上 下
3 / 4

異世界に降り立つ

しおりを挟む
目が覚めると、俺は草原の真ん中にぽつんと倒れていた。

ここまでお決まりなのかよ...と思いつつ、本当にただの現代一般人が危険なファンタジーにやってきたみたいだ。

とりあえず、落ち着いて状況を確認しようと思い、俺は立ち上がった。

まずはやはり、見渡す限りの草原。
この時点で少なくとも日本ではないことが確定だ。
こんな場所があったらピクニックのスポットとして、少しは有名になっていてもおかしくはないだろう。

次に、俺の見た目だ。
明らかに若返っている。
体感では、まだ社会の厳しさを知らない頃、すなわち16歳~18歳くらいだと考えられる。
そもそも魂がどうのこうの言っていたので、赤子スタートなのではと思っていたのだが、これではどちらかと言えば異世界転移ものである。

そして、よくよく耳を澄ませてみれば、変な鳴き声の動物が確認できる。
厳密には視認していないわけだが、明らかに甲高い、魔物がいたらこんな感じの声なんだろうなといった感じだ。
何かと言われれば、サルの鳴き声に似ている気がする。
たぶん奥の方に見える森から聞こえてくるのだろう。

〈ナビゲーターの活動範囲内にスキル所持者の存在を確認。再起動を開始します。〉
〈再起動完了。これよりナビゲーションを開始します。〉

急にまた脳内の俺でない何者がの声が聞こえる。
魂の状態の時の中性的な声ではなく、どちらかというと機械音に近いような声だ。
何かごちゃごちゃ言っていたが、急に何か言われても心の準備ができていないので、全く反応できずに半分くらいしか聞けなかった。

〈以降、特定の条件を満たしたときのみ起動し、所有者を補助します。〉
〈今回はスキル割り振りのために起動されました。また、スキル取得の模造儀式も行います。なお、本来の儀式との差異はございません。〉

なるほど。
俺はてっきり転移前にスキルを貰えるものだと思っていたが、違ったようだ。
転移した後にスキルの授与だなんて、変わっているなと思う。

〈現在のステータスについては、”ステータス”と唱えることで、自分だけ見ることができます。〉
〈また、この世界の一般的な初期ステータスは1~5となっています。〉

なるほど。要するにステータスを確認しろということだな。

「ステータス!」
すると、俺の目の前に半透明のボードが現れた。

名前 田中誠二
種族 人間(元地球)/Lv.1
職業 ー

力  0
知力 0
俊敏 0 
技巧 0 
運  0(+?%)

武器適性ー

魔法適正ー

スキル 豪運(Ex)Lvー


こ...これは...?
よくわからないが俺は吹けば飛ぶような存在ということなのだろうか。
全ステータスが0とはどんな世界であろうと俺くらいなのではないだろうか。

〈これより、ステータスの割り振りを行います。〉
〈割り振りステータスは力、知力、俊敏、技巧、運の五つそれぞれ1~100までで決定されます。〉
〈各ステータスの確率は、ステータス”1”を期待値1とすると、一つ上がるごとに十分の一、100を引く期待値は十の百乗分の一ということになります。〉
〈また、ステータスは素の自分の肉体に上乗せされるものであり、すべて1でも生活が困難になるわけではありません。〉

なるほど、確かにその確率からするとステータスが1~5に集まる理由もわかる。
というか5でも相当高い方になるはずである。

〈また、ステータスの割り振りでは、スキル豪運の使用が許可されています。〉

どうやらそもそも効果もわからないスキルの使用が認められているらしい。
もちろん使い方などわからない。パッシブだといいんだが...

というか、気にしていなかったが、俺が地球からいなくなった理由であるスキルは消されていないんだな。
この世界では合法なのであろうか。まあ、俺には知る方法もないわけだが。

〈ステータスの割り振りは各ステータスをタッチすることで自動的に始まります。〉
〈ステータスの割り振りを終えた後は、スキル取得の儀式を行いますので、なるべく早くステータスの割り振りを行ってください。〉

感情のない声をしているナビゲーターが少し感情をあらわにした...気がする。
まあ、ここでうじうじしていても何も始まらないか。
ここが俺のこれからの第一歩の関門となるだろう。
気合を入れても確率は変わらないだろうが、心して挑もう。
しおりを挟む

処理中です...