テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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ユグドラシルの双子の主・和泉鏡香(第3話)

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ーーモリガン視点ーー
 
 あの世間知らずなシヴィリアンズといい、このチャイナドレスの女といい、最近はけしからん連中ばかりがこの森を訪れる。

 今目の前にいる女は、年のころ20程度か。服装のせいで、体のラインがくっきりと見えてしまうのがなお腹立たしい・・・いや、決してうらやましいわけではないぞ、断じて違うのじゃ。

 わしだって、あと5年もすればこの女のようなナイスな体つきに・・・ではなくて!

 どうやら、この女はシヴィリアンズどもに依頼されて、生意気にもこのわしー秋の領域最大にして最強の魔力を持つこのモリガン様とやり合うつもりらしい。

「いいじゃろう」

 わしは、目の前の女ー確か、《ユグドラシル》とかいうチームの和泉鏡香とか言ったかーを真正面に見据え、

「この領域最大最強の魔女であるモリガン様の実力、思い知らせてくれるわ」

 高らかに実力行使を宣言した。

 和泉とかいう女は、見たところ丸腰だ。ただ、さすがに何の備えもなくいきなりわしに挑むとは考えにくい。それに、この女からはー抑えてはいるようだがー魔力の波動も感じられる。侮れない相手には違いなさそうだ。

 とはいえ、いきなり全力で挑むのはばかげている。そこで、まずは様子見ということで、簡単な魔法から試してみようかと思う。

 魔法球をいくつか作り出す。その名の通り、何のひねりもないただの魔力の塊を球状にしたものだ。こんなものは、多少魔力があれば童でも作れる程度のものだが、そこはこのわしーこの領域最強の魔女であるわしが作り出すものだ。たとえ最弱級の攻撃魔法であったとしても威力は桁違いだ。

 術式を、大体20個展開する。簡単すぎて一瞬に展開できるが、先ほども言った通り、威力は他のやつらとは桁が違う。たとえ1個でも命中すれば、このひ弱そうな女なら重傷は免れんじゃろう。

 ちなみに、魔法を使うのに重要なのは術式であり、詠唱はほとんど影響がない。というか、はっきり言って必要ない。ゆえに、各魔法にも公式な名称というものは、実は存在しない。なので単に魔法球と呼んでいる。

 ・・・身も蓋もないことを言えば、戦っている最中に技名や魔法名を叫ぶのは、いささか恥ずかしいということじゃ。

「さて、それではこちらから参るぞ」

 どう料理してやろうかのう。
 
 わしは、目の前の獲物を前に、久しぶりに高揚感が沸き起こってきた。

「くらえ!」

 魔法球を全弾発射した。低級魔法とはいえ、様々な角度から襲い来る多重攻撃だ。回避するのは困難なはず。

「この数ではかわすこともできまい」

 20個の魔法球の狙いは正確だ。逃げ道もないはず。

 だが・・・。

「別にかわす必要はないですよ~。要は、全て壊せばいいのですから」

 女ー和泉鏡香は不敵に笑うと、抑えていた自身の魔力を解放し始めた。

 突然、彼女の足元に散らばっている落ち葉が、彼女の体の周囲を守るかのように覆い始める。和泉を中心に、無数の落ち葉が回転し、まるで竜巻にまかれたかのように宙に舞っている。

「ほう、落ち葉を魔法で操っているのか」

 なかなか興味深い魔法の使い方だ。近くの物体に魔力を与え、意のままに操る。これがやつの能力なのか。

「だが、そんな枯れ葉風情で何ができるというのじゃ」

 魔力を与えられているとはいえ、所詮は落ち葉。わしの魔力の前には到底太刀打ちできないはず。

 ・・・だが、わしの予想に反して、わが魔法球は一瞬にして全て砕かれた。

 すべての魔法球に、彼女の魔力が与えられた落ち葉が一斉に飛び掛り、そして貫通して無力化してしまったのだ。

「あなたこそ、私を見くびっているのではありませんか」

 不敵に笑いながら、和泉は言う。

「この程度の魔法球であれば、私の魔力が込められた小石や落ち葉程度でいくらでも対処できますよ」

 なるほど・・・。

 さすがにこのわしに挑んでくるだけのことはある。魔力の容量も、かなりのものだということが今ので十分分かった。

 確かに、この女相手に手加減などする必要もなさそうだ。

「なるほどな。かなりの魔力を有しておるようじゃな、お主」

 よく考えてみれば、簡単に終わってしまっては面白くもない。

「ならば、わしも少々本気を出すか」

 言い知れぬ高揚感がわしを支配する。

「覚悟するがいい、和泉鏡香とやら。このわしを本気にさせた以上、無事では済まぬと思え」

 わしは、術式を素早く構築した。この魔法は、わしが扱える中でも最大クラスのものだ。間違いなく、この辺り一帯が吹き飛んでもおかしくないくらいの威力を誇っている。構築には多少時間がかかるが、決まればまず間違いなく一撃必殺ともいえる破壊力はある。

 この和泉とやらがどれだけの魔力を秘めていようが、これを食らって無事では済むまい。

 和泉自身は、不敵な笑みを浮かべつつただこちらの様子を窺っているようにも見える。だが、これを発動されていつまでその余裕が持つのか・・・。

「では、行くぞ!」

 術式は、完成した。わしは、宙へと飛び、たった今作り出した最大級の魔法球を、眼下の和泉に向けて放った!

「これでしまいじゃ」

 わしは、自身の勝利を確信したーー。
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