テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第25話)

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「アサギは・・・行ってしまいましたね・・・」

 黒羽が、どことなく寂寥感のある声でポツリと漏らした。

「いいじゃねえか、あんな危ない女・・・追っ払えてよかっただろ?」

 翔は、黒羽が襲われたことについて、まだ憤慨しているらしく、彼女が去っていったであろう方角を睨みつけながら吐き捨てた。

「ただ、いつまた襲ってこないとも限らないわね・・・そうなる前に、黒羽を安全な場所まで連れて行かないと」

 カルミナの懸念も尤もだ。今回は「引き分け」だったものの、邪術師を目の敵にする東方の人間が、このまま黒羽のことを捨て置くとも考えにくい。また、黒羽の前に現れる可能性は高いだろう。そうなる前に、やはり大樹の医療機関にでも連れて行った方がいいだろう。

 邪術師に対する医学的な研究がどこまで進んでいるかは不明だが、少しでも症状の進行を抑制できるというのであれば、それに賭けてみるだけの価値はある。

「・・・皆さん、申し訳ありません。私のせいで・・・」

 黒羽が申し訳なさそうに首を垂れるが、その頭をカルミナが優しく撫でた。ウェーブのきつい黒髪が、カルミナの細い指に絡むが、不思議とそこにわずらわしさはない。そして、頭を撫でられている黒羽自身も心地よさそうだった。

「仲間なんだから気にしないの!アンタはもう少しあたしらを頼っていいんだよ」

「当然だな」

 カルミナの言葉に、卓も相槌を打つ。当初は黒羽のことを警戒していたブラーナでさえ、穏やかな笑みを浮かべながら頷いていた。

「・・・はい」

 うつむき加減に黒羽が応えた。表情は陰に隠れて見えにくいが、多分泣き笑いのような表情を浮かべていることだろう。

 考えてみれば、これまでの人生において他人に優しくされたのは、この《ラピュタ》の面々と、彼らのマスター以外ではなかった。どこへ行っても気味悪がられ、人から避けられていた。黒羽自身は、その状況に慣れていて、それが当たり前だと思っていたから、そのこと自体をさほどつらいとは感じたことはない。

 だが、それは人の温かさを知らなかったからかもしれない。

 ーやはり、この人たちからは離れたくはないー。

 ・・・いずれ、アサギと再び戦うことになったとしても、この4人と共にいるためにも、負けるわけにはいかない。そして、いつまでも彼らといるために、自分のこの症状を、生涯に渡り抑制できる術を身につけなければー。

 他人任せではなく、自分でも、何か方法がないか、探ってみる必要はありそうだ。

 これまでの受け身的な自分を少し恥ながら、黒羽は決意を新たにしたー。
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