったら、だれかに踏みつけられたようにペシャンコになる二人。みんなは妖に一発喰らったのかとのけ反るけど、やくもには分かったよ。

 デラシネが二人を踏み越えて森へ駆けていく!

 だいじょうぶかな、森のみんなとは、まだ和解できてないよぉ。

――かまうな、行くぞ!――

「鉛筆のクセにえらそー」

――おもいやりを構えろ――

「え、あ、うん」

 おもいやりは樺太旅行に行ったお礼にデラシネがくれたフィギュアのパーツみたいに小さな槍。これは破魔矢みたいな縁起物だと思ってた。あるいは――人にはおもいやりを持って――的ないましめ、あるいは、デラシネなりの感謝の気持ち的な。

――分析してる場合ではない、構えて!――

「うん!」

 うんとは言ったけど、鉛筆に掴まりながらはやりにくい。

――しかたがない……えい!――

 ガクン

 衝撃があったかと思うと、鉛筆は魔法使いのホウキほどになってわたしを乗せていく。

 ガツガツガツ! ムシャムシャムシャ! ハグハグハグ!

 くわせものは結界に食らいついて食べ始めている。

「あいつ、自分でも食べるんだ!?」

――感心してる場合じゃない!――

「う、うん!」
 
 ビューーン

 鉛筆は旋回しながら速度を上げ、わたしは、アニメの勇者みたいに姿勢を低くして、くわせもののコメカミ目がけて突きかかる。

 プチュ

 少しは手ごたえがあるんだけど、やつが逃げる方が早い!

 くそ!

 やつが齧ったところはほころびが出ている。

 結界は外からの攻撃には強いけど、中から蝕まれると弱いんだ。

 ザザザザザーー

 下の方から音がしたかと思うと、無数の葉っぱが森の方から飛んできて、結界の傷口を覆って修復にかかる。

 そうか、これがティターニアたち森の住人たちの協力か。

 でも、補修だけでいっしょに戦ってくれるわけではないようだ。

 仕方がない!

「いくよ!」

――おお!――

 鉛筆といっしょに人馬一体という感じで追いかける!

 えい! とー! それ! そこだ! ウリャー! キエエエ!

 いろんな掛け声で、くわせものに襲いかかる!

 プチュ プチ プツ プシュ プチュ

 確実に手ごたえはあるんだけど、決定打にならない。

 小さな傷はすぐになおしてしまうくわせもの。

 だめだ、こっちが先にバテてしまう。

 五六回攻撃したところで息切れがしてきて、空振りが増えてくる。

 ドザザザザザーー!!

 ひときわ大きな枯れ葉のかたまりが上がってきたかとおもうと、それは、くわせものの背後で弾けて、中から大きな剣を構えたデラシネが現れた!

 セイ!

 ビシュッ! ドシュッ!!

 十文字に大剣を振るうとくわせものは大きく口を開けてのけ反った!

 かなり効いてる!

「トドメだ!」

 デラシネは空中で二回転すると、そのままの勢いで大剣を振りかぶった!

 ギャアアア!!

 断末魔の叫びをあげたかと思うと、くわせものは無数のポリゴンぽいものに分解し、消滅していった……。

 そして、消滅するくわせものに目を奪われているうちに、デラシネの姿も消えてしまっていた。

 

☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...