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モリガン一人旅(第32話)
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「自分だけ逃げられるわけないよ!僕は・・・戦う」
カイトの決意は固く、とてもそれを覆せそうにはなかった。
「し、しかし・・・気持ちはわかるが、お主は戦えるのか!?」
相手は、凄腕の女剣士ーたとえ飛空鎧がなくても、並の人間では太刀打ちできない達人クラスだ。
「わしは、相手の戦いぶりを見ていたが、少なくとも生半可な腕前では返り討ちにされるだけじゃぞ」
モリガンの言うとおりである。仮に、カイトに戦闘の心得があるとしても、果たしてどこまで通用するのか。
「・・・僕だって、蒼き風の一員だ。戦いなら経験も自身もある」
「しかしじゃな・・・」
なおも食い下がろうとするモリガンに対して、カイトが懐から何やらキューブのようなものを取り出した。鈍く銀色に輝くそのキューブは、その表面に触れたカイトの手の周りから、まるで液体に触れた時のように波紋が広がっていた。
「お主、それは・・・」
モリガンは、そのキューブの正体に気が付いたらしい。なぜ彼がこんなものを所有しているのか不思議には思ったが、それはともかく、これは・・・。
「収納魔道具か・・・液体金属内に自身の武器を収め、いざという時に変形させて取り出す。まさか、そんなものを持っているとはね」
モリガンの代わりに楓が解説した。彼女も、研究がてらこういった類のものにはよく触れる機会がある。
「・・・まさか、空のチームがこのようなものを活用しとったとはのう・・・」
「まあ、普通に武器を持ち歩くよりも便利だというのはあるからな。魔道具を専門に扱う連中なら結構活用してるとは聞いたことがあるな」
「モリガンさん、楓さん、心配してくれるのはありがたいけど、僕は・・・彼女と戦うよ。先輩たちの仇を討つために」
改めて自分の決意を強い口調で語るカイト。もう、大樹へ逃げろとは言えなくなってきたようだ。
「・・・わかった。大樹に逃げろとはもう言わない」
「お、おい、楓!」
楓が了承したのを見て、モリガンが横から窘めようとするが、それを楓は手で制して、
「ただし、相手がこちらを発見した場合に限り、だ」
今はまだ、アサギも不時着したカイトの飛空鎧を探し回っているだろう。杏里からの内容では、町工場まで牽引していく作業の最中とのことだった。一度街中まで運ばれてしまえば、紫の機体とておいそれとは手出しできないだろう。
「カイト、君の気持もわかるが、相手は凄腕の剣士ーともなれば、少なくともまだ万全ともいえない君を死地に向かわせるわけにもいかない。どのみち、いずれは君も彼女と対峙することになるはずだ。その時まで君はここでおとなしくしていてもらう」
「・・・!そんな」
カイトの顔が険しくなるが、確かに体の傷はまだ完全に治ったわけでもない。今、あの紫の機体の乗り手と、飛空鎧であれ生身であれ戦ったにせよ、勝てる見込みは極めて低い。
無理はできないということは、カイト自身にもよくわかっていた。
「・・・わかりました」
顔を俯かせて、カイトは力なく応える。そんな彼に寄り添う杏里。彼のことが心配なのが良く伝わってくる。
「紫の機体については、その都度動きを使い魔に確認させておくでのう。まあ、今は、ともかく体を休めよ、カイト」
モリガンの言葉に応えることもなく、俯き続けるカイトであったー。
カイトの決意は固く、とてもそれを覆せそうにはなかった。
「し、しかし・・・気持ちはわかるが、お主は戦えるのか!?」
相手は、凄腕の女剣士ーたとえ飛空鎧がなくても、並の人間では太刀打ちできない達人クラスだ。
「わしは、相手の戦いぶりを見ていたが、少なくとも生半可な腕前では返り討ちにされるだけじゃぞ」
モリガンの言うとおりである。仮に、カイトに戦闘の心得があるとしても、果たしてどこまで通用するのか。
「・・・僕だって、蒼き風の一員だ。戦いなら経験も自身もある」
「しかしじゃな・・・」
なおも食い下がろうとするモリガンに対して、カイトが懐から何やらキューブのようなものを取り出した。鈍く銀色に輝くそのキューブは、その表面に触れたカイトの手の周りから、まるで液体に触れた時のように波紋が広がっていた。
「お主、それは・・・」
モリガンは、そのキューブの正体に気が付いたらしい。なぜ彼がこんなものを所有しているのか不思議には思ったが、それはともかく、これは・・・。
「収納魔道具か・・・液体金属内に自身の武器を収め、いざという時に変形させて取り出す。まさか、そんなものを持っているとはね」
モリガンの代わりに楓が解説した。彼女も、研究がてらこういった類のものにはよく触れる機会がある。
「・・・まさか、空のチームがこのようなものを活用しとったとはのう・・・」
「まあ、普通に武器を持ち歩くよりも便利だというのはあるからな。魔道具を専門に扱う連中なら結構活用してるとは聞いたことがあるな」
「モリガンさん、楓さん、心配してくれるのはありがたいけど、僕は・・・彼女と戦うよ。先輩たちの仇を討つために」
改めて自分の決意を強い口調で語るカイト。もう、大樹へ逃げろとは言えなくなってきたようだ。
「・・・わかった。大樹に逃げろとはもう言わない」
「お、おい、楓!」
楓が了承したのを見て、モリガンが横から窘めようとするが、それを楓は手で制して、
「ただし、相手がこちらを発見した場合に限り、だ」
今はまだ、アサギも不時着したカイトの飛空鎧を探し回っているだろう。杏里からの内容では、町工場まで牽引していく作業の最中とのことだった。一度街中まで運ばれてしまえば、紫の機体とておいそれとは手出しできないだろう。
「カイト、君の気持もわかるが、相手は凄腕の剣士ーともなれば、少なくともまだ万全ともいえない君を死地に向かわせるわけにもいかない。どのみち、いずれは君も彼女と対峙することになるはずだ。その時まで君はここでおとなしくしていてもらう」
「・・・!そんな」
カイトの顔が険しくなるが、確かに体の傷はまだ完全に治ったわけでもない。今、あの紫の機体の乗り手と、飛空鎧であれ生身であれ戦ったにせよ、勝てる見込みは極めて低い。
無理はできないということは、カイト自身にもよくわかっていた。
「・・・わかりました」
顔を俯かせて、カイトは力なく応える。そんな彼に寄り添う杏里。彼のことが心配なのが良く伝わってくる。
「紫の機体については、その都度動きを使い魔に確認させておくでのう。まあ、今は、ともかく体を休めよ、カイト」
モリガンの言葉に応えることもなく、俯き続けるカイトであったー。
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