70 / 100
番外編
分裂と過剰と悦びと(遥人が二人になりました!?) 3
しおりを挟む
「ひぃっ」
「あ、良いところ当たっちゃいました? 気にしないで寝てください。中を洗っているだけですから」
「へ?」
このまま寝かせてくれるんじゃないのか?
あんなに優しかった手が当たり前のように蕾を割り開き、反対の手に握っているシャワーを当ててきた。男同士のセックスは事前準備が必要だと、元々ノンケの遥人に教えたのは他でもない隆則だ。少しでも嫌悪感を抱いてくれればと思っての事だったが、飲み込みの良い彼はすぐにそれを前戯に変えてしまった。綺麗にするだけでなく、次のステップへと移るために解し始める。
隆則の感じる場所を擦っては入り口を広げてくるので、微睡みはあっという間に消え失せ、仕事では使わない筋肉が強張っていく。
「はる……と、だめっ」
響く浴室で必死に声を抑えてのクレームはあっさりと嬉しそうな声に一蹴される。
「本当に感じやすい。早く俺のを挿れて隆則さんをメス達きさせたいな。今日はどうやって可愛がられたいですか? いつもみたいにここにリボンを結びますか? それとも精子が出なくなるまで達きまくりますか?」
「あっ……やめ!」
ぐりぐりと感じる場所を押しては、指を大きく広げてシャワーのお湯を入れていく。返事ができないようにしているとわかっていても、遥人によって慣らされた身体はすぐに愉悦を追いかけて分身の形を変えた。
「答えられないですか? じゃあ俺の好きなやり方で可愛がりますね……なんせ一週間も放っておかれたんですから、今日は覚悟してください」
何をだ。叫びたいのに口から零れるのは抑えた嬌声ばかり。いくら端の部屋とはいえ、風呂場では声が響いて隣近所に聞かれやしないかと怖くなる。男の二人暮らしでどう聞いても男の喘ぎ声なんて流れたら、もうここに住めなくなる。
反論できないまま遥人にいいようにされ、シャワーの湯が止められる頃にはからたらたらと透明の蜜が零れるくらい分身を堅くさせていた。
大判のタオルで包まれ運ばれるのは、遥人の部屋だ。
大きなベッドのヘッド部分には二人が愛し合うための道具が並べてある。
遥人はいつものように隆則を自分の膝の上に乗せると、まだ眠気を引きずる目を見つめてきた。
「あんまり俺のことを放っておくと意地悪しますよ。わかってるんですか?」
「……ごめん」
いくら老後の資金を潤沢にするためとはいえ、遥人を放っておくのは達けないと自分でもわかっている。だが器用ではない隆則は一度夢中になってしまえば他のことが意識から抜けていき、周囲を忘れてしまう。どんなに遥人のことが好きで好きでどうしようもなくても、プログラミングに熱中してしまえば、彼の声すら届かなくなる。
だからいつだって仕事明けはこうして苦言を呈されて謝罪を繰り返している。
けれど今日の遥人は反省の色を示さない謝罪を許してはくれなかった。
「ごめんっていいながら改善してくれないじゃないですか。隆則さんが何を考えているかわかってますよ。でもね、俺だって働いているし、そんなに薄給じゃないつもりです」
公認会計士の資格を大学在学中に取得し、今は外資系の監査法人に勤めている遥人の手取りは、同年齢の平均よりもずっと高いのは知っている。けれど実家に仕送りをしているし、いつも身綺麗にしなければならない分、費用だって嵩むだろう。そんな遥人に寄りかかるのは十五も年上の隆則のプライドの問題だ。
いつだって頼れる相手でいたい。
家事を全部して貰っているのだから、これくらいは。
だから余計に、無理な働き方は止めてくれと言われて素直に頷けない。
「わかっている」
僅かに唇を尖らせて視線を落とした。
「本当にわかっているんですか? 本当に倒れてしまいますよ、こんな働き方を繰り返したら。……そうだ、もう無茶な働き方ができないようにすればいいんだ」
険しくなる表情が、名案を思いついたと輝いた。
「ど……どうやって」
不穏な空気を感じて隆則は逞しい膝の上から逃れようと腰を動かしたその瞬間、後ろから肩を押さえつけられた。
「ひっ……え?」
二人だけの部屋のはずなのに第三の存在に隆則は慌てて後ろを振り向こうとしたが、すぐに遥人に頬を大きな手で包まれ阻まれた。
うなじをキスされる。
「は、ると?」
「安心して、怖がらないで。隆則さんがもう無茶な仕事をしないように二人でたっぷりと可愛がるだけですから」
「だ……誰?」
いつも隆則に自分以外に目移りするなと訴え、視界を塞ぐために口づけてきた。かつて身体だけの関係にあった矢野にすら嫉妬する遥人がこの部屋に他の男を呼んだのだろうか。そんなはずはない……と考えている間に方に置かれた大きな掌が背中を優しいタッチで撫で下ろしていきゾクリと身体が震えた。
「ぁ……んんっ! は、遥人っ」
「いつもみたいに、俺をトロトロにするキス、してください」
逃げようと唇を離すのに、また両手に顔を固定され濃厚なキスを与えられる。遥人をトロトロにするなんてできるはずがない。いつだって自分がドロドロにされて前後不覚になり、卑猥なことをすべて受け入れてしまうのだ。
「あ、良いところ当たっちゃいました? 気にしないで寝てください。中を洗っているだけですから」
「へ?」
このまま寝かせてくれるんじゃないのか?
あんなに優しかった手が当たり前のように蕾を割り開き、反対の手に握っているシャワーを当ててきた。男同士のセックスは事前準備が必要だと、元々ノンケの遥人に教えたのは他でもない隆則だ。少しでも嫌悪感を抱いてくれればと思っての事だったが、飲み込みの良い彼はすぐにそれを前戯に変えてしまった。綺麗にするだけでなく、次のステップへと移るために解し始める。
隆則の感じる場所を擦っては入り口を広げてくるので、微睡みはあっという間に消え失せ、仕事では使わない筋肉が強張っていく。
「はる……と、だめっ」
響く浴室で必死に声を抑えてのクレームはあっさりと嬉しそうな声に一蹴される。
「本当に感じやすい。早く俺のを挿れて隆則さんをメス達きさせたいな。今日はどうやって可愛がられたいですか? いつもみたいにここにリボンを結びますか? それとも精子が出なくなるまで達きまくりますか?」
「あっ……やめ!」
ぐりぐりと感じる場所を押しては、指を大きく広げてシャワーのお湯を入れていく。返事ができないようにしているとわかっていても、遥人によって慣らされた身体はすぐに愉悦を追いかけて分身の形を変えた。
「答えられないですか? じゃあ俺の好きなやり方で可愛がりますね……なんせ一週間も放っておかれたんですから、今日は覚悟してください」
何をだ。叫びたいのに口から零れるのは抑えた嬌声ばかり。いくら端の部屋とはいえ、風呂場では声が響いて隣近所に聞かれやしないかと怖くなる。男の二人暮らしでどう聞いても男の喘ぎ声なんて流れたら、もうここに住めなくなる。
反論できないまま遥人にいいようにされ、シャワーの湯が止められる頃にはからたらたらと透明の蜜が零れるくらい分身を堅くさせていた。
大判のタオルで包まれ運ばれるのは、遥人の部屋だ。
大きなベッドのヘッド部分には二人が愛し合うための道具が並べてある。
遥人はいつものように隆則を自分の膝の上に乗せると、まだ眠気を引きずる目を見つめてきた。
「あんまり俺のことを放っておくと意地悪しますよ。わかってるんですか?」
「……ごめん」
いくら老後の資金を潤沢にするためとはいえ、遥人を放っておくのは達けないと自分でもわかっている。だが器用ではない隆則は一度夢中になってしまえば他のことが意識から抜けていき、周囲を忘れてしまう。どんなに遥人のことが好きで好きでどうしようもなくても、プログラミングに熱中してしまえば、彼の声すら届かなくなる。
だからいつだって仕事明けはこうして苦言を呈されて謝罪を繰り返している。
けれど今日の遥人は反省の色を示さない謝罪を許してはくれなかった。
「ごめんっていいながら改善してくれないじゃないですか。隆則さんが何を考えているかわかってますよ。でもね、俺だって働いているし、そんなに薄給じゃないつもりです」
公認会計士の資格を大学在学中に取得し、今は外資系の監査法人に勤めている遥人の手取りは、同年齢の平均よりもずっと高いのは知っている。けれど実家に仕送りをしているし、いつも身綺麗にしなければならない分、費用だって嵩むだろう。そんな遥人に寄りかかるのは十五も年上の隆則のプライドの問題だ。
いつだって頼れる相手でいたい。
家事を全部して貰っているのだから、これくらいは。
だから余計に、無理な働き方は止めてくれと言われて素直に頷けない。
「わかっている」
僅かに唇を尖らせて視線を落とした。
「本当にわかっているんですか? 本当に倒れてしまいますよ、こんな働き方を繰り返したら。……そうだ、もう無茶な働き方ができないようにすればいいんだ」
険しくなる表情が、名案を思いついたと輝いた。
「ど……どうやって」
不穏な空気を感じて隆則は逞しい膝の上から逃れようと腰を動かしたその瞬間、後ろから肩を押さえつけられた。
「ひっ……え?」
二人だけの部屋のはずなのに第三の存在に隆則は慌てて後ろを振り向こうとしたが、すぐに遥人に頬を大きな手で包まれ阻まれた。
うなじをキスされる。
「は、ると?」
「安心して、怖がらないで。隆則さんがもう無茶な仕事をしないように二人でたっぷりと可愛がるだけですから」
「だ……誰?」
いつも隆則に自分以外に目移りするなと訴え、視界を塞ぐために口づけてきた。かつて身体だけの関係にあった矢野にすら嫉妬する遥人がこの部屋に他の男を呼んだのだろうか。そんなはずはない……と考えている間に方に置かれた大きな掌が背中を優しいタッチで撫で下ろしていきゾクリと身体が震えた。
「ぁ……んんっ! は、遥人っ」
「いつもみたいに、俺をトロトロにするキス、してください」
逃げようと唇を離すのに、また両手に顔を固定され濃厚なキスを与えられる。遥人をトロトロにするなんてできるはずがない。いつだって自分がドロドロにされて前後不覚になり、卑猥なことをすべて受け入れてしまうのだ。
75
あなたにおすすめの小説
課長、甘やかさないでください!
鬼塚ベジータ
BL
地方支社に異動してきたのは、元日本代表のプロバレー選手・染谷拓海。だが彼は人を寄せつけず、無愛想で攻撃的な態度をとって孤立していた。
そんな染谷を受け入れたのは、穏やかで面倒見のいい課長・真木千歳だった。
15歳差の不器用なふたりが、職場という日常のなかで少しずつ育んでいく、臆病で真っ直ぐな大人の恋の物語。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。
みどりのおおかみ
BL
「強情だな」
忠頼はぽつりと呟く。
「ならば、体に証を残す。どうしても嫌なら、自分の力で、逃げてみろ」
滅茶苦茶なことを言われているはずなのに、俺はぼんやりした頭で、全然別のことを思っていた。
――俺は、この声が、嫌いじゃねえ。
*******
雑兵の弥次郎は、なぜか急に、有力武士である、忠頼の寝所に呼ばれる。嫌々寝所に行く弥次郎だったが、なぜか忠頼は弥次郎を抱こうとはしなくて――。
やんちゃ系雑兵・弥次郎17歳と、不愛想&無口だがハイスぺ武士の忠頼28歳。
身分差を越えて、二人は惹かれ合う。
けれど二人は、どうしても避けられない、戦乱の濁流の中に、追い込まれていく。
※南北朝時代の話をベースにした、和風世界が舞台です。
※pixivに、作品のキャライラストを置いています。宜しければそちらもご覧ください。
https://www.pixiv.net/users/4499660
【キャラクター紹介】
●弥次郎
「戦場では武士も雑兵も、命の価値は皆平等なんじゃ、なかったのかよ? なんで命令一つで、寝所に連れてこられなきゃならねえんだ! 他人に思うようにされるくらいなら、死ぬほうがましだ!」
・十八歳。
・忠頼と共に、南波軍の雑兵として、既存権力に反旗を翻す。
・吊り目。髪も目も焦げ茶に近い。目鼻立ちははっきりしている。
・細身だが、すばしこい。槍を武器にしている。
・はねっかえりだが、本質は割と素直。
●忠頼
忠頼は、俺の耳元に、そっと唇を寄せる。
「お前がいなくなったら、どこまででも、捜しに行く」
地獄へでもな、と囁く声に、俺の全身が、ぞくりと震えた。
・二十八歳。
・父や祖父の代から、南波とは村ぐるみで深いかかわりがあったため、南波とともに戦うことを承諾。
・弓の名手。才能より、弛まぬ鍛錬によるところが大きい。
・感情の起伏が少なく、あまり笑わない。
・派手な顔立ちではないが、端正な配置の塩顔。
●南波
・弥次郎たちの頭。帝を戴き、帝を排除しようとする武士を退けさせ、帝の地位と安全を守ることを目指す。策士で、かつ人格者。
●源太
・医療兵として南波軍に従軍。弥次郎が、一番信頼する友。
●五郎兵衛
・雑兵。弥次郎の仲間。体が大きく、力も強い。
●孝太郎
・雑兵。弥次郎の仲間。頭がいい。
●庄吉
・雑兵。弥次郎の仲間。色白で、小さい。物腰が柔らかい。
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる