テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

咲那・全裸の逃避行（第9話）

「さて・・・今日一日、何とか凌ぐとしますかね・・・」

　軽く背伸びをしてから、咲那は周辺に目をやるー。

「まあ、人が入ってくる気配はないし、とりあえず餌でも調達するかね・・・」

　川魚なら、焼いて食べれば何とかなる。それ以外であれば木の実か山菜が候補に挙がるが、残念ながら、そちらの方についてはあまり詳しい知識はなかった。

「下手に毒性のある物を食って体壊してもシャレにならねえしな・・・」

　とりあえず、魚を捕るため川に向かうことにー。

「と、その前に」

　咲那は、ふと自分の胸元に目を下ろす。

「いくら人がくる気配がねえとはいえ、やっぱり胸丸出しはまずいな・・・」
　
　せめて、局部だけは何とか隠しておきたいところだ。

　咲那のプロポーションは抜群である。特に、その胸部の豊満さには目を見張るものがある。その胸を、両手で抱え込みながら、

「・・・スケベな男どもにいやらしい目で見られ続けてきたからな・・・」

　正直、大きいから何だ、逆に目立ってしょうがないというのが咲那の言い分だった。

「そのくせ、江紀は全く反応しやがらねえしな・・・」

　ここにはいない相棒に対して思わず毒づく咲那。どういうわけか、清野江紀は自分以外の誰もが認めるその「鈍さ」ゆえに、極端な朴念仁であった。

「あいつ、あたしのこと年の近い妹くらいにしか思ってねえだろ」

　江紀と一緒にいると、そんなに自分に女としての魅力がないのか・・・と自信を無くす時もあった。

　かといって他の場面ではスケベな連中にいやらしい目つきでみられることもある。

「・・・どうして、あたしの周りにはこんな極端なのしかおらんのかね・・・」

　江紀だけでなく、奏多も基本的に異性には興味がない・・・というより、自分の双子の姉以外の女性には興味がないといった感じに見えた。晶は、咲那のことは完全に姉代わりにしか思っていない。

　つくづく、自分には男運というものがないのだろうと思う時もあるが・・・、

「まあ、今は戦い一筋でいいけどな・・・」

　まだまだ　自分も修行中の身だ。まずは、戦いの方に専念しないと。

「そうだな・・・まだ腹はそんなに減ってねえし、まずは、大事なところ隠せるようなものでも・・・」

　この辺りにあるのは、せいぜい葉っぱくらいしかない・・・あとは、植物の蔦を活用して、何とか下着代わりのものが作れないだろうか・・・。

「あたしゃ壊すのが専門で、作るのは苦手なんだけどな・・・」

　とはいえ、さすがに明日の午前中まで胸丸出しはまずそうだ。もはや、人に見られるかどうかではなく、文明人として、やはり隠すべきものは隠さなければならないだろう。

「・・・生憎と、あたしゃヌーディストじゃないんでね・・・」

　腰に手を当て、森の中を見やる。まあ、森と言ってもそんなに深いわけでもなく、近くの樹木から葉っぱや蔦くらいならいくらでも調達できるだろう。

「・・・ちゃっちゃと終わらせて、早く飯を取りに行くか・・・」

　万が一の場合に備え、刀も持参していく・・・当然、場合によっては魔法剣エクセリオンの出番もあり得るので、そちらの方もいつでも取り出せるように準備しておいた。

「よし、行くか」

　咲那は、下着代わりとなるものを集めるべく、森の中へ足を運んだ・・・。