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ミケとポン太

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清野江紀と薬師寺咲那(第9話)

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ーー咲那視点ーー

 相手が鏡幕を張り巡らせている以上、対処する方法は限られている。こちらからの魔法攻撃は、全て鏡幕によって反射されてしまうので、鏡幕の強度を上回るダメージを与えることができなければ、こちらがじり貧となってしまう。

 だが、あたしの攻撃なら相手の強度を上回ることは可能だ。魔法剣のように、何らかの媒体に魔力を宿した武器であれば、反射されず、弾かれる程度に留まる。もっとも、弾かれ方次第によってはこちらが体勢を崩される可能性もあるので、なるべくならあまり弾かれることなく何とかこちらのペースにもっていきたい。

 あたしは、魔法剣ーエクセリオンの刀身の魔力を高めた。相手の強度を上回るには、どうやら力の出し惜しみなどしていられる状況ではないようだった。とはいえ、さすがにこちらの魔力容量も限られているので、ある程度の余力は残しておく必要がある。

 亜人種型デミヒューマンタイプとの戦いは、まだ始まったばかりなのだ。

「覚悟しな蟲けら、その鬱陶しい鏡幕ごと切り裂いてやるぜ」

「大した自信だね、お嬢さん。まあせいぜい頑張ってみなよ」

 相変わらず、悪戯好きな悪ガキを連想させるような声色でこちらを挑発してきた。

 いいぜ、挑発に乗ってやる・・・!

「はあ!」

 あたしは再び亜人種型デミヒューマンタイプに斬りかかった。

 ガキイィィン!魔法剣と鏡幕が接触するたびに火花が散った。ついでに、激しい金属音が辺りにこだまする。しばらくの間、あたしはひたすら無言で斬撃を繰り出していた。

 刀身の魔力を高めているので、さすがに受けただけでこちらの体勢を崩されるということはないが・・・。 

 やはり、刀身の魔力をもう少し高める必要があるなー。
 
 何度か相手の剣を受けてみて分かったことは、相手の鏡幕を砕くには、さらなる強度が必要だということだ。後々のことも考えて、なるべくなら魔力は温存しておきたいところだが、仕方がない。

 あたしは斬撃を繰り出しながら、魔力をさらに刀身に流した。さすがに全魔力は使えないが、これくらいなら、相手の強度を上回れるはずだ。

 亜人種型デミヒューマンタイプは、相変わらずのニヤケ面であたしの攻撃を受け止めている。その余裕しゃくしゃくと言った面構えが頭にくる。

 今に見ていろ・・・!

 亜人種型デミヒューマンタイプが剣を振り下ろす。それをあたしが受け止めた。

 パリィィン!

 何かが砕けるような音があたりに響いた。

 亜人種型デミヒューマンタイプの剣に亀裂が入っている。どうやら、あたしのエクセリオンの強度が勝ったようだ。初めて亜人種型デミヒューマンタイプの顔に驚愕の色が浮かんだ。

「!」

 亜人種型デミヒューマンタイプが後方に飛んで距離を取る。予想外の反撃に、少しは警戒したのかー。

「やるねえ、お嬢さん」

 亜人種型デミヒューマンタイプ自身の剣を腕の形に戻して、その傷を確認していた。傷・・・といっても、別に致命傷を与えたわけではない。人間に例えるならば切り傷やかすり傷くらいなものだろう。

 だがー。

「僕の体に傷をつけた人間は初めてだよ」

 相手のプライドは大いに傷つけたようだった。

「ああ、そうかい」

 表情が少し険しさを増した亜人種型デミヒューマンタイプに対し、あたしはにっこりと笑顔を見せてやった。

「そりゃ光栄だね」

 とはいえ、相手に与えたダメージなどほとんどないに等しいことには変わりない。今までは、相手もあたしを軽く見ていただろうが、この手の連中というのは、自分のプライドを傷つけられた時が一番危ない。

 これであたしに対して油断を見せることもないだろう。

「君を過小評価していたよ」

 亜人種型デミヒューマンタイプが鏡幕を解除し始めた。代わりに、自身の魔力を解放し始めた。

 無数の魔法球が空中に浮かぶ。その数数十個である。

 さらには、それだけではなかった。

「地中にも魔力を放ちやがったな・・・」

 地面に打ち込まれた魔力の塊は、まるで「地雷」のように地中に配置され、あたしを足元から攻撃しようとしている。しかも、魔力の波動の場所が移動していることから、この「地雷」は地中を自由自在に動けるようだった。

 空中に配置された魔法球は視覚で、地中のものは魔力の波動を頼りに避けなければならない・・・。

 もっとも、相手の攻撃を「捉えられる」だけマシではある。相手によっては、全く確認できない攻撃を仕掛けてくるものもいるからだ。

 ただ数が多い。さすがにすべてを回避しながら戦うのは難しいだろう。

 多少ダメージを受ける覚悟は必要になりそうだ。

「さあ、このまま一気に決めてしまおうか、お嬢さん。君が倒れるまで何発でも食らわせてやるよ」

 亜人種型デミヒューマンタイプが再び笑う。いやな笑い方だ。自分の勝利を確信しているのだろう。

「君たち人間より圧倒的に魔力容量は多いからね。おそらく君の数十倍くらいはある。君が跡形もなく消えてなくなるまで撃ってあげようか」

「おもしれえ、そんなボール球であたしをどうにかできるってんなら」

 あたしはエクセリオンを構え直した。

「やって見せてみろってんだ」

 こうして、第2ラウンドは始まろうとしていたー。
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