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書籍化記念
Happy Lovely Christmas 11
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「……そう、ですけど」
付き合ったばかりの頃を思い出したのか、白い頬がうっすらと赤くなる。できればその表情は夜に見せてくれと頼みたくなってしまう。なにせこの一ヶ月、その肌を味わっていないのだ。
だがそれも今夜で解消するだろう。
柾人は心労で僅かにやつれた朔弥を連れて家路を急いだ。
◇◇◇
あんなに買わせてしまって良かったのだろうか。
大量に届いたディナーがクリスマスプレゼントだと思っていた朔弥は心配でならなかった。サーシングの役員報酬がどれほどかはわからない。オーダーのスーツがいくらかも知らない。だが、柾人が買うものが安物ではないと知っているだけに、申し訳なさが先に出る。
セッティングを終えた柾人が、試運転と動かし始めた全自動掃除機が部屋の中を駆け回れば、閑かに寝ていたミーが興味を覚えキャットタワーからずっと動きを追っている。機械音に嫌悪感を抱いていないのがせめてもの掬いだ。これで高級な機械に攻撃でもし始めたら目も当てられない。
確かに、経営の勉強に資格の勉強、それに資料を集め書き始めた卒業論文を抱えている。時間ができたのであれば部屋に籠もって勉強ばかりしている自分を気遣っているのがわかっているから、強く言うことができなかった。
痩せてしまったのも、勉強に忙しくおにぎり一つだけで済ませたりしていたからだ。まさか柾人に気付かれるとは思っていなかった。
(いや、気付かないわけがないか。柾人さんはどんなに忙しくてもオレのことちゃんと見てるから)
そういう彼だからこそ、朔弥もすべてを差し出す決意ができたのだ。今は同じ戸籍に名を連ね本当の家族になったが、それ以前から彼のための自分になりたいと頑張るくらい、彼から溢れんばかりの愛情を注がれている。その一つが僅かな変化にも気付いてくれるところで、夕食を抜いて少しでも痩せたことに気付かないはずがない。
すぐに自分の身体を蔑ろにしてしまう悪い癖を直したいと思っていても、すぐになおざりにしては彼に心配をかけさせる自分のダメな部分を目の当たりにして落ち込む。
床のゴミを吸いながら水拭きまで始めた全自動掃除機は、リビングダイニングを走り回り、今朝掃除をしたときよりもずっと美しく床を磨き上げている。こんな小さな機械がと感心し、こっそり安堵する。
これで掃除の時間が勉強に回せる。もう卒業まで日がない朔弥は、大学に行く時間は減ったが、代わりに最後の詰め込みとばかりに咲子からの課題が増えている。論文の方向性はすでに決まり後は書くだけだが、同時並行で複数種類の勉強をこなすのは、正直体力をたっぷりと奪っていたのだ。
付き合ったばかりの頃を思い出したのか、白い頬がうっすらと赤くなる。できればその表情は夜に見せてくれと頼みたくなってしまう。なにせこの一ヶ月、その肌を味わっていないのだ。
だがそれも今夜で解消するだろう。
柾人は心労で僅かにやつれた朔弥を連れて家路を急いだ。
◇◇◇
あんなに買わせてしまって良かったのだろうか。
大量に届いたディナーがクリスマスプレゼントだと思っていた朔弥は心配でならなかった。サーシングの役員報酬がどれほどかはわからない。オーダーのスーツがいくらかも知らない。だが、柾人が買うものが安物ではないと知っているだけに、申し訳なさが先に出る。
セッティングを終えた柾人が、試運転と動かし始めた全自動掃除機が部屋の中を駆け回れば、閑かに寝ていたミーが興味を覚えキャットタワーからずっと動きを追っている。機械音に嫌悪感を抱いていないのがせめてもの掬いだ。これで高級な機械に攻撃でもし始めたら目も当てられない。
確かに、経営の勉強に資格の勉強、それに資料を集め書き始めた卒業論文を抱えている。時間ができたのであれば部屋に籠もって勉強ばかりしている自分を気遣っているのがわかっているから、強く言うことができなかった。
痩せてしまったのも、勉強に忙しくおにぎり一つだけで済ませたりしていたからだ。まさか柾人に気付かれるとは思っていなかった。
(いや、気付かないわけがないか。柾人さんはどんなに忙しくてもオレのことちゃんと見てるから)
そういう彼だからこそ、朔弥もすべてを差し出す決意ができたのだ。今は同じ戸籍に名を連ね本当の家族になったが、それ以前から彼のための自分になりたいと頑張るくらい、彼から溢れんばかりの愛情を注がれている。その一つが僅かな変化にも気付いてくれるところで、夕食を抜いて少しでも痩せたことに気付かないはずがない。
すぐに自分の身体を蔑ろにしてしまう悪い癖を直したいと思っていても、すぐになおざりにしては彼に心配をかけさせる自分のダメな部分を目の当たりにして落ち込む。
床のゴミを吸いながら水拭きまで始めた全自動掃除機は、リビングダイニングを走り回り、今朝掃除をしたときよりもずっと美しく床を磨き上げている。こんな小さな機械がと感心し、こっそり安堵する。
これで掃除の時間が勉強に回せる。もう卒業まで日がない朔弥は、大学に行く時間は減ったが、代わりに最後の詰め込みとばかりに咲子からの課題が増えている。論文の方向性はすでに決まり後は書くだけだが、同時並行で複数種類の勉強をこなすのは、正直体力をたっぷりと奪っていたのだ。
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