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公安局にて(第1話)
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公安局の中に入るー。
公安局というと、お堅いイメージはあるが、前文明時代に例えれば警察そのものだ。遺失物の扱いからご近所トラブル、はては刑事事件まで扱うのも前文明時代と全く同じである。
「公安局か・・・《ゼクスティン》のやつらの下部組織なんだよな」
「そうだな」
主に治安維持を担当するチーム《ゼクスティン》が公安局の上部組織となる。
「うちの咲那姉には少し関係あるんだよな、《ゼクスティン》は」
晶が思い出したようにつぶやく。
「薬師寺か・・・あの女の姉貴だったか、確か《ゼクスティン》の副長を務めていたのは」
イリアも薬師寺咲那のことはよく知っている。たまにチーム同士で共闘する時、何度も彼女の剣の腕前には驚嘆させられたものだった。確か「天元一刀流」という流派の出だと記憶している。咲那本人は、自分は破門された身だと言っているが、どう見てもあれは免許皆伝クラスだろう。
少なくとも、自分には一生たどり着けない境地にあることだけはわかる。
「姉貴・・・というより、4つ上の姉弟子だな。同じ天元一刀流の。免許皆伝らしい」
「薬師寺と同じくらいの実力ってわけか」
「いや・・・」
晶が少し思案顔になりながら、
「実際に二人は何度も手合わせしているんだが、咲那姉は今のところ彼女から1本も取ったことはないらしい」
咲那が自嘲気味に以前語っていた内容を思い出す。咲那曰くー、
「免許皆伝と破門の身では絶対に縮められない差がある」
とのことだった。
「マジか・・・あれ以上の使い手はそうそういないだろうに」
これはイリアの純粋な評価だ。イリアは、実力のある者については敬意を払うのを忘れることはない。その点では、出会えばいつもケンカばかりのモリガンについても同じだ。なんだかんだ言って、彼女の魔力の強大さについては認めてはいるのである。
・・・ただ、いつも出会えばお互いに罵詈雑言の応酬に終わってしまうのだが。
「ふむ、わしらも何度か二人の立ち合いを見たのじゃが・・・」
話の内容に興味を示したのか、モリガンが途中から割って入ってきた。
「まさに、紙一重みたいなもんじゃよ。いつもすんでのところで咲那が負ける・・・ただ、それは本当にちょっとした差なんじゃ」
「そうだねえ、ほとんど実力的には互角といってもいい試合ばかりなんだけど・・・」
早苗も話に割り込んできた。
「でも、不思議なんだけど、どうしても最後咲那さんが及ばないんだよねぇ。いっつも惜しいところで1本取られちゃう」
二人の話を聞いて、以前に咲那が語っていた「縮められない差」について思いを馳せる晶。多分その差は、実際にその境地に達した者達にしかわかりえないことなのだろう。だから、早苗やモリガンにそれを理解しろと言っても無理な話だし、晶本人でさえそれはわかりえないことのはずだ。
結局、部外者には
「いい線行っているのに、最後にはなぜか咲那が必ず負ける」
という形で結論付けられてしまうのだ。
「一条紗耶香さんか・・・」
咲那の姉弟子である彼女の姿を思い出しながら、思わず独り言ちる晶であったー。
公安局というと、お堅いイメージはあるが、前文明時代に例えれば警察そのものだ。遺失物の扱いからご近所トラブル、はては刑事事件まで扱うのも前文明時代と全く同じである。
「公安局か・・・《ゼクスティン》のやつらの下部組織なんだよな」
「そうだな」
主に治安維持を担当するチーム《ゼクスティン》が公安局の上部組織となる。
「うちの咲那姉には少し関係あるんだよな、《ゼクスティン》は」
晶が思い出したようにつぶやく。
「薬師寺か・・・あの女の姉貴だったか、確か《ゼクスティン》の副長を務めていたのは」
イリアも薬師寺咲那のことはよく知っている。たまにチーム同士で共闘する時、何度も彼女の剣の腕前には驚嘆させられたものだった。確か「天元一刀流」という流派の出だと記憶している。咲那本人は、自分は破門された身だと言っているが、どう見てもあれは免許皆伝クラスだろう。
少なくとも、自分には一生たどり着けない境地にあることだけはわかる。
「姉貴・・・というより、4つ上の姉弟子だな。同じ天元一刀流の。免許皆伝らしい」
「薬師寺と同じくらいの実力ってわけか」
「いや・・・」
晶が少し思案顔になりながら、
「実際に二人は何度も手合わせしているんだが、咲那姉は今のところ彼女から1本も取ったことはないらしい」
咲那が自嘲気味に以前語っていた内容を思い出す。咲那曰くー、
「免許皆伝と破門の身では絶対に縮められない差がある」
とのことだった。
「マジか・・・あれ以上の使い手はそうそういないだろうに」
これはイリアの純粋な評価だ。イリアは、実力のある者については敬意を払うのを忘れることはない。その点では、出会えばいつもケンカばかりのモリガンについても同じだ。なんだかんだ言って、彼女の魔力の強大さについては認めてはいるのである。
・・・ただ、いつも出会えばお互いに罵詈雑言の応酬に終わってしまうのだが。
「ふむ、わしらも何度か二人の立ち合いを見たのじゃが・・・」
話の内容に興味を示したのか、モリガンが途中から割って入ってきた。
「まさに、紙一重みたいなもんじゃよ。いつもすんでのところで咲那が負ける・・・ただ、それは本当にちょっとした差なんじゃ」
「そうだねえ、ほとんど実力的には互角といってもいい試合ばかりなんだけど・・・」
早苗も話に割り込んできた。
「でも、不思議なんだけど、どうしても最後咲那さんが及ばないんだよねぇ。いっつも惜しいところで1本取られちゃう」
二人の話を聞いて、以前に咲那が語っていた「縮められない差」について思いを馳せる晶。多分その差は、実際にその境地に達した者達にしかわかりえないことなのだろう。だから、早苗やモリガンにそれを理解しろと言っても無理な話だし、晶本人でさえそれはわかりえないことのはずだ。
結局、部外者には
「いい線行っているのに、最後にはなぜか咲那が必ず負ける」
という形で結論付けられてしまうのだ。
「一条紗耶香さんか・・・」
咲那の姉弟子である彼女の姿を思い出しながら、思わず独り言ちる晶であったー。
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