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続・モリガン一人旅(第33話)

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 戦いの疲れが出たのだろうか・・・モリガンと楓は、布団に入る間もないまま、床に寝転がり、そのまま眠りに落ちたー。

ーー

 その頃、アサギは紫の牙ズーツァオリャを町の付近の窪地に着陸させ、周囲の様子を窺っていた。

「・・・あのガレスという男は、さすがに今日はもう追ってこないようだな」

 あの男が、いつまた自分の前に立ちはだかるかはわからないが、もし次に出くわしたら、今度はモリガン抜きで対処しなければならない。

「あの白い影みたいなやつさえ何とかなれば、あの程度の男を倒すなど造作もないことなのだが」

 思わず、親指の爪を噛んでしまうアサギ。彼女の悪い癖の一つだった。周りからも何度も指摘されているのだが、簡単には直せない。

「まあいい、今は、あの飛空鎧だ。おそらく、この町の工場まで運ばれたはず」

 私が仕留めきれなかった相手の飛空鎧ー。

 型は普通のものだったはず。となれば、あとは乗り手の技量によるところとなるがー。

「それも含めての確認だが・・・」

 乗り手は、あの森の一軒家に隠れているかと思ったが、あそこにはモリガンと楓という二人の住人の他は、そこに突如として現れたガレスとその配下くらいしか見当たらなかった。

「ただ、あいつら気になることを言ってたな・・・」

 アサギは、魔法そのものにはそんなに詳しくはない。専門外の分野だからだ。

 ただ、そんな彼女でも、その魔法がどういうものなのかは、名称から推察はできる。

 モリガンとガレスとのやり取りの間に、「位相操作」のほか、「転送魔法陣」という気になる言葉が出てきていた。

「転送魔法陣・・・言葉通りに解釈するなら、何かをどこかへ転送する魔法陣ってことになるのか・・・?」

 もしそうだとすれば、アサギがあの家を訪れた時には既に、あの飛空鎧の乗り手はどこかへ転送させられてしまったということになる。

「それをやったのが、おそらくはあの魔女の小娘か」

 確か、モリガンと呼ばれていた魔女の小娘。一時は、ガレスを退けるため共闘もした相手だが、今となってはかなり怪しい人物でもある。

「魔女か・・・む?」

 アサギは、ふと森から出た直後に見知らぬ二人と出会った。確か、メリルとアメリアとか名乗っていた。

「年恰好は、あの二人とは全然違うが・・・」

 確か、メリルとアメリアはゼルキンス村の綿花の調査に訪れていた研究者と言っていた。メリルはローブと帽子をかぶった魔女風、アメリアは眼鏡をかけた研究員姿だった。

「魔女と研究員・・・」

 なんだか、モリガンと楓という女性の組み合わせに被るところがある。

「ただ、年が合わないな・・・」

 モリガンは、見たところ12~13歳くらいの小娘だ。しかし、森の入り口で出会った二人は、どちらとも20歳を超えていたように思える。

 だが、何かが引っ掛かるのだ。

「・・・ゼルキンス村、か」

 とりあえず、工場に潜入して、飛空鎧を確認した後に、もう一度ゼルキンス村まで行ってみてもいいだろう。

 気にはなるが、今は工場を目指すことにしたー。
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