トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
39 / 87

39『ベターハーフ・2』

しおりを挟む
RE・友子パラドクス

39『ベターハーフ・2』 

 


「……で、どうなのよ、二人の関係というか、可能性は?」

 駅前のパンケーキをモフモフ食べながら紀香が聞いてきた。今日は期末テストで二時間でおしまいなのだ。

「ま、ノッキー先生の記憶から取った情報……見てくれる」

「やっぱ、氷川丸は外せませんね」

「ふふ、乗せてしまえば、管理もしやすいですしね。でしょ、東先生?」

「違いますよ!」

「あら、ごめんなさい」

 ……二人は、遠足の下見に横浜の山下公園にやってきていた。去年の春のようだ。

「氷川丸は、昭和五年に造られた大型貨客船で、横浜とシアトルを何度も往復……あ、チャップリンも、この船で日本に来たんですよ」

「まあ、あのチャップリンが?」

「ええ、柔道の嘉納治五郎も東京オリンピック招致の会議のあと、この船で帰国中に肺炎で亡くなってます」

「嘉納治五郎って、東京オリンピックの前まで生きてたんですか!?」

「ハハ、昭和十六年の幻のオリンピックですよ」

「へえ、そうなんだ……」

「戦時中は、病院船になって、船体を白く塗って、緑の帯に赤十字が映えましてね。海の白鳥って呼ばれたもんです」

「へえ……この船、きっと白が似合ったんでしょうね」

「戦後は、引き揚げ船やったり、もとの太平洋航路にももどって、その後は展示船になって、ユースホステルになったり、船上結婚式に使われたり……」

「え、ここで結婚式!?」

 ノッキーは、思わず身を乗り出した。

「白い船体に、白いウェディングドレス……素敵だわ!」

「あ、そのころはエメラルドグリーンに塗られてました」

「エメラルドグリーン、もっと素敵。そのころの氷川丸見て見たかったわね!」

「あ、じゃ、そこに立ってみてください!」

「え、この白黒じゃイメージちがうなあ……」

「あ、パソコンで処理して、船はエメラルドグリーンにしときますよ」

「ついでに、ウェディングドレスにしてもらおうかなあ」

「あ、それいいなあ、やっときますよ( #ºωº #)!」

「ハハ、冗談よ。このままでいい」



 パシャ パシャパシャ パシャ



 スマホで撮って、アズマッチはノッキー先生に見せた。

「あ、思い出した。このアングル!」

「ハハ、分かりました?」

「『コクリコ坂』で、海と俊がアベックで歩いたとこだ!」

「そう、お互い好きなんだけど……」

「その時は、お互い兄妹だと思いこんでいて、なんだか、とってもせつないのよね!」

「そういう、歴史的な背景を説明してやってから、生徒たちを、ここに連れてきてやりたいんですよ」

「うん、とってもいいアイデアだわ!」

「そして、帰りは、ここで集合写真撮ってやりたいんです。母港に落ち着いた氷川丸の前で!」

「うんうん!」

 そのとき、いたずらなカモメが、ノッキー先生の頬をかすめた。

「きゃ!」

 思わず、ノッキー先生はアズマッチの胸に飛び込んでしまった。

「柚木さんが、ボクの母港になってくれたら、どんなにいいだろ……」
 
 ノッキー先生は、優しく顔を上げた。

「……わたしみたいな小さな港には、東先生みたいな大きな船は入りきらないわ」

 そして、ノッキー先生は自然にアズマッチの胸から離れた。

「母港にしている船は……?」

「……まだ、一度も入港してくれたことはないけど……さ、次ぎ行きましょうか」

「そ、そうですね、柚木先生!」


 それからのアズマッチは、彼女のことを、かならず「先生」をつけて呼ぶようになったところで駅に着いた。


「いい話だけど、切ないね。アズマッチは諦めちゃったの?」

「ううん、今でも好きだよ。でも、アズマッチはエライよ」

「え、あのボクネンジンが?」

「ほんとうに人を愛することは、その人が、一番幸せになることを願うことだって……」

「アズマッチの心覗いたの?」

「うん、でね……」

 ――間もなく二番線に各駅停車綾瀬行きが参ります――

「続きがあるんだね……」

 ――黄色いブロックの内側でお待ちください――

「うん」

「それは、圧縮した情報のインストールじゃなくて、アナログの会話でやろうか」

「うん、ちょっと応援もしてあげたいしね」



 ポロロン ポロン ピロン♪



 発メロ『君の名は希望』が軽やかに弾んで、二人を乗せた地下鉄は、ゆっくりと走り出した……。



☆彡 主な登場人物

鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎        友子の弟で父親
鈴木 春奈        一郎の妻
鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛  聡        クラスの委員長
王  梨香        クラスメート
長峰 純子        クラスメート
麻子           クラスメート
妙子           クラスメート 演劇部
水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...