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続・モリガン一人旅(第19話)

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「磁石ですか・・・我が同志の術をそのようなものに例えるとは・・・なんともはや」

 上空のガレスが、呆れ顔で呟いた。

 相変わらず、ガレスの背後には白い影がある。もう、正体がばれているので隠す必要もなくなったということなのだろう。

「つまりは・・・奴の闘気に対する斥力を何とかせん限りは、私の攻撃は届かんということか」

「そう言うことじゃな・・・お主がいかに、東方でも有数の剣士であったとしても、攻撃自体が届かなければなすすべもあるまい?だから、わしと手を組めといったのじゃよ」

 モリガンの言うことも尤もだった。いくらアサギが東方でも一二を争う凄腕の剣士であったとしても、攻撃自体が相手に届かず弾かれるというのであれば、攻める手段はない・・・ならば、闘気を扱わない、モリガンのような魔女の力の方が、この場では有利に立てるだろう。

 ただ・・・。

「もっとも、あのガレスとやらも、そこまで見抜いておるじゃろうからのう・・・闘気は相方のあの白いやつに対策させて、自分は魔法を主力に攻めるといった形をとっておるようじゃな」

 ガレスと白い影は、それぞれが魔法、闘気を担当して戦いを進めている。そうすることで、お互いの足りない部分を補い合っているというところだろう。

「闘気に闘気でぶつかっても、先ほどのように斥力で阻まれておしまいじゃからな・・・そこで、お主、わしに一つ提案がある」

「・・・なんだ、小娘」

 モリガンは、またも小娘呼ばわりされたことにいささかむっとしたが、今は目の前の敵を倒すため、ここは我慢して、

「わしがあの白い影をガレスから引きはがし、何とか引き付けておこう・・・その間に、お主はあのガレスを仕留めよ」

 モリガンの提案に、アサギは怪訝そうな表情を向けた。

「お前に、あの白いやつを何とかできるっていうのか?」

 モリガンは、訝し気なアサギの表情にもいささかむっとしたが、やはりこらえながら、

「まあ、何とかしなければならんじゃろう・・・そうでなければ、わしらはやつには勝てんぞ。それに・・・」

 モリガンは、目を細めてガレスの魔力の波動を観察する。

 やはりか・・・。

 自分の推測通りのことになっていることを確認した。

「あのガレスは、自分に対しては魔法反射の術式を施しておるでのう・・・つまりは、魔法反射をどうにかせんことには、わしは斥力と同じように、いくら攻撃しても弾かれてしまうんじゃ・・・さらに、反射された魔法はこちらにもどってくるからのう・・・まあ、魔法反射を解除できる方法も、ないことはないが・・・面倒な上に、どうせあ奴のことじゃ、すぐに魔法反射の術式を組みなおすじゃろう。ならば、どのみちわしらはとやり合うしかあるまい。だから、この場はわしと組むことじゃ・・・東方の女剣士・アサギよ」

 モリガンは、ついさっきまでカイトを追跡していた東方の女剣士へと手を差し出したのだー。
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