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続・モリガン一人旅(第7話)

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「・・・!?」

 書斎へと続くドアを慎重に開け、中を覗き込むアサギー。

 しかし、中には誰もいない。

「おかしい・・・」

 部屋の中をぐるっと見回してみるが、魔力の痕跡はあるものの、ここで完全に途切れている。

「間違いなく、この場所にいるはずなのだが・・・」

 まさかーと思いながら、アサギは書斎の本棚を調べ始める。

「この本棚の後ろに隠し通路や地下室が・・・!?」

 よく、ドラマや推理物で見るアレだ。例えば、本をある法則に並べたら、突然本棚が動いて中に隠し通路が出てきたりとか。

「ありうる話ではないか!」

 ・・・なぜか、目を輝かせて一人拳を握りしめながら、アサギは本棚に収まっている本を調べ始める。

「今まで戦いに明け暮れる毎日であったが、たまにはこういう展開もありということか」

 中途半端に推理物に影響を受けたアサギが、とにかく本棚に収まっているありとあらゆる本の背表紙を調べ始めた。

「多分、本の題名が、この謎を解くヒントになっているはずだ!!」

 ・・・一人、勝手に納得しながら「謎解き」に熱中するアサギ。

ーー

 一方、モリガンは、使い魔の目を通し、「謎解き」に嵌るアサギの姿を見て、腹を抱えて笑い転げていた。

「あっはっはー!!」

 そんな彼女の姿に、これまた驚き、慌てふためく楓だった。

「お、おい、モリガン。どうした、何がそんなにおかしいんだ!?」

 いきなり爆笑し始めたモリガンを見れば、事情を知らない楓が狼狽するのも無理はない・・・。

「いやあ、久しぶりに面白いものを見たわ・・・あやつ、小説やドラマに影響されすぎじゃて」

 笑いを何とか落ち着かせ、モリガンが楓に今のアサギの状況を説明する。

 楓も失笑した。

「書斎の裏の隠し通路ね・・・いや、私も変人と言われてるけどさ・・・何もわざわざそんなもの自分の家に作らんよ・・・あ、でも今ので実際に作ってみてもいいかなとは思った」

「作ってどうするのじゃ・・・まったく」

 モリガンが頭を振りながら、

「まあ、この様子じゃと、しばらくの間あやつは留まるかもしれんが、わしらはこのままおる限りは、問題ないじゃろ・・・」

「お前さんお得意のイタズラ魔法のおかげでな」

 皮肉っぽい笑みを浮かべながら、楓がモリガンに言った。

「何がイタズラ魔法じゃ・・・れっきとした高等魔法じゃよ・・・「魔女の叡智」を引き継いだわしだからこそ、使える魔法なのじゃ」

 モリガンは、自身の母エレオノーラから「魔女の叡智」を受け継いでいる。それゆえ、13歳という年齢にも関わらず、大魔女でも扱うのが難しい高等魔法をも使いこなすことができるのだー。
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