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チーム《ユグドラシル》と教会騎士たち(第20話)

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 晶の魔笛剣が、白いコートの男ー蟲憑きの心臓を貫いた。さすがの蟲憑きも、憑りついている本体を殺されてしまえば、もはや生きていくことはできなくなる。

 蟲憑きは、完全に絶命したー。

「・・・!」

 晶の顔に苦悶の色が浮かぶが、蟲憑きに憑りつかれた人間を救う術など存在しない。結局は、自ら手を下すしかないのだ。自分がやらなければ、結局は早苗やモリガンにやらせることになってしまう。さすがに、彼女たちに背負わせるのは酷というものだろう。

「晶・・・大丈夫か、お主」

「晶君・・・」

 晶の表情を見て取ったモリガンが心配そうに尋ねてくる。隣にいる早苗も同様だ。仕方がないとはいえ、例え相手が人格を既に失っているとはいえ、人を手にかけたという点では違いはない・・・。

「大丈夫だ、モリガン、清野。どのみち、彼を本当の意味で救うには、こうするしかないんだ。オレは大丈夫だから、心配はするな、二人とも」

 魔笛剣をしまい、半分は自分自身に言い聞かせるような感じで応じる晶。そんな彼の様子を、いまだ心配そうに見守る二人ではあったが・・・。

「これで、蟲憑きは倒したわけだし、あとはゼクスとイリアたちに任せておけば、魔物の方はけりが着くだろう。さっそく知らせに行くか」

 そうだ、この蟲憑きを倒したから、これでようやく、ゼクスたちは魔物を倒すことができるようになる。

「知らせるなら、わしの使い魔を飛ばせばいいじゃろ。わしに任せておけい」

 言うが早いか、モリガンは例の単眼蝙蝠の使い魔を生み出し、ゼクスたちが魔物と対峙しているであろう場所へと向かわせる。

「これで、あいつらが魔物を片付けてしまえば、とりあえず今回の一件は終わりというわけじゃな」

「そうだねえ、でも、大変だったよね。蟲憑きさんが相手なんて」

 蟲憑きと戦うことは、つまりは憑りつかれた人間自身とも戦わなければならないということになる。害蟲駆除を専門としている以上、避けられない戦いではあるということは、十分わかっているのだが、それでも実際に最後人間にとどめを刺すということになるのは、なかなか慣れるものではない。

 少なくとも、モリガンや早苗にはやらせたくない役回りである。

「確かに少し疲れたな・・・ゼクスたちが魔物を仕留めるまでは、しばらく待つか・・・」

 もはや、仏さんとなってしまった白いコートの男に手を合わせて、その冥福を祈る。あとは、事情を公安局辺りに説明し、遺体の引き渡しを行うだけだ。身元が判明するのは、まだ先のことになりそうだがー。

 

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