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51『朝飯で予定通りの恥をかく』
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鳴かぬなら 信長転生記
51『朝飯で予定通りの恥をかく』信長
「お前たち、旅の者か?」
伍長の袖章を付けたのが聞いてきた。
「はい、貧盃(ひんぱい)から豊盃に参ります」
貧盃と言うと、蔑み半分、親しみ半分の反応。
「仕事を探しに来たのか?」
「はい、豊盃の親類を頼ってと思っています」
「男であれば、すぐにでも仕事にありつけるだろうになあ、惜しいことに女かあ」
体格はいいが、ちょっと足りなさそうなのが言う。
「男なら、仕事が?」
「おうさ、大戦(おおいくさ)の前だからな、兵隊はいくらでもいる」
「いや、女でも仕事はあるだろ」
デブが、好色そうな目を向ける。
「女でも仕事が?」
一歩前に出たのは興味からではない。市の気配が険しくなってきたからだ。
「そうさ、勝ち戦の後は昂ってるからよ、みんな女が恋しいさ」
アハハハ
伍長を除く巡邏隊が下卑た笑い声をあげる。
「まあ、それを狙った悪い口入屋(くちいれや)も出てくる、気を付けていけ」
「はい、ありがとうございます」
「うむ」
軽く頷くと、伍長は巡邏隊を引き連れて街道を西へ向かって行った。
「いけすかない奴ら」
「そうでもない、袖の下を無心することもなかったし、乱暴を働くこともなかった。統制がとれている」
「そーお、デブもマッチョもイヤらしかった」
「そうだな、戦が長引けば崩れそうな奴らだが、今は、あの伍長程度の者でも仕切れている」
「貧盃ってなに?」
「はるか西の街だ」
「よく知ってるわね」
「忠八がメモをくれている」
「え、あんたにだけ!?」
「市への気遣いだ」
「わたしをハミっといて気遣い!?」
「違う、俺にリードさせることで市を守ろうとしているんだ」
「…………」
分かってはいるようだ。
自分の才に自信はあるのだろうが、こと実践にかけては兄の俺の方が上だ。
こだわりながらも呑み込めるのは、市も戦国を生き抜いた女だからだろう。
そう思うと不憫でもないが、とにかくは任務を果たすことだ。
「……お腹空いた」
「そう言えば、こっちに来てなにも食ってないな」
「なんか、雑然としてない? 目につく食べ物屋も薄汚いし。これでも、郡都なの?」
「さあな……」
「ムムム……」
空腹と物珍しさ、そして、持ち前の好奇心で、市は五分ほどでテラス式の飯店を見つけた。
「あそこがオシャレ!」
通り寄りの席につくと、修学旅行の女生徒のようにウエイトレスを呼ぶ。
「すみませーん、オーダーお願い!」
いらっしゃいませの返答も待ちきれずにメニューの一点を指し示す。
こういう決断は早くて適格だ。
「はい、三国朝定食、お二つですね」
「あ、それから、朝の点心もね」
「はい、点心は、メニューのこちらからお選びください」
「これは、ニイに選ばせてあげる」
「であるか……」
「さすがに豊盃ね、探せば、こんなお店もあるのね」
「ありがとうございます。でも、お客さま、ここは豊盃じゃありませんよ」
「え!?」
「豊盃の手前の酉盃(ゆうはい)ですよ、お客さま」
「え、そうなの!?」
「はい、豊盃には、うちの本店もございまして、酉盃の十倍ほども大きな街ですよ」
アハハハ
周囲の客の反応は、さっきの巡邏隊に近かく、完全に田舎者認定……狙い通り、お上りの二人連れになれた。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っこ
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
51『朝飯で予定通りの恥をかく』信長
「お前たち、旅の者か?」
伍長の袖章を付けたのが聞いてきた。
「はい、貧盃(ひんぱい)から豊盃に参ります」
貧盃と言うと、蔑み半分、親しみ半分の反応。
「仕事を探しに来たのか?」
「はい、豊盃の親類を頼ってと思っています」
「男であれば、すぐにでも仕事にありつけるだろうになあ、惜しいことに女かあ」
体格はいいが、ちょっと足りなさそうなのが言う。
「男なら、仕事が?」
「おうさ、大戦(おおいくさ)の前だからな、兵隊はいくらでもいる」
「いや、女でも仕事はあるだろ」
デブが、好色そうな目を向ける。
「女でも仕事が?」
一歩前に出たのは興味からではない。市の気配が険しくなってきたからだ。
「そうさ、勝ち戦の後は昂ってるからよ、みんな女が恋しいさ」
アハハハ
伍長を除く巡邏隊が下卑た笑い声をあげる。
「まあ、それを狙った悪い口入屋(くちいれや)も出てくる、気を付けていけ」
「はい、ありがとうございます」
「うむ」
軽く頷くと、伍長は巡邏隊を引き連れて街道を西へ向かって行った。
「いけすかない奴ら」
「そうでもない、袖の下を無心することもなかったし、乱暴を働くこともなかった。統制がとれている」
「そーお、デブもマッチョもイヤらしかった」
「そうだな、戦が長引けば崩れそうな奴らだが、今は、あの伍長程度の者でも仕切れている」
「貧盃ってなに?」
「はるか西の街だ」
「よく知ってるわね」
「忠八がメモをくれている」
「え、あんたにだけ!?」
「市への気遣いだ」
「わたしをハミっといて気遣い!?」
「違う、俺にリードさせることで市を守ろうとしているんだ」
「…………」
分かってはいるようだ。
自分の才に自信はあるのだろうが、こと実践にかけては兄の俺の方が上だ。
こだわりながらも呑み込めるのは、市も戦国を生き抜いた女だからだろう。
そう思うと不憫でもないが、とにかくは任務を果たすことだ。
「……お腹空いた」
「そう言えば、こっちに来てなにも食ってないな」
「なんか、雑然としてない? 目につく食べ物屋も薄汚いし。これでも、郡都なの?」
「さあな……」
「ムムム……」
空腹と物珍しさ、そして、持ち前の好奇心で、市は五分ほどでテラス式の飯店を見つけた。
「あそこがオシャレ!」
通り寄りの席につくと、修学旅行の女生徒のようにウエイトレスを呼ぶ。
「すみませーん、オーダーお願い!」
いらっしゃいませの返答も待ちきれずにメニューの一点を指し示す。
こういう決断は早くて適格だ。
「はい、三国朝定食、お二つですね」
「あ、それから、朝の点心もね」
「はい、点心は、メニューのこちらからお選びください」
「これは、ニイに選ばせてあげる」
「であるか……」
「さすがに豊盃ね、探せば、こんなお店もあるのね」
「ありがとうございます。でも、お客さま、ここは豊盃じゃありませんよ」
「え!?」
「豊盃の手前の酉盃(ゆうはい)ですよ、お客さま」
「え、そうなの!?」
「はい、豊盃には、うちの本店もございまして、酉盃の十倍ほども大きな街ですよ」
アハハハ
周囲の客の反応は、さっきの巡邏隊に近かく、完全に田舎者認定……狙い通り、お上りの二人連れになれた。
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