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水無杏里の物語(第23話)
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途中、森の分岐点で、益蟲のホルルと出会い、そのまま桐ケ谷楓のアトリエへと向かうカイトたち。
薄暗い森の獣道をしばらく歩いていくと、開けた場所に出た。そして、そこには・・・
「ようこそ、少年よ・・・ここが我が主・桐ケ谷楓のアトリエじゃ」
ホルルがはためき、奥の建物の屋根辺りを飛び回りながら、カイトと杏里を招き入れた。
「ここが・・・意外と小奇麗な家ですね」
桐ケ谷楓は相当な変人だということで、彼女の住んでいる家もかなり変わったものなのではないか・・・とばかり思いこんでいたカイトは、意外にも質素で普通の作りの家に逆に驚く。
一言で言えば、森の中の一軒家・・・といったところで、とてもアトリエと呼べるようなものではなかった。
「もともと、ここに住んでいた人がいなくなって、それを楓さんが見つけて使っているのよね」
「え、いなくなったって・・・」
「失踪したらしいわ・・・何十年も空き家だったらしくて、最初は廃墟だったって楓さんが言ってた」
「それを楓が使い始めたというわけじゃ・・・」
完全な空き家・・・とはいえ、勝手に使っていいものでも無いとは思うが・・・。
「まあ、少年の疑問も尤もじゃな。しかし、元の所有者とはどうやっても連絡も取れんし、お役所の方でもまあ使い道があるなら・・・と、特別に許可したらしいのじゃがのう」
他にも事情がありそうだが、今はそれを詮索しても仕方がない。まずは、カイト本人が桐ケ谷楓に呼び出されている以上、彼女に会わないことには話が進まない。
「とりあえず、楓さんに会いに行きましょ。ホルルさん、ご案内ありがとう」
「いやあ、何々・・・」
ホルルに導かれて、杏里と楓は楓の家の玄関へと向かったー。
ーー
「やあ、来たな杏里・・・おっと、そちらが例の少年か」
家の中で出迎えてくれたのは、赤毛で短髪、左目が前髪に隠れたラフな格好の女性だった。年は、大体20代半ばといったところで、煙草を指に挟みながら、カイトのことを物珍し気に見つめていた。
「なんじゃ、楓・・・わし以外に誰か呼んでおったのか」
ふいに、楓の背後から少女の声が聞こえてきた。
「モリガン、ちょうどいい、アンタにも手伝ってもらうことになりそうだから、こっちに来な」
「むむ」
楓の後に続き、現れたのは、年の頃12~13くらいの金髪の少女ー瞳が大きめで、ツインテールに髪を結っており、ロリータファッションとでもいうのだろうかーそんな恰好をしていた。まだあどけなさを残してはいるものの、容姿は人目を惹くものがあり、精巧につくられた人形のような愛らしさがある。ただ、いささか自信家っぽいところがあるのか、特に、形のいい高い鼻は、そのまま彼女の高慢さを示していた。
「紹介するよ、杏里。そして・・・アンタがカイトだね?このこまっしゃくれたガキは、モリガンと言って魔女の卵みたいなもんさ」
「誰がこまっしゃくれたガキか!それにわしは卵ではなくもう立派な魔女じゃ!」
モリガンと呼ばれた少女が、楓のあんまりな紹介の仕方に、抗議の声を挙げた。そして、その後腰に手を当て、にんまりと笑みを浮かべながら、
「聞いて驚け!わしは大樹の秋の領域最大の魔女ーモリガン様じゃ!」
と、自信たっぷりに自己紹介したのだったー。
薄暗い森の獣道をしばらく歩いていくと、開けた場所に出た。そして、そこには・・・
「ようこそ、少年よ・・・ここが我が主・桐ケ谷楓のアトリエじゃ」
ホルルがはためき、奥の建物の屋根辺りを飛び回りながら、カイトと杏里を招き入れた。
「ここが・・・意外と小奇麗な家ですね」
桐ケ谷楓は相当な変人だということで、彼女の住んでいる家もかなり変わったものなのではないか・・・とばかり思いこんでいたカイトは、意外にも質素で普通の作りの家に逆に驚く。
一言で言えば、森の中の一軒家・・・といったところで、とてもアトリエと呼べるようなものではなかった。
「もともと、ここに住んでいた人がいなくなって、それを楓さんが見つけて使っているのよね」
「え、いなくなったって・・・」
「失踪したらしいわ・・・何十年も空き家だったらしくて、最初は廃墟だったって楓さんが言ってた」
「それを楓が使い始めたというわけじゃ・・・」
完全な空き家・・・とはいえ、勝手に使っていいものでも無いとは思うが・・・。
「まあ、少年の疑問も尤もじゃな。しかし、元の所有者とはどうやっても連絡も取れんし、お役所の方でもまあ使い道があるなら・・・と、特別に許可したらしいのじゃがのう」
他にも事情がありそうだが、今はそれを詮索しても仕方がない。まずは、カイト本人が桐ケ谷楓に呼び出されている以上、彼女に会わないことには話が進まない。
「とりあえず、楓さんに会いに行きましょ。ホルルさん、ご案内ありがとう」
「いやあ、何々・・・」
ホルルに導かれて、杏里と楓は楓の家の玄関へと向かったー。
ーー
「やあ、来たな杏里・・・おっと、そちらが例の少年か」
家の中で出迎えてくれたのは、赤毛で短髪、左目が前髪に隠れたラフな格好の女性だった。年は、大体20代半ばといったところで、煙草を指に挟みながら、カイトのことを物珍し気に見つめていた。
「なんじゃ、楓・・・わし以外に誰か呼んでおったのか」
ふいに、楓の背後から少女の声が聞こえてきた。
「モリガン、ちょうどいい、アンタにも手伝ってもらうことになりそうだから、こっちに来な」
「むむ」
楓の後に続き、現れたのは、年の頃12~13くらいの金髪の少女ー瞳が大きめで、ツインテールに髪を結っており、ロリータファッションとでもいうのだろうかーそんな恰好をしていた。まだあどけなさを残してはいるものの、容姿は人目を惹くものがあり、精巧につくられた人形のような愛らしさがある。ただ、いささか自信家っぽいところがあるのか、特に、形のいい高い鼻は、そのまま彼女の高慢さを示していた。
「紹介するよ、杏里。そして・・・アンタがカイトだね?このこまっしゃくれたガキは、モリガンと言って魔女の卵みたいなもんさ」
「誰がこまっしゃくれたガキか!それにわしは卵ではなくもう立派な魔女じゃ!」
モリガンと呼ばれた少女が、楓のあんまりな紹介の仕方に、抗議の声を挙げた。そして、その後腰に手を当て、にんまりと笑みを浮かべながら、
「聞いて驚け!わしは大樹の秋の領域最大の魔女ーモリガン様じゃ!」
と、自信たっぷりに自己紹介したのだったー。
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