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カルミナとブラーナ(第8話)

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「よし、今日やることはこれで決まったな」

 というわけで、一同はこれからゼルキンス村のある惑星Σ-11のある空域を目指すことになった。目的の惑星は、ここからさほど遠くに離れているわけではない。この船ならあと1~1時間半くらいでたどり着けるだろう。

「まあ、配達も重要だけど、今回は害蟲駆除の方がメインになりそうね・・・」

 黒羽の言っていた「強い個体」の存在がかなり気がかりではあったが、仕事は仕事だ、無事にこなさなければ。

「さて、そんじゃお嬢よ、さっそくその惑星付近まで出発するか?」

 操舵輪を握った武人が、自分の出番だとばかりにカルミナへ出発を促した。彼の飛行船操縦技術はかなりのものだ。というか、彼なしでは、カルミナ達はとてもではないが空の旅など行うことはできなかっただろう。

「ええ、武人さん。お願いします」

 武人にお願いし、さっそく問題の惑星へと向かう。

 飛行船「白波号」の周囲に、魔力乱流の影響からか、いつもより多量の魔素がまとわりついており、それが若干、航行に影響を与えているようだが、武人の腕なら問題なくたどり着けることだろう。

「ゼルキンス村か・・・本当になぁんにもないところよね・・・」

 ブラーナがため息交じりにぼやいた。確かに観光名所などもあるわけでもなく、辺り一面綿花畑というだけのど田舎だ。若者が遊べるような施設もほとんどなかった。あれでは、住んでいる若者のフラストレーションがたまる一方なのも頷ける。過疎化の著しい場所と言えるだろう。

「まあ、誰かさん達が面倒ごとさえ起こさなければ、本当になぁんにもない場所だわ・・・」

 の部分をやたらと強調しながらカルミナがぼやく。その横で、男二人がギクッとした顔で冷や汗をかいていた。

 まあ、こいつらの場合は釘を刺しても刺しすぎるということはないだろう。

「それじゃあ、惑星Σ-11のゼルキンス村へと向けて出発!あと、各自自分のもきちんと確認しておいて・・・相手はなんたってB級クラスの害蟲だろうから」

「OK」

「わーったよ」

「うむ」

 ブラーナ、翔、卓が各々返事をする。

「では、私も準備しておきます」

 それらに続き、黒羽も席を立ち、準備と称して自室へと足を向ける。

「あら、黒羽。あんたも出るの?」

 こういった場面で黒羽が自分から積極的に動こうとするのは、実は珍しいことでもあった。普段は出不精なのか、ほとんど船の中にいて、あまり表には出たがらない。

 仮に表に出ることがあるとしても、全身黒ずくめのフード付きコートといった身なりで出歩くため、これまた周囲から奇異な目で見られることがほとんどだった。

 この辺りが、チームメンバーをして

「かわいいけどなんか残念な子」

と言われる所以である・・・。

「ええ、今回は結構強い害蟲との戦いになりそうなので、戦力的には私も出向いた方がいいでしょう」

 そう言って、カルミナを軽く一瞥してから、黒羽は操舵室を後にしたー。



 

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